デビュー25周年を迎えた今も変わらぬ前進への強い意欲

 2001年のデビュー以来、ニューヨークを拠点に世界的な活動を続けるジャズ・ピアニストの山中千尋。音楽生活25周年を迎えた彼女が、それを記念するアルバム『Happy-Go-Lucky』を発表した。ヨシ・ワキ(ベース)&ジョン・デイヴィス(ドラムス)を擁する鉄壁のトリオ演奏を収めた同作は、25周年を飾るに相応しい作品となっている。

 「25周年を迎えるに当たって最も強く感じていることは、長い間、支持してくださっているファンの皆さんへの感謝の念。そうした温かい支えのおかげで、ここまでやってこられました。それともうひとつ思っているのは、今後も新たな歩みを絶やさないということ。これからもずっと前向きで行こうという気持ちを込めて作ったのが、この“Happy-Go-Lucky”というタイトルのアルバムです」

山中千尋 『Happy-Go-Lucky』 ユニバーサル(2026)

 そのポジティヴなタイトルを象徴するように、同作には、彼女がバークリー音楽大学在学中に師事したジョージ・ラッセルやキース・ジャレットらジャズ・レジェンドの楽曲、ブラジル音楽、コンテンポラリー・ジャズなど多彩な音楽が溢れている。

 「選曲に関してはいくつか考えた点があったのですが、そのひとつは、以前からライヴで演奏してきた曲をさらに掘り下げようということ。たとえば“Memories of Tomorrow”では、キース・ジャレットの音楽の奥底にある強いグルーヴ感をお届けしようと思いましたし、私のアイドルでもあるイリアーヌ・イリアスの“Impulsive”は、オリジナルは激しめの演奏なんですが、それを少し渋めのテイストにしてこの曲の魅力をお伝えしようと考えました。またそれだけではなく、新しい音楽や、これまで弾いたことのない曲にも挑戦しています。現代エレクトロ・ジャズの鬼才、ジュリアン“J3PO”ポラックの作品をカヴァーした“Silver Lining”が、その気持ちが一番出ている曲だと思います。彼の曲って、和音の重ね方やメロディの組み立て方が独特で。そういう新しいものをどんどん吸収していこうと思ってチャレンジしました」

 目を輝かせながら強い創作意欲を語る山中。最後に今後の展望を聞いてみた。

 「デビュー以来ずっと、新たな音楽表現にチャレンジし続けていますが、それを積み重ねた先にある唯一無二の表現に近付きたいと思っています。いつになるか分からないですけど、自分の中のアヴァンギャルドな部分にフォーカスしたアルバムも作ってみたいという気持ちもあります。今後の作品も楽しみにしてください」