聴き手の心をふわりと解く美声が世に放たれて20年――記念プロジェクトの第1弾は、多彩な個性の手によってたおやかな旋律が装いを新たにしたトリビュート盤!
この春にCDデビュー20周年を迎えた坂本真綾。まだ高校生の時にシングル“約束はいらない”でデビューし、菅野よう子のプロデュースにより刺激的で上質なポップ・ミュージックを生み出してきた最初の10年。そこからさまざまなアーティストとのコラボレーションやセルフ・プロデュースで新たな魅力を楽曲に刻み続けた次の10年と、ミュージシャンとして独自のキャリアを積み重ねてきた。
「こうして20周年を迎えましたけど、当時16歳ぐらいだった私がどんな20年後を想像していたかなんて覚えてないし、想像もしてなかったんですよね。その時その時をがんばることだけで精一杯で、その精一杯がずっと続いていまに至っていて。私の感覚では、目の前にあることをとにかくがんばれば、その先にあるものがちょっと見えてくるということの繰り返しでした。でも20年やってこれて良かったなと思っています」。
常にいまの自分に満足することなくストイックに歩み続けた坂本真綾。「これは20年やってこなかったら出来なかったな」と思ったのが今回のトリビュート盤『REQUEST』なのだとか。
「トリビュート盤の企画はスタッフからの提案だったんですけど。今回の制作を通じて、いままでの出会いのなかで――特にこの10年、いろんな人と出会ってきたなかで、これだけ素晴らしい人たちと巡り合ってきたんだなと改めて思いました。そんな方たちに私の曲をカヴァーしてもらうなんてことは、これはもう、リスナーというより完全に私のためのご褒美アルバムです(笑)。すごく幸せなことだと思います」。
この20年、さまざまなアーティストと共に制作し、そしてさまざまなアーティストに影響を与えてきたからこそ、ジャンルも年齢層もヴァラエティー豊かな顔ぶれが揃った豪華ラインナップ。ほんとに贅沢な内容だが、人選や選曲などはどのようにして行われたのだろう。
「人によっては〈曲は好きに選んでください〉とお願いしたこともありますし、〈この曲か、この曲でどうですか?〉とお願いしたパターンもあります。真心ブラザーズさんやKIRINJIさんにお願いした時は、〈私に提供していただいた曲のセルフ・カヴァーでも良いですし〉というお願いをしたんですけど、お二方とも〈どうせだったらセルフ・カヴァーじゃない曲をやりたい〉とおっしゃったので、それはそれですごく嬉しくて。TRUSTRICKの神田沙也加ちゃんは、今回のトリビュートをお願いしたらその日のうちに〈歌いたい曲を発表します〉って返ってきて(笑)、そのなかからお願いしました。ほんとにそれぞれのやり方でカヴァー曲を選んでくださいました」。
いろんな繋がりのなかで集まったアーティストたちだが、なかでも異色のオファーとなったのが渡辺麻友。ファンにも人気の高い“トライアングラー”を、坂本真綾へのリスペクトと楽曲への愛情を目一杯に感じさせる渾身の歌声でカヴァーしている。
「トリビュートに参加してくださってる方たちのなかで渡辺麻友さんだけ、実際にお会いしたことはなかったんですけど。どうやら私の曲を聴いてくださっているらしいという話を聞いたことがあったのでお願いしました。今回“トライアングラー”をどうしても入れたくて誰かに歌ってほしいなといろいろと考えたなかで、麻友さんがいいんじゃないかなって、どの曲を歌うかも込みでお願いしたんです」。
この企画を通じて「ずっとワクワクしている状態でした。出来てきた音源を聴いて、その都度泣いてましたから!」と語っていた彼女。心から制作を楽しんでいたようだ。
「自分が学生の時からリスナーとして聴いてきていた、青春に寄り添ってくれたアーティストもいれば、自分よりずっと歳下の、私の曲を聴いてきましたと言ってくださる世代の方がいたり、ほんとに年齢層も幅があって。男性の方が私の曲を歌ってくださるのも、私が書いた詞を他の方が歌ってくださるのも、もういろいろと楽しいんですよ。聴いてくださる方もいろんな楽しみ方をしていただけると嬉しいですね」。
初回限定盤にはトリビュートと同じ曲順でオリジナル音源が収録されたDisc-2〈ORIGIN〉が封入されるのも嬉しい。CDジャケットのあやとりからは、同じ1本の糸なのに人の手に渡ることでまた違うものになる楽しさが伝わってくる。20周年を記念したスペシャル企画は5月30日に行われる嚴島神社でのスペシャル・ライヴや、6月に届けられる〈坂本真綾 コーネリアス〉名義でのシングル『あなたを保つもの/まだうごく』とまだまだ続く! 華やかでアグレッシヴな彼女のメモリアル・イヤーを楽しみ尽くそう。