現代音楽・即興演奏の前衛チューバ奏者 演劇などとコラボも
現代音楽や即興演奏を専門とする若手のチューバ奏者、坂本光太が注目を集めている。京都女子大学の教壇に立ちながら、ソロで前衛的な活動を続ける新鋭は3月18日、バッハの楽曲と現代音楽を一つの公演で演奏する東京オペラシティの名物シリーズ〈B→C〉に出演する。〈B→C〉にチューバ奏者が出演するのは16年ぶりだ。
「〈B→C〉はバッハと現代音楽がテーマなので、今までのキャリアに沿った公演になります。(吹く機会が少ない)バッハを頑張らなくてはいけないのですが、後半の現代音楽はアルゼンチン出身の作曲家マウリシオ・カーゲルが音楽と演劇的要素を融合させて作曲したシアターピース『アーテム』、スロベニアにルーツを持つ作曲家ヴィンコ・グロボカールの作品などを演奏します。私も演出家の和田ながらさんと曲をやるのですが、どんな作品になるのか自分でも分かりません」
東京藝術大学を卒業後、ドイツのハンス・アイスラー音楽大学に留学。その後現代音楽の面白さに目覚め、帰国後にグロボカール研究で国立音楽大学の博士号を取得した。チューバの即興演奏者は国内では数少ない。
「ドイツ留学時点ではオーケストラに入りたかったのですが、チューバ奏者はオケの枠が非常に少ない。オケは断念し、好きだった現代音楽をやろうと思いました。現代音楽に興味を抱いたきっかけは、中学の時に吹奏楽部の顧問の先生が持っていたストラヴィンスキーのCDです。そこからメシアン、リゲティなど戦後の現代音楽に興味が移りました。そして留学中の2016年、ルツェルン音楽祭の現代音楽アカデミーに参加しました。作曲家・指揮者として名高いブーレーズが創設したアカデミーです」
現代音楽作品は社会に対する問題意識や批判を込めたものが多く、音楽と社会のつながりを強く意識するようになった。
「グロボカールが面白いのは即興演奏、特殊奏法、スロベニア出身の両親を持つ点です。移民などの社会的な問題に切り込む作品が多く、音楽で社会にコミットします。現代音楽はとっつきにくいと言われ、東京や京都など一部都市を除き、現代音楽ができる場所は日本では限られます。出身地である山梨県では現代音楽のみの公演は難しいかもしれません。ただ、普段教育学部で教えていますので、現代音楽が閉じた業界であって欲しくない。子どもなどいろいろな人が楽しめる音楽にしたいし、演奏にもっと興味を持ってもらえるきっかけを作りたいです」
LIVE INFORMATION
B→C バッハからコンテンポラリーへ
坂本光太 テューバリサイタル
2025年3月18日(火)東京オペラシティ リサイタルホール
開場/開演:18:30/19:00
出演:坂本光太(チューバ)
共演:杉山萌嘉(ピアノ)、長洲仁美(パフォーマンス)、山﨑燈里(パフォーマンス)、和田ながら(演出)、甲田徹(音響)
■曲目
・J. S. バッハ:カンタータ第12番《泣き、歎き、憂い、怯え》BWV12から「シンフォニア」
・J. S. バッハ:ソナタ ト短調BWV1030b
・久保田 翠:あるチューバ/テューバについての物語(2021/24)
・山﨑 燈里:黒い帯(2021)
・和田 ながら/坂本 光太:新作(2025、世界初演)
・M. カーゲル:アーテム (1970)
・V. グロボカール:エシャンジュ(1973)
https://www.operacity.jp/concert/calendar/detail.php?id=16418