ダンスフロアの華やかな光はエモーショナルな夢の世界へのフレッシュな招待状。キャッチーさと陶酔に満ちたサウンド&ヴィジョンがバンドの新たな進化を告げる!

 例えばORLANDが都会の洒脱なソウル~ファンクなら、彼らの音楽はまるでディスコや80年代ニューウェイヴを通過した煌びやかなダンスフロア。仮谷せいらを迎えた2014年のキラー・チューン“Looking For The Special”や、YUKIAimerらへの楽曲提供でも話題になった東京の4人組、give me wallets(以下gmw)。彼らが自身のホームグラウンドであるPUMP!から、新作EP『Dream #1』をリリースした。

give me wallets Dream #1 PUMP!(2015)

  「僕らはPUMP!で言うと次男坊なので、マイペースで負けず嫌いってとこでしょうか(笑)? 個々が曲や映像を作れるクリエイター集団なので、それを活かして、僕らにしかできないことを高めていきたいです」(Junya、ドラムス)

 Jess(ヴォーカル/シンセサイザー)、Kenji(ギター/プログラミング)、Junyaという3人のソングライターと、VJも担当するSa-ya(シンセサイザー/コーラス)から成るgmwは、カット・コピーフェニックスらに影響を受け、バンド編成で華やかなダンス・ミュージックを追究。最初期はチルウェイヴからの影響も大きかったものの、作品ごとにキャッチーな感覚を前に出し、2013年には〈SUMMER SONIC〉にも出演。昨年には2枚のEP『In My Dreams』『Looking For The Special』を発表し、前述した楽曲提供やCM音楽などにも活動の幅を広げながら、DJカルチャーからの影響を落とし込んだ多幸感いっぱいの音を聴かせてくれている。

「DJミックスを聴いたり作っていると、たまにどこを切り取っても口ずさめる恐ろしい曲に出会ったりするんです。歌が良いのはもちろん、楽器のアンサンブルから生まれるフレーズに至るまで強烈な陶酔感があって、いつまでも踊っていられる。僕らはキャッチーさを追求することで、そういうものを作り続けていきたい」(Kenji)。

 だとするなら、今回のEPはそんな魅力が凝縮された一枚と言えるかもしれない。全編には得意のディスコに加えて、よりR&B~ソウル寄りの要素や、いわゆるロック的なダイナミズムも追加。以前から演奏していた楽曲がライヴで進化した“Dream #1”を経て、“Just Fine”では歪んだコード・ギターから一転ディスコに雪崩れ込み、“Chicken & Us”ではシャッフル・ビートを使ったインディー・ロック的なパーティー感を全開に。全5曲それぞれに、より直接的に聴き手の感情を揺さぶるアイデアが詰まっている。

「前の2作にはない力強さは意識しました。去年から春頃にかけて、ライヴに新鮮さと感情的な激しさを加えたいと思っていて。ちょうどその頃、“Dream #1”のアレンジがロック的な要素も含んできて、セットリストに緩急が生まれるのを感じたんです。それで重くて強い骨格のある楽曲を取り入れてみたりしました」(Kenji)。

「今回のEPでは特にライヴを意識しています。“Just Fine”はこういう曲を昔からずっとやりたいと話していて。僕らはロック系の人たちと共演することも多いので、そういう場でもお客さんを引き込みたいという気持ちもあってできた曲です」(Jess)。

 そこにさらなる彩りを加えるのが、Sa-yaによるMVの世界観。gmwの魅力は何といっても全方位型のパーティー・ヴァイブであって、彼女が手掛ける映像もその重要な要素になっている。

「“Dream #1”のMVは、〈昼=現実〉から抜け出して〈夜=ドリーム〉へ向かうイメージです。“Stay With Me”のMVは曲名からきていて、〈気まぐれですぐどこかに行ってしまう君だけど、どうか私と一緒にいてくれないか?〉という大切な人への気持ちから作りました。それが私の場合は愛猫のライスだったので、彼を起用しました」(Sa-ya)。

 それらすべてが合わさって生まれるのは、まるで永遠に続くピークタイムのような昂揚感。本作の楽曲は、スクリーンに投影した映像だけを照明に繰り広げられる彼らのライヴの現場でこそ、真価を発揮するはずだ。あなたも4人と一緒に、多幸感溢れるダンスフロアへ。肩肘張る必要はないけれど、いつもより少しお洒落して向かうのを忘れずに。