photo by Richard Dumas

 

 ジョージ・クルーニー主演の映画『ラスト・ターゲット』やミカ・カウリスマキ監督の最新作『旅人は夢を奏でる』などに出演しているフィンランド出身の女優、イリナ・ビョークルンド。彼女は歌手としての顔も持っており、フランスのナイーヴから発表された『La vie est une fête』はソロ4作目となる。彼女がファンで、かねてより友人だったフランスのポップ集団、ヌーヴェル・ヴァーグマーク・コランがプロデュースを担当(同グループのリゼット・アレアと共同)した本作は、1940年代から最近のものまで、新旧のフィンランド産の楽曲に彼女がフランス語に翻訳した歌詞を付けたカヴァー作品。「鳥かごの入り口を開けて、私のルーツである素晴らしいフィンランド音楽を外へと飛び立たせてみたかった」と本作を作った動機について語るイリナだが、どれも幽玄な美しさを湛えたポップ・ソングとなっており、どこか懐かしさを感じさせながらもタイムレスでモダンなサウンドが心地良い。

IRINA BJORKLUND La Vie Est Une Fete naive/キングインターナショナル(2014)

 「タイムレスな世界観を表現したいという私の理想は確かに反映されていると思う。ここには10代の頃から聴いていてセンチメンタルな気分にさせてくれるものなど、選んだのは自分史に関わりのある特別な曲ばかり。加えて、フィンランドの人でさえいまはなかなか聴く機会がない曲を選んだつもり。レコーディングでのマークのディレクションがすごくユニークで、ここはマレーネ・ディートリッヒのように、とか、幼い女の子が暗がりで怖がっているふうに、など、まるで映画監督みたいだったの。それが私にとってすごくイメージしやすくて、曲の世界にすんなり入り込めた」

 どこまでも甘くコケティッシュな歌声を聴いていると、天は二物を…というあの諺は嘘だなと思わずにいられなくなるが、ところで演技と歌のどちらが自分らしさを感じる?

 「演技は誰かが作った台本に基づいて行うものだから別人になることを意識するけど、歌っているときは自分になれる。たとえマークの演技指導に従いながら歌っていたとしても、ステージ上では100%自分でいられる。さらに今回は個人史を反映させているから、いっそう自分らしさが出ていると思う」

 フレンチ的解釈によるフィンランド美曲集と言うべき本作だが、どうやらシリーズ化を目論んでいるらしく、アフリカのマリやカナダのケベック州などフランス語が使われている、もしくはフランス文化が残る土地の音楽とフィンランド産メロディを融合させていくプランを立てているという。次にめざしている場所は、ニューオーリンズとのこと。これはかなりおもしろいものになりそうな予感がする。