コラム

ASA-CHANG&巡礼の新体制での初作は、日本でしか生まれ得ない土着的でオリジナルな音楽展開する映画「合葬」のサントラ

ASA-CHANG&巡礼の新体制での初作は、日本でしか生まれ得ない土着的でオリジナルな音楽展開する映画「合葬」のサントラ

新体制での初アルバムとなるサントラ作品

 サックスの後関好宏、ヴァイオリンの須原杏をメンバーに迎えて新体制となったASA-CHANG&巡礼の初のアルバムは、映画『合葬』のサウンドトラックだ。『合葬』は、幕府の解体に反対し戦った明治の若者たちの生涯を描いた作品で、柳楽優弥瀬戸康史オダギリジョーらが出演している。そして、これを彩る巡礼の音楽は、ほの暗い叙情性を帯びた不穏な空気が際立つもの。Curly Giraffeがヴォーカルを取るメロウなうたものもあるが、全体的に湿度が高く内省的で、つげ義春の漫画にマッチしそうな純和風の世界が展開されている。また、音数は少なく隙間だらけだが、余白や行間が空間的な広がりを担保するそのアンサンブルは、俳句や能と同様の“間”や“余韻”を感じさせる。侘び寂びといった言葉を想起する向きもあるだろう。つまり、これは日本でしか生まれ得なかった土着的でオリジナルな音楽なのだと思う。

ASA-CHANG & 巡礼 合葬 Pヴァイン(2015)

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 冒頭、カヒミ カリィのナレーションに微小な電子音、フリーキーなサックス、催眠的なドローンなどが被さり、ダークで神々しい世界を描出するのが印象的。その後もデレク・ベイリーを想わせる伸縮自在のギターをフィーチャーした即興演奏が繰り広げられたり、笛が妖しくもおどろおどろしい旋律を聴かせたり、各楽器がここしかないというシーンで自らの存在を主張する。セッション・ミュージシャンとして名だたる経歴を持つASA-CHANGが、タブラやドラムで打楽器奏者としての実力を改めて知らしめているのも剋目すべきだろう。

 バンドとしてのオリジナル・アルバムを待たなければ断言はできないが、今の巡礼が、浦山秀彦U-zhaanが参加していた頃とは異なるステージへ進んだことは本作を聴けば明白だ。より自由に解き放たれ、新たな地平へと向かう彼らの第一歩を示す里程標のような作品。そう言って差し支えないだろう。

 

FILM INFORMATION
映画『合葬』
監督:小林達夫 原作:杉浦日向子 「合葬」 刊行筑摩書房(ちくま文庫)
脚本:渡辺あや 音楽:ASA-CHANG&巡礼 ナレーション:カヒミ カリィ
出演:柳楽優弥/瀬戸康史/岡山天音門脇麦桜井美南/オダギリジョー/他 
配給:松竹メディア事業部(2015年 日本)
◎公開中
http://gassoh.jp/

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