古き良きロックのスピリットに憧れて全力疾走してきたルーキーが、メジャーに昇格! 彼女たちを待つのはスタジアムいっぱいの声援だ!

 見た目はおっとりした19歳の女の子5人組。でもステージに立つと、本格的なハード・ロックを響かせるバンドに変貌——このギャップこそが、彼女たちの魅力だろう。

 佐賀は唐津市出身の5ピース・バンド、がんばれ! Victory。小学校6年生のときに学校の先生の指導で結成されたのだが、実はあまり演奏の上手じゃない子が集められた(自称)ポンコツ集団だったという。

がんばれ! Victory 全力!スタート/夢のつづき ポニーキャニオン(2015)

「最初は指が痛かったし、まったく何もわかってなかったんですけど、みんなをバンドに誘ったのは私だったので、辞めるって言えなくて(笑)」(みなみ、ギター)。

「正直言って、先生が怖いから練習に行ってる感じだったんです。でも、続けていくうちに楽しくなってきちゃったんですよね。その気持ちのまま、ここまで続けてきた感じです」(れな、ギター)。

 最初の頃はチャットモンチー木村カエラなどの楽曲をカヴァー。高校生になってからは、レッド・ツェッペリンキッスエアロスミスといったクラシックなロック作品に興味を持ち、少しずつバンドの個性——ツイン・ギターを中心とした骨太なサウンド、前向きで親しみやすい歌——を作り上げてきた。

「昔のロックって、いまの時代の音楽とはソウルが違うなって思うんです。〈ここでこんな展開するんだ!?〉っていう驚きもあるし、それを自分たちの曲にも取り入れたいなって」(まゆこ、ドラムス)。

「最近は自分のパートだけではなくて、ドラムのフィル、ギター・ソロも気になるようになって。〈こういうフレーズ、れなに弾いてもらいたいな〉って思ったりするのも、曲作りに活かせていると思います」(しのぶ、ベース)。

 2011年の夏には高校生を対象としたバンド・オーディション〈TEENS ROCK IN HITACHINAKA〉で優勝し、〈ROCK IN JAPAN FESTIVAL〉に出演するなど、活動の幅を拡大。昨年は年間100本にも及ぶライヴでバンドとしての地力を上げてきた彼女たちは、この春、両A面シングル『全力!スタート/夢のつづき』で念願のメジャー・デビューを果たした。“全力!スタート”は、80年代ハード・ロックへのオマージュとも言えるサウンドと、〈ここから新しいスタートだ〉というモチヴェーションがひとつになったアッパー・チューンだ。

「“全力!スタート”はメジャー・デビューのタイミングに相応しいなって思います。私たちはいつも全力でライヴをやってるんですけど、ここからは全力を超えていきたいなって」(あやき、ヴォーカル)。

「みなみとユニゾンするフレーズもあるんですよ。いままでのギター・ソロは〈気持ちが入ってればOK!〉みたいなところもあったんだけど、この曲はきっちり合わせなくちゃいけなくて。1曲1曲、スキルを上げていきたいですね」(れな)。

 TVアニメ「ベイビーステップ」のエンディング・テーマに起用されている“夢のつづき”は、ノスタルジックな雰囲気のメロディーを軸にしたミディアム・ナンバー。


「歌詞は『ベイビーステップ』の原作を読んで、全員で書きました。〈自分を分析して、(それを楽曲に)どう活かしていくか考えることって大事だな〉という気付きもありましたね。シングル2曲で、私たちの違う面を知ってもらえるのも良かったなって」(まゆこ)。

 〈TOKYO IDOL FESTIVAL〉に3年連続での出演が決定するなど、バンドとアイドルの両方のシーンを視野に入れている、がんばれ! Victory。彼女たちがガールズ・バンドの新しい在り方をさらに開拓することができるか、大いに期待しながら注視したいと思う。        

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 ここでは、がんばれ! Victoryの作品に関わってきたクリエイターを紹介します。まず、Victory時代の作品『KGSD』の表題曲と、2014年7月の改名を経てのシングル“ふらいはい!!!”を手掛けたのが、Fake doll Nott今城沙々IMAKISASA)。外仕事としては私立恵比寿中学の2013年のシングル“未確認中学生X”(DefSTAR)が代表作で、 他にも井口裕香の2014年作『Hafa Adai』(ワーナー・ホーム・ビデオ)キャラメル☆リボンなどに楽曲を提供しています。

 そして『全力!スタート/夢のつづき』では、2014年作『Loftinaction』(cutting edge)の苛烈なサウンドも記憶に新しいBACK DROP BOMBのギタリスト、Jin Tanakaが編曲を担当。さらに“夢のつづき”を作曲した164は、ピエール中野らを迎えた2014年作『THIS IS VOCAROCK』(EXIT TUNES)をはじめ、ロックなアプローチを得意とするボカロP。このような面々によって、彼女たちのガッツ漲るサウンドは支えられています! *bounce編集部