ピアノとストリングスが描く重厚な人間ドラマ
東野圭吾のミステリー小説を映画化した「白鳥とコウモリ」。音楽を手がけた網守将平は、ニューウェーブ・テクノポップ・バンド〈LAUSBUB〉などの楽曲プロデュースに加え、「8番出口」「サンセット・サンライズ」といった映画音楽の分野でも注目を集める作曲家だ。岸善幸監督との2作目となる本作では、ピアノとストリングスが織りなす美しい響きが物語に深い陰影を与えている。
「『白鳥とコウモリ』はミステリーでありながら、重厚な人間ドラマとしての性格が強く、登場人物ひとりひとりの業の深さや、取り返しのつかない感情といったものが浮き彫りになります。それを支えるために、シンプルなピアノとストリングスで音楽を書いてほしいというお話を監督からいただきました。僕もそういった音楽を書きたいと思っていたので、嬉しかったですね。ヘンな音を出したり、面白い音楽を作る仕事もたくさんしてきましたが、自身の本来のルーツはやはり、しっかり構築されたクラシック音楽であると思ってきましたから」
たしかに、電子音楽や音響的なテクスチャーを重視したこれまでの網守作品のイメージとは違い、メロディが強度をもって観る者の感情を揺さぶってくる。
「古きよき映画で朗々と流れていたメロディをイメージしました。僕は子どもの頃、『イマージュ』などのコンピレーション・アルバムを通して往年の映画音楽を知った世代なので、なにかしら影響を受けていると思います。映画音楽の仕事を重ねるなかで、編集された映像を観た途端に〈ここはもう絶対にメロディでなんとかしなきゃいけない〉というシーンもわかるようになってきました。今作でも、監督が余白を残した編集をして、音楽に託されているシーンが多々ありました」
サントラは全29曲、大半は編集された映像に音楽をつけていく〈フィルム・スコアリング〉の手法で作曲された。
「たとえば“白鳥とコウモリ”という曲で流れているテーマは、はじめの段階で物語全体のテーマとして提案しました。登場人物がひとつ真実を知っていくたび、心に蓄積されていく痛みのようなものに寄せた旋律です。葬儀のシーンで流れるチェロのモチーフも最初に提案したものです。いっぽう、フィルム・スコアリングにおいては、映像に音楽の尺をぴったり合わせていく作業がもっとも大変でした。音楽が数秒伸びるだけで、作曲の工程は大幅に増えますから。産みの苦しみであり、楽しいところでもありますね」
MOVIE INFORMATION
「白鳥とコウモリ」
監督:岸善幸
脚本:向井康介
音楽:網守将平
原作:東野圭吾「白鳥とコウモリ」(幻冬舎文庫)
出演:松村北斗/今田美桜/中村芝翫/三浦友和 ほか
配給:松竹
(日本丨2026年丨145分)
©2026「白鳥とコウモリ」製作委員会
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