名古屋フィル主席奏者、打楽器の魅力を全力でクリエイト!
「ひとことで〈打楽器〉といってもこんなにいろいろあるんだ!と、もし自分で聴きに行ったとしても楽しく思えるようなものをお聴かせできると思います」と少し照れながら笑うのは、打楽器奏者の窪田健志。名古屋フィル首席奏者として楽団の躍進を支えつつ、アンサンブルなどでも多彩な活躍を展開する1983年生まれの俊英が、東京オペラシティの人気リサイタルシリーズ〈B→C(バッハからコンテンポラリーへ〉に出演する。
「バッハは“無伴奏チェロ組曲第3番”をマリンバで演奏します。名フィルには(バロック・チェロ奏者にして指揮者である)鈴木秀美さんもよく指揮しに来て下さっていてバロックの醍醐味を教わりましたし、マリンバでもレッスンを受けました」というだけでなく、鈴木秀美の甥にあたる若き天才・鈴木優人にも「新作を委嘱しました。バッハ・コレギウム・ジャパンだけでなく指揮や作曲で凄い展開をみせていますが、打楽器作品はまだないそうで」という新作はずばり“4台のティンパニのためのB to C”。「再演の機会に恵まれるように」準備しやすい編成で書いて貰うという新作でも才気炸裂が楽しみなところ。
ドイツ在住の岸野末利加がティンパニから豊かな表現を引き出す“単彩の庭III”も上演されるので、オーケストラ楽器としてお馴染みのティンパニにあれこれ驚かされる機会にもなりそうだが、一方でヴァイオリンと打楽器という珍しい組み合わせの福士則夫“リスコントロ”は「さまざまな発音の変化をみせるヴァイオリン(共演:白井圭)に対して、左右の手で違う連符を演奏したり粒立ちのはっきりした打楽器が音色の多さをみせる作品。今この曲のために金属製スリット・ドラム(内部が空洞で割れ目の大きさにより音色が変わる)を造って貰っているところです」と打楽器は楽器の準備から大変だが、フィッシャー“ヴォルケンシュトゥディ――雲のエチュード”でも「音の出る素材ならありとあらゆるものを使うような曲で、音程が指定されたセラミックのタイルを(焼きもので有名な)愛知県常滑市まで探しに行きました」と笑いつつ「フィッシャーは凄さに顎が外れるかと思った才能の奏者。この曲も〈出来なくはないけど凄く大変〉というあたりを狙ってくる」というあたりの全力投球も楽しみ。
演劇的要素もユニークなヘンツェ“プリズン・ソング”(エレクトロニクス:田野倉宏向)、鬼才・川島素晴の“タンブレラ王。”をはじめ「マルチパーカッション作品の礎」たるシュトックハウゼン“ツィクルス”と、打楽器を聴くならぜひという作品も押さえたプログラム、東京公演に先だって高校時代を過ごした縁のある長野県上田市でも公演がおこなわれる。
LIVE INFORMATION
B→C(ビートゥーシー|バッハからコンテンポラリーへ)
窪田健志パーカッションリサイタル
2016年3月19日(土)長野・サントミューゼ (上田市交流文化芸術センター)小ホール
開演:14:00
2016年3月22日(火)東京オペラシティ リサイタルホール
開演:19:00
出演:窪田健志(パーカッション)/白井圭(ヴァイオリン)*/田野倉宏向** (エレクトロニクス)
■曲目
ヘンツェ:プリズン・ソング(1971)**
J.S.バッハ:無伴奏チェロ組曲第3番 ハ長調 BWV1009
岸野末利加:単彩の庭III(2011)
シュトックハウゼン:ツィクルス(1959)
川島素晴:タンブレラ王。(2001)
福士則夫:ヴァイオリンと打楽器のためのリスコントロ(1990)*
フィッシャー:ヴォルケンシュトゥディ――雲のエチュード(2014)
鈴木優人:4台のティンパニのためのB to C(2016、窪田健志 委嘱作品、世界初演)
https://www.operacity.jp/