billboard classics 玉置浩二プレミアム・シンフォニック・コンサート
6/8(月)サントリーホールにて
出演:玉置浩二/大友直人(指揮)/東京フィルハーモニー交響楽団
玉置浩二に、オーケストラとの共演というライフワークが加わったことを確信!
玉置浩二の『billboard classics プレミアム・シンフォニック・コンサート』ツアーが6月8日のサントリーホールでフィナーレを迎えた。2月8日の横須賀芸術劇場を皮切りに全国で行われた計12公演は、評判が評判を呼び、チケットの争奪戦が繰り広げられるほどの人気になった。もちろん最終日もソールドアウトである。
万雷の拍手で迎えられた玉置浩二は、全身に緊張をまとっていた4か月前の初日とは打って変わり、ここがクラシックの殿堂だからという気負いもなく、純粋に今日のパフォーマンスを楽しもう、といった意欲が表れた笑顔で颯爽と登場する。いい予感がする。プログラムは、1部が安全地帯のヒット曲、2部がソロのヒット曲という構成。《序曲》に続く、1曲目の《悲しみにさよなら》から伸びやかな声が気持ちいいくらいまっすぐに響く。ノドの調子も万全のようだ。歌っている表情が全く見えない席なのが残念だが、後姿を見ていると、オーケストラの演奏を背中で受けとめ、そこから自分の体を通ってきた音をつかまえて、一音一音に自身の声を丁寧に重ねあわせて歌っているように見える。
前半のハイライトは、やはり《ワインレッドの心》、《じれったい》、《熱視線》のメドレーだった。これは初日にも印象強く感じられたことだけれど、オーケストラのアレンジが挑発的で、簡単には歌わせてくれない。リズムがとらえにくいアレンジなので、自ずとタイミングがつかみにくくなっていると思うが、そのなかで間奏にアドリブを挟み込むし、オーケストラとも絶妙に呼吸を合わせて、緩急をつけながらストーリーテリングに歌い、最後に迫力の絶唱を聴かせる。極度の緊張感から歌に堅さがあり、でも、その初々しさがまた魅力だった初日と比べて、歌がものすごく熟成されている。4か月という時間の重ね方がいかに充実していたのかがわかる。
MCが1回挟み込まれた。「最終日を迎えられて感無量」と心情を吐露しつつ、観客に「みなさんの人生の1ページになるように歌う」と語りかける。また、感謝の気持ちを述べる一方で、歌詞を間違えてしまったと告白し、会場から起きた笑いに雰囲気が和む。
20分の休憩を挟んでの2部は、前述したようにソロヒット曲でのプログラム。ブラームスの《ハンガリー舞曲第1番》に続いて、1993年発表のアルバム『あこがれ』からタイトル曲であり、もともとインストゥルメンタルの楽曲《あこがれ》が東京フィルハーモニー交響楽団によって演奏される。続く《ロマン》のアレンジが美しく、オリジナルのようにピアノの伴奏だけで歌い始めると、静かなエモーションがさざ波のように会場に広がり、そこに木管楽器に加わると、淡い色彩の背景画を描くように奏でられていく。感情しか意味のない世界へ誘われるような美しさ。それは、後半に共通することかもしれない。あらためて安全地帯のヒット曲とソロのヒット曲を1部と2部に分けた理由がわかるような気がする。
3曲のバラード《サーチライト》、《Mr.ロンリー》、《メロディー》をメドレーで歌うが、曲のつなぎ、間合いに独特のマジックがあって、そこはかとなくセクシーで心奪われる。最後の《コール》を歌い終えた後のスタンディング・オベーションの光景、鳴り止まない拍手、ホールの品格がこの公演をまた特別なものにしたようだ。
そして、アンコールは、エネルギッシュに歌う《田園》と、さらにマイクを使わずに歌った《夏の終わりのハーモニー》。彼の肉声がやわらかく響き、もっと言えば、声の波動となって優しく客席に広がっていった。正面で聴いた観客は、きっと幸せな気持ちに包まれたに違いない。
今回の『billboard classics プレミアム・シンフォニック・コンサート』ツアー、玉置浩二という素晴らしいアーティストにもうひとつ、オーケストラとの共演というステージがライフワークとして加わったことを確信させるものであり、次回を大いに期待したい。どのように進化していくのか、楽しみである。