インタビュー

Shing02×Cradle Orchestra、静かな昂揚湛えたフロウと巧妙なリリック&美麗サウンドが織り成す初のコラボ作『Zone of Zen』

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静かな昂揚を湛えたフロウと巧妙なリリック、美麗なサウンドが織り成す〈禅の境地〉! 国境を越えて活動の幅を広げる両雄が、お互いの心に真摯に向き合った初コラボ作!


曲ごとに異なる視点

 2013年にDJ $HINとの共作アルバム『1200 WAYS』をリリース後も、DJ DeckstreamGAGLEDJ BAKUらの作品をはじめ数々の客演などで変わらぬ人気ぶりを窺わせてきたMCのShing02。そして、2014年にオランダの女性シンガー、ジョヴァンカとのコラボ作『Wherever To』で持ち前のジャジーなサウンドを聴かせた、トラックメイカー/プロデューサーの瀬戸智樹によるCradle Orchestra。そんな両者のコラボ・アルバム『Zone of Zen』がここに完成した。リリース順でいえばその『Wherever To』に収録されている“Chasing Tadpoles”で初共演を果たした形の彼らだが、今回のアルバムはそれ以前から制作が始まっていたものだという。そのきっかけとなったのが、彼らの初レコーディング曲でもある収録曲“Windy Chimes”。この曲に良い感触を得て以来、重ねてきた録音を集めたのが『Zone of Zen』である。

 「僕が元になるトラックや楽曲をShing02に聴かせて彼が歌詞を書くこともあれば、日常の会話のなかで生まれたアイデアから〈こういう曲を作ろう〉となったこともありますし。彼のアイデアを元にトラックを作って完成させた曲もあって、本当にさまざまな手を用いてイメージの共有を密にして楽曲を作り上げていきました」(瀬戸)。

Shing02×Cradle Orchestra Zone of Zen Palette Sounds/Village Again(2015)

 〈一曲一曲で異なる視点や世界観を表現した〉とShing02が語る本作。そのタイトルにアルバム全体のコンセプトを代表させるのは無理があるとはいえ、そこに映る安らぎやある種の悟りの境地を求める心と、Cradle Orchestraの代名詞ともいうべき叙情的なトラック群は、特に日本語詞の自作でさまざまな事象に思いと言葉を巡らせ、問題意識とサウンドを先鋭化させることさえも厭わぬShing02の姿とは真逆にも見える(この春に彼がネット上で発表した全6章/22分強に及ぶ大作“日本国憲法”を聴いた後ならなおさらだろう)。しかし当のShing02のなかで、そのふたつは真逆だからこそ表裏一体でもある。そこには本作が全編英語のリリックで綴られたことも関係している。日本語詞と英語詞での意識の違いに水を向けるこちらに、Shing02は言う。

 「体験に基づいていたり、創作であったりしても、歌詞を書いたり歌ったりするのは、役を演じている感覚に近い。言語が異なれば、考え方、感じ方も変わるし表現の幅も違ってきますよね。ワルツ調のタイトル曲でAyumi Katoさんのピアノに浮かんだイメージは抽象的な美しさで、普段日本語でやっている問題提起とは対極にありますが、曲に必要な言葉を紡いでいく作業と言う意味では自分のなかで直結しています」(Shing02)。

 

 

もう一度純粋に音楽と向き合う

 今作のブックレットでアルバムの歌詞を対訳と共に丹念に辿れば、Shing02の言ったことがわかる。心温まるピアノの旋律、サビのコーラスが際立つトラックに、宇宙から大地、果ては極小の原子核にまで思考を巡らす表題曲。ダイナミックなバンド・サウンドに、現実と照らして発する〈アートは嘘か、嘘はアートか〉という一節が強く刺さる“Windy Chimes”。あるいは、タイトなドラムにホーンのフレーズをループさせたひときわヒップホップ的なトラックに、〈公の場から姿を消した真実〉を見通す〈救世主〉たらんとする我が身を映した“Mad Stressor”や、心をざわつかせるような打ち込みのビートを背に、ネットの森で見失いそうになる自身を心の余裕で繋ぎ止めんとする“Searching For(Remix)”――耳を引く巧みな比喩を随所に交えつつ、「人生経験もライムに落とし込んだ」と言うShing02との共作は、なにより瀬戸にとって得難い経験となった。

 「トラックを渡して歌詞を書いて、レコーディングして終わりという曲は1曲もないですし、ありがちで似たような音楽を作らず、どうチャレンジしながらプロダクトを仕上げていくかは非常に苦悩しましたが、素晴らしい経験になりました。Shing02を間近で見ていて、〈アーティストとは?〉〈音楽とは?〉〈曲を作ることとは?〉〈歌詞を書くこととは?〉〈歌うこととは?〉など、ひとつひとつのことに対し真摯に向き合う大切さを思い出させられましたし、もう一度純粋に音楽に向き合うきっかけをもらったように思います」(瀬戸)。

 Shing02の言葉をさらに借りれば、「身体が忙しい」瀬戸と「頭の中が忙しい」Shing02を軸に進んだ今回の共作には、ツアーというストーリーの続きが待っている。ミュージシャンたちのプレイも不可欠な作品だけに、ライヴへの期待を抱かずにはいられぬ内容でもあることは言うまでもない。

 「アレンジやビートのサウンドひとつとっても2人の意思が反映されています。 だから、とても濃度の高いアルバムが完成したと思っています」(瀬戸)。

 「生音のバランスもすごく良かったので、参加してくれたミュージシャンとヴォーカリストさんたちには感謝したいです。自分にとっても40歳になった節目のアルバムなので、月並みですがいろんな国の人に時間が経っても聴き返してもらえる一枚になってほしいですね」(Shing02)。

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