高知県出身の現役大学生4人組によるガールズ・バンド=sympathyが、この春にAwesome City Clubを第1弾アーティストとしてビクター内に立ち上げられたCONNECTONEから、ミニ・アルバム『トランス状態』をリリースした。高校の部活動でコピー・バンドとしてスタートするも、初ライヴを行ったコンテストで優勝したことをきっかけに、オリジナルの曲作りを開始。地元のレーベルから発表した昨年のミニ・アルバム『カーテンコールの街』が事務所を通じて現レーベルに渡ると、ライヴを観ていない状態で契約に至ったというから驚きだ。
「いまはいろんなことがどんどん進んでいっててまだ実感がわかないというか、正直〈誰のこと?〉みたいな感じもあります(笑)」(柴田ゆう:以下同)。
全員がまだ10代というだけあって、その戸惑いは想像に難くないが、彼女たちの楽曲には周りを動かすだけの魅力がある。同じ四国出身のチャットモンチーの初期を連想させるフレッシュな演奏、相対性理論に通じるポップなメロディーと言語センス、さらには椎名林檎ばりの柴田の巻き舌ヴォーカルと、ここ10年ほどの日本の女性アーティストの系譜がギュッと凝縮され、いまの瑞々しい感性で鳴らされているかのような印象だ。
「初めてどハマりしたバンドが相対性理論で、一時期ホントに朝から晩まで聴いてました。歌詞をそのまま読んでもわからないんですけど、音楽に乗ったものを聴くと、パッと情景が浮かんだり、グッと胸に刺さって切なくなったり。そういう経験をしたのは相対性理論が初めてだったんです」。
そんな彼女たちが現在掲げているのが〈踊るロック〉ならぬ〈揺れるロック〉。この言葉には音楽性と心理描写の2つの意味が込められている。
「昔チャットモンチーの“ハナノユメ”をコピーしたときにめっちゃ盛り上がって、ああいう曲が作りたいと思ったんですけど、私たちが作るとなんかしっとりしちゃうんですよ(笑)。なので、いまの私たちがやれるのは、いい感じに身体を揺らすことができる音楽かなって。あとは〈人の心を揺らしたい〉っていうのもあります」。
アルバムに通底している感情は、まさにこの〈揺れる思い〉。高校から大学へと進学し、二十歳を目前に控えたいまの彼女たちの心境が、どの曲にもダイレクトに反映されている。
「やっぱり高校卒業って一大イヴェントで、〈青春終わっちゃったなあ〉っていう虚無感があったから、こういうアルバムが出来たのかなって。時間が過ぎていくことってホントに切ないなって思って、戻れないのはわかってるんだけど、それでも頭を悩ませる。“女子高生やめたい”は高校時代に書いたんですけど、やめたいけどやめたくない、強がりたいけど強がりきれない、そういう揺れが出てると思います。歌詞に出てくる〈午前0時〉は、女の子が考え込んじゃったり、泣いちゃったりする時間だと思うので、そういうときに寄り添えるような曲になればなって」。
“ハナノユメ”の歌詞にも出てくる『トランス状態』というタイトルは、子供と大人の狭間で感情が激しく動く、不安定な状態を表しているという。しかし、ガールズ・バンドならではの〈この4人が集まったら無敵!〉といったような、音楽に夢中なときのポジティヴな〈トランス状態〉も、ここには表れているように思う。
「メンバーのことはめちゃくちゃ大好きで、単に〈高校で一緒にバンドやってた友達〉とかじゃなくて、もう〈人生に介入してきたな〉って話をしてます(笑)。これまでは4人でいるためにバンドをやってたんですけど、これからは〈この4人で音楽をやってるのがいいよね〉って言われるようになりたいですね」。
sympathy
柴田ゆう(ヴォーカル/ギター)、田口かやな(ギター)、門舛ともか(ドラムス)、今井なつき(ベース)から成る高知発の4人組。全員が19歳の現役女子大生で、それぞれ東京、高知、滋賀在住。現在は遠距離でバンド活動を行っている。2013年に地元の音楽専門学校主催のコンテストで優勝し、オリジナル曲でのライヴを開始。同年5月には初のデモCD『女子更生』を、2014年4月にはファースト・ミニ・アルバム『カーテンコール の街』を四国限定で発表し、後者は8月に全国流通もスタートしている。その夏に東京で初めてステージを踏んだことをきっかけに、現事務所/レーベルと契約。このたび、ニュー・ミニ・アルバム『トランス状態』(CONNECTONE)をリリースしたばかり。