Photo 2020 by Shinryo Saeki

吉田玲子脚本の実写ドラマ『土曜ドラマ「17才の帝国」』の音楽制作を語る!

 吉田渾身の脚本に圧倒された。アニメ的な物語設定だが、わずか全5話で実世界を深く抉る展開をみせる、実に痺れる物語だった。それもそのはず、プロデューサーは『大豆田とわ子と三人の元夫』を世に送りだした佐野亜裕美なのだ。『とわ子』に続き佐野とタッグを組んだ坂東祐大に、本作の音楽制作について伺った。

 「ドラマの内容にあわせて〈あまり劇伴の経験がない作曲家とやりたい〉と佐野さんから相談されたんですよ。まったく未経験の方に全てをお任せするのは難しい。それで(4人からなる)作曲家の座組を作ることにしました。映像を見て是非トラックメイカーの方に参加していただきたいと思い、インスタ上でたまにDMのやり取りがあるだけで会ったことはなかったTomgggさん(国立音大大学院修了)に声をかけました。彼はシンセ(サイザー)のマスターで、どうすればこんな音を出せるんだろうって憧れてたんです」

坂東祐大, Tomggg, 前久保諒, 網守将平 『土曜ドラマ「17才の帝国」オリジナル・サウンドトラック』 コロムビア(2022)

 こうしてTomgggは第1話のラストで劇的な印象を残す“A sign of snow”等を生み出した。残り2人は坂東にとって学生時代から旧知の仲だ。坂東が主宰するEnsemble FOVEの制作も担当している前久保諒は、芸大の作曲科を出ている。

 「前久保君が演劇の劇中曲として書いた歌がYouTubeに上がっているんですけど、それがスゴい良くって。彼にはアコースティックな曲をお願いしました。網守さんはこの座組みに入ってもらえるとさらに盛り上がるなと思ったので。忙しかったと思うのですが、無理いって参加してもらいました。期待通りのスゴい曲を書いてくれましたよ!」

 前久保が書いた“My Vortex”は第2話で主人公が生い立ちを語るシーンで流れる涙なしには聴けない名曲だ。一方、網守将平による“Cabinet Meeting”は本作に通底する不穏な緊張感を見事に体現している。各自の個性を活かした素晴らしい音楽が並ぶが、もちろん坂東も負けていない。例えば劇中で最も尖った楽曲“The Plot”は坂東が手掛けている。

 「御三方がすごい曲を作ってくるのでついつい僕も力が入ってしまい(笑)。メインタイトルは最初、オケで書いてたんですけど、オープニングのトーンと合わなくて。じゃあシンセかということで、最終的にあの形に落ち着いたんです」

 そしてサントラ最後に収録のED“声よ”も坂東が作曲している。『とわ子』同様、物語内容と深く関わる主題歌なので必聴。これから後追いする方は音楽にもご注目を!