三戸なつめが、デビュー作“前髪切りすぎた”から約5か月ぶりにリリースするニュー・シングル“8ビットボーイ”。前作に続き中田ヤスタカCAPSULE)のプロデュースによる、映画「ピクセル」の日本語吹替版の主題歌となるナンバーだ。

 まず、「ピクセル」について軽く触れると、この作品は、「パックマン」や「ドンキーコング」など、80年代に爆発的な人気を誇ったゲームのキャラたちに姿を変えた異星人の襲撃に対抗するため、かつてのゲームの名人たちが立ち向かうという、コメディー要素のあるアクション映画。そのオールドスクールなデジタル感と最新のテクノロジーが融合した作品の雰囲気は、“8ビットボーイ”にもしっかりと落とし込まれている。

三戸なつめ 8ビットボーイ ソニー(2015)

 文字通り8ビット風のチップ・チューン~テクノ・ポップの要素を持ちながら、生のピアノの音も入り、それでいてサウンドに厚みのある今風のダンス・チューンとなっているこの楽曲。メロディーにはパワフルさがあり、歌詞もチャレンジ精神が満載。だが、シリアスに戦いに挑むというよりは、少年が夢に向かっていくようなワクワク感が軸になっている。そして曲の雰囲気を大きく決定付けているのは、三戸のどこかコケティッシュなヴォーカル。彼女の明るい人柄がいちばんにあるように思える。

 ライヴでは、エレキ・ギターやアコギを弾き、大好きなお菓子〈キャベツ太郎〉を客席に投げ入れたり、ダンスを見せたりと、前髪ぱっつんの髪型で観客を思いっきり楽しませる三戸なつめ。小柄な体でギター片手にパフォーマンスする姿はmiwa、そしてエンターテイナーとしてのベーシックさをみせながら型破りなところは何となく牧伸二を思わせたりもする、とてもユニークで人間味豊かな存在だ。「ピクセル」にはテクノロジーと人間力の結び付きが裏テーマとしてあるわけだが、三戸はレトロさと最新感が溢れるその主題歌を歌うことによって、彼女が元来たっぷり持っているヒューマニティーとデジタルなテイストを融合させ、まるでゲームのステージを一気にクリアしまくってパワーアップしたような印象を受ける。

 そして、カップリング曲の“わたしをフェスに連れてって”はバンジョーが印象的なアップ・チューン。この曲は、今夏に数々のフェスに出演した彼女の〈タワレコ公認夏フェスソング〉であり、〈キャベツ太郎〉について歌った“きゃべつのやつの歌”に続く〈勝手に応援ソング〉の第2弾だ。さらに、中田ヤスタカによる“前髪切りすぎた”のシンセ・ポップ度を増したリミックスも収録。本作は、どんなところにも笑顔で突き進んでいくような彼女の魅力をたっぷり楽しめるシングルだ。