2003年に御大が亡くなってからいろいろな未発表曲集が届いたけれど、なかでもこれは物凄く重要な蔵出し作品。ビリー・シェリルをプロデューサーに立てて制作されながらも世に出る機会を奪われていた幻のアルバムで、84年にLAで吹き込まれた音源が軸となっている。その内容は封印された理由が見当たらないほどの品質を誇り、妻のジューン・カーター・キャッシュウェイロン・ジェニングスを迎えたデュエットも心に沁みるもの。苦みばしった低音ヴォイスが悠々と流れていく“She Used To Love Me A Lot”なんて、何度聴いても鳥肌が収まらない。そしてラストに置かれた同曲のリミックス版(手掛けたのはエルヴィス・コステロ!)はあまりに深い闇を描き出す、強力すぎるボートラと言えよう。