2001年のデビュー当初からCAPSULE(当時はcapsule)をずっと聴き続けているが、中田ヤスタカとこしじまとしこの2人からなるこのユニットは実に捉えどころがないと思う。古くはネオ渋谷系と言われたり、テクノ・ポップ、シンセ・ポップ期があったり、ハウスに傾倒したかと思えばゴリゴリのEDM期に突入したり。かわいくてオシャレだと思えば、かわいさやオシャレさを廃してみたり。こしじまの歌をフィーチャーした歌モノがいいと思ったら歌をあまり使わなくなったり加工しまくってみたり……。でもCAPSULEに捉えどころがないのは、2人がずっと日本のエレクトロ・サウンドの最先端を行っているからだと思うし、それでいてどの時期の楽曲を聴いてもCAPSULEはCAPSULEだとわかる。そして今どの作品を聴いてもまったく古く感じられないのがすごいと思う。

本日CAPSULEの全アルバムがストリーミング・サーヴィスで解禁され、そんな日本の最先端のサウンドが手軽に世界中の人に聴いてもらえるようになったのは素晴らしいことだ。

そこで、2001年のデビュー作『ハイカラガール』から現時点での最新作『WAVE RUNNER』まで、アルバムごとに個人的な思いを交えつつさっくりと紹介してみたいと思う。紹介している楽曲をまとめたプレイリストも作成したので、CAPSULEをこれから知る人、改めて知る人のガイドになれば幸いである。

 

1『ハイカラガール』2001年11月21日

CAPSULE 『ハイカラガール』 YAMAHA MUSIC COMMUNICATIONS(2001)

“さくら”“花火”“東京喫茶”と先行でリリースしたシングル表題曲3曲も収録された、〈和モノ+J-Pop〉の色が色濃く出たファースト。こしじまの歌が前面に出ていて、この頃からしばらくはPIZZICATO FIVEをよく引き合いに出されていたのも今思えばうなずける。しかしサード・シングル曲“東京喫茶”を聴けば、すでに中田が次の方向を見ていることも分かる。

 

2『CUTIE CINEMA REPLAY』2003年3月19日

CAPSULE 『CUTIE CINEMA REPLAY』 YAMAHA MUSIC COMMUNICATIONS(2003)

dahlia、Sonic Coaster Pop、EeL、Sabou et Mamie、Sylvia55、そして後に中田が設立するcontemodeでレーベルメイトとなるCOPTER4016882といった豪華ゲストを呼び、一大派閥(≒ネオ渋谷系)を作り上げた最初の変革期のアルバムにして大傑作。ガール・ポップとかクラブ・ポップと呼ばれることもある、よりクラブ的、ラウンジ的なサウンドへ進化し、中田とこしじまはより記号的に。今で言う〈カワイイ〉文化の先駆けでもあると思う。

 

3『phony phonic』2003年11月19日

CAPSULE 『phony phonic』 contemode(2003)

前作同様にCOPTER4016882、dahlia、Hazel Nuts Chocolate、Sonic Coaster Pop、PINE*amといった中田周辺の仲間たちをゲストに呼びつつ、現実世界のサンプリング音とカラフルで幻想的な夢の世界のような音をうまくマッチさせた『CUTIE CINEMA REPLAY』の発展的作品。直前には中田がレーベルcontemodeを設立し、今回CAPSULEと同時にストリーミングが解禁となったCOLTEMONIKHAなど、より強い絆の〈遊び友達〉が増えていった時期でもある。こんなモンスター・アルバムを1年に2作も作っていたというのだから、5年もリリースがない今考えるとすごいことだと思う。

 

4『S.F. sound furniture』2004年6月9日

CAPSULE 『S.F. sound furniture』 contemode(2004)

中田がSFと家具に傾倒していたSF期に突入。過去と未来のいいところ取りをしつつ、そのどちらでもないレトロ・フューチャー感を楽曲だけでなく衣装やアートワーク、MVにも多分に取り入れ、いわゆる〈ネオ渋谷系〉から〈フューチャー・ポップ〉へ移行した時期(その14年後の2018年に中田がプロデュースするPerfumeが『Future Pop』というアルバムを出すのだから、あの頃思い描いていた未来はもうとうに過ぎ去っているのかもしれない)。

 

5『NEXUS-2060』2005年2月9日

CAPSULE 『NEXUS-2060』 contemode(2005)

SF期2作目は2060年がテーマ。前作の収録曲が“ポータブル空港”や“宇宙エレベーター”なのに対して、今回はもう“space station No.9”なのだから、一気に宇宙へ飛び出していった感がある。〈未来〉についての過渡期。

 

6『L.D.K. Lounge Designers Killer』2005年9月21日

CAPSULE 『L.D.K.Lounge Designers Killer』 contemode(2005)

SF3部作の3作目。未来感も残しつつ、宇宙から家に帰ってきたかのようなラウンジ感、クラブ感もいい塩梅で混ぜているが、前作よりはシンプルな音作りに仕上がっている(そして2005年もアルバムを2作作っていることに驚きだ)。このアルバムを最後に日本語タイトルの曲は姿を見せなくなるが……先日アニメ映画「シドニアの騎士 あいつむぐほし」の特報映像で発表されたCAPSULE久々の新曲“うつせみ”は15年ぶりの日本語タイトル。

 

7『FRUITS CLiPPER』2006年5月10日

CAPSULE 『FRUITS CLiPPER』 contemode(2006)

これまでcapsuleの代名詞であった〈オシャレでポップでカラフルでキャッチー〉〈過去のリヴァイヴァル〉といった要素が、サウンドの面においてもヴィジュアルの面においても大きく変化した2度目の変革期。バッキバキなハウスのサウンドを取り入れたり、ギターを使用してロック・テイストを意識したりと、より硬質なサウンドに変化。今作から明らかにcapsuleのオリジナリティーが増加した。

 

8『Sugarless GiRL』2007年2月21日

CAPSULE 『Sugarless GiRL』 contemode(2007)

これまでの〈甘さ〉〈かわいらしさ〉を廃した(=Sugarless)、完全にフロア寄りのサウンドへ。こしじまの歌+バックトラックという構造から、こしじまの歌も完全に楽曲の一部へと移り変わっている。