©Shinji Ogawa(KASHIN)

〈B→C〉にまさにうってつけ! 注目の知性派が登場!!

 青柳いづみことの2台ピアノや、音楽学者・礒山雅とのレクチャーコンサート。さらに映像など様々な芸術とのコラボレーションと、常にコンセプチャルな音楽性で新境地を拓く気鋭の知性派・瀬川裕美子(ピアノ)が、東京オペラシティ〈B→C〉に登場する。

 若き実力者が毎回、J.S.バッハ(B)とコンテンポラリー(C)の作品を必ず入れた上で多彩な演目をお届けするこの人気企画。今回の出演に際し、「これまで慣れ親しんだクラシックの音そのものを解体しながら編み直し、過去と現代双方の視点から俯瞰したい」という彼女は、まさにうってつけの人選と言えるだろう。

 前半はJ.S.バッハのカンタータ第20番(北爪裕道編)で幕開け。瀬川が「素晴らしい聖書の解読者だった」と讃えるJ.S.バッハの魅力に迫りつつ、シューマンの「天使の主題」による変奏曲へリレーする。この両曲は「コラール」を共通項に持ち、シューマンの類い稀な作風と、晩年の悲痛な幻想に光をあてる。そして次に披露するブーレーズのソナタ第3番は、数回のリサイタル、また20年録音盤にも収められた彼女の十八番。常に変化し、拡大し、重複する瞬間の想起に酔いしれながら、その後は前半冒頭の編曲も手がけた北爪の世界初演の新作へ。ここではピアノの内部に電子音響装置を付けてコンピュータに繋げ、音響と表現の拡張を図る「エクステンデッドピアノ」を使用予定なので、科学とアコースティックの対比から生まれる新たな響きに期待が高まる。

 そして後半は、バルトーク“6つのブルガリア舞曲”から。次の湯浅譲二“プロジェクション・トポロジク”への流れは、リズムと拍節の連続性から生まれる自然な時間感覚を共通項に選曲。彼女は、「常に複数のアイデンティティを持ちながら新たな響きと世界を模索する湯浅先生を尊敬してやまない」そうで、今回も作品に寄せる深い愛と解釈を聴かせてくれそうだ。

 そして今回の公演を締め括るJ.S.バッハのフランス風序曲は、前半冒頭のコラールカンタータ第20番の第1曲がフランス風序曲の形式で書かれていることとリンク。「〈J.S.バッハ→シューマン〉〈ブーレーズ→北爪〉〈バルトーク→湯浅〉の三者三様の響きを辿った後、いつの間にかまたJ.S.バッハの中にいた」というコンセプトで編まれた、美術展覧会のようにユニークで魅力的な音楽体験を存分に楽しみたい。

 


LIVE INFORMATION
B→C 瀬川裕美子ピアノリサイタル
2022年3月15日(火)東京・初台 東京オペラシティ リサイタルホール
開演:19:00
出演:瀬川裕美子(ピアノ)/北爪裕道(エレクトロニクス)*
曲目:J.S.バッハ/北爪裕道編:カンタータ第20番《おお永遠よ、雷の言葉よ》BWV20から「おお永遠よ、雷の言葉よ」*
シューマン:「天使の主題」による変奏曲 WoO24
ブーレーズ:ピアノ・ソナタ第3番(1955-57/63)から「コンステラシオン」
北爪裕道:新作(2021~22、瀬川裕美子委嘱作品、世界初演)*
バルトーク:《ミクロコスモス》から第148~153番「6つのブルガリア舞曲」
湯浅譲二:プロジェクション・トポロジク(1959)
J.S.バッハ:フランス風序曲 BWV831
https://www.operacity.jp/concert/calendar/detail.php?id=14380