©Ayane Shindo

今切り拓かれる、バリトンサックス演奏の新しい地平

 東京オペラシティの人気企画、〈B→C(ビートゥーシー)〉シリーズ。新鮮なプログラムの中、バリトンサックス奏法の可能性が開かれる。本堂誠のヴィジョンを聞く。


 

――従来のバリトンサックスにはない美しい響きに驚かされます。そのきっかけを教えてください。

「芸大の吹奏楽の授業でバリトンを担当し、ソロ部分を吹いたとき周りの反応がすごく良かったんです。その後、パリ国立高等音楽院では他楽器の編曲作品に多く触れたり、バリトンのエキスパートの個人レッスンを受けました。また、作曲家との楽器研究で、意識していなかった魅力に気づかされました」

――他楽器の比較で見えてくるものはありますか。

「柔らかい音色はサックスの目指す良い音とされていますが、その先にはコントロールされたはっきりした音が求められると思っています。私はファゴットのアタックや、弦楽器のボウイングを参考にすることが多く、そこから発音や息遣いを洗練させていくことができる気がしています」

――今公演の狙いは?

「それぞれバッハとドビュッシーを中心とする前半、後半を対比させる構成です。前半は音楽の源泉としてのバッハと初めて取り組む三作品。後半は僕にとっての音楽の源泉として、フランスに関わる作曲家、留学時代から交流のあった坂田直樹、北爪裕道、佐原洸3人の作品を取り上げました」

――現地でドビュッシーの捉え方は変わりましたか?

「フランス音楽には瞬間的な和音や響きにすぐに反応し、音楽が変化していく印象を受けます。留学してフランス語の喋り方や歌い方に触れ、フレージングを細かくはっきりさせることに意識的になったと思います」

――奏法を聞いてほしい作品は?

「どの作品も面白いのですが、坂田作品にはスプリットトーン、指ではなく口を使った音を割るような奏法があります。楽譜は、指づかいは下段に、響きは上段に二段で書かれています。佐原作品は、コントラバスフルートと演奏し微細な音の変化のある緊張感のある作品に、北爪作品は電子音楽ですが、指の運動性が重要で機動力がテーマの作品になるのでは、と思います」

――読者に一言お願いします。

「自分の公演ではあるのですが、共演者も素晴らしい人が揃い、かつてないほどバラエティ豊かなコンサートになるかなと思います。バリトンの可能性を存分に楽しんでいただけたら」

 


LIVE INFORMATION
B→C(ビートゥーシー:バッハからコンテンポラリーヘ)
本堂誠バリトンサクソフォンリサイタル

2023年2月21日(火)東京・初台 東京オペラシティ リサイタルホール
開演:19:00

■曲目
J.S.バッハ:無伴奏チェロ組曲第1番 ト長調 BWV1007
アロンソ:エッケ・サトゥルヌス(2013)◇
ノイヴィルト:スプリーンIII(1999)
マヌリ:ラスト(1997)◎
佐原 洸:舞踏組曲(2017~18)**
北爪裕道:新作(2023、本堂誠委嘱作品、世界初演)★
坂田直樹:リキッド・ライフ(2017~18)
ドビュッシー:チェロとピアノのためのソナタ*

出演:本堂誠(バリトンサックス)
共演:羽石道代(ピアノ)*/梶原一紘(コントラバス/フルート)**/神谷紘実(マリンバ)◎/北爪裕道(エレクトロニクス)★/佐原 洸(エレクトロニクス)◇
https://www.operacity.jp/concert/calendar/detail.php?id=15039