昨今、クラシックの国内盤のリリースが減っていることにお気づきだろうか。大型新譜のみならず、とりわけ名盤の宝庫と言われるカタログの再発が滞っている、というより種類の少なさは如何ともしがたい。これは日本の全レコードメーカー、特に大手に顕著であり、なかでもワーナーから再出発をはかっている旧EMIレーベルものは終盤に多くをリリースした反動もあってか、(感覚的に)最も当てはまるのではないだろうか。

 そのような状況だっただけに、旧EMIレーベルのフランス音楽に焦点を当てた「新フランス音楽のエスプリ」シリーズの発売はすごいと言わざるを得ない。この時代、通常であればスルーされそうな企画をあえて発売したことにまずは喝采を送りたい。旧EMIのフランス原盤はここだけにしかない音源も多く、その稀少性や音楽的な香りは他に代えがたいだけに、ファンには垂涎のシリーズなのである。9/24の第1回発売から続くこのシリーズは今回11/26発売の10タイトルで終了したが、このような企画は今後もぜひ続けていただきたいものである。

 さて、数ある中で聴いておきたい盤は多くあるが、まずはプレートル指揮のダンディ盤をぜひ。オケがモンテ・カルロ・フィルという組み合わせは珍しいが、何しろ知られざるダンディ晩年の2つの作品を世に紹介した功績は大きい。内に秘めたこの独特な香気は、くせになりそう。

GEORGES PRETRE,MONTE CARLO PHILHARMONIC ORCHESTRA ダンディ:交響詩「海辺の詩」、交響詩「地中海の二部作」 Erato/ワーナー(2014)

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 また、10/22発売分のジャキャ指揮パリ管メサジェとアーンのディスクも秀逸。ほとんど知られていないこれらの曲の魅力を引き出す手腕は確かなもので、当時パリ管の副指揮者を務めていたジャキャの名を再認識した次第。他、チッコリーニの2枚のセブラック作品集も必聴だ。

JEAN-PIERRE JACQUILLAT,ORCHESTRE DE PARIS メサジェ:2羽のはと 他 Erato/ワーナー(2014)

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 他にも紹介したい盤は多くあるが、まずは数枚ということであれば上記もぜひ聴いていただきたい。尚、国内盤は、中の解説が充実しているかどうかが特に重要である。今回のシリーズはその点でも抜かりは無く、各曲目解説は言うに及ばず、新たに序文解説が加わっていることは嬉しい。今の視点で、盤自体についても言及されているこれらの解説は、違った意味での付加価値とも言えるはず。