独自の〈ブラック道〉を歩んできた4人が20周年の節目に目を向けたのはファンク! ミニマルに徹したからこそのファット&クールなグルーヴで思うままに踊れ!!

 UNCHAINが結成20周年の節目に送り出すニュー・アルバム『with time』は、それだけのキャリアを重ねたからこそ成し得たであろう成熟と進化が刻み込まれた作品となった。デビュー以来、さまざまな形で〈ブラック・ミュージック〉にアプローチしてきた彼らだが、ここではより明確に〈ファンク〉へと照準を絞り込み、ストイックに研磨したシンプル&ファットなサウンドを展開している。

UNCHAIN with time クラウン(2016)

 「いままでは、変に器用で何でもできちゃうってのを強みにしてたんですけど、それは強みにならないと前作『N.E.W.S.』で気付いて。その後に、セルフ・リメイク・ベスト『10fold』をLAでレコーディングした時に得たものも大きかったですね。余計なものは要らなくて、〈踊れるかどうか〉だけを判断すればいいんじゃないかと思えるようになった。今回は、〈これ以上は無理〉ってところまで音数を削りましたね」(谷浩彰、ベース/コーラス)。

 冒頭の〈イントロ〉を経て飛び出す“get down”からしてド直球のファンクなのだが、この曲を貫くミッドテンポのグルーヴ感が、アルバム全体のトーンも形成している。テンションを上げすぎず、絶妙な温度を保ったミニマルなアンサンブルが、これまでにないクールネスを生み出しているのだ。

 「今回はマルーン5とかブルーノ・マーズみたいな、ミニマルなんだけど人間臭さが残っているものをめざしました。ループ・ミュージックをすべて生で演奏することで、機械的であってもフィジカルな感じを残すという。こういう音数が少なくて遅いテンポのものはずっとやりたかったんですけど、単純に難しくてできなかったんです。でも、LAで〈こうすればいいんだ〉っていう具体的な方法論を学ぶことができた。それで、いまならやれるんじゃないかと」(谷川正憲、ヴォーカル/ギター)。

 「年をとったことも影響していると思いますけどね(笑)。いまはシンプルなものを演奏するのが楽しいんです。昔はもっといろいろやりたいと思ってましたけど」(吉田昇吾、ドラムス)。

 そんなアルバムの方向性を決定付ける契機となったのが、R&Bマナーのメロウ・チューン“beautiful girl”。この曲をライヴで披露した時は、大きな手応えを感じたという。

 「以前は、お客さんが拳を突き上げてくれないと不安になるところがあったんですよね。でも“beautiful girl”みたいな、わかりやすく盛り上がるんじゃなくて、身体をゆっくり揺らすタイプの曲でも良いリアクションがもらえるようになったし、自分たちもそういうグルーヴを届けられるようになったんだなと」(佐藤将文、ギター/コーラス)。

 「最近のライヴで見える景色は、以前ならまったく想像できなかったもので、それが活動を続けるなかでちょっとずつ現実味を帯びてきた。その景色を想像しながら作れたのは大きいですね」(谷川)。

 シャッフルの効いたビートとワウ・ギターが粘っこく絡む“baby baby”は「2000年代半ばぐらいのアーバンなネオ・ソウルが好きで、そういうものもいまならできると思って」(谷川)作ったとのことだが、この曲に顕著なブラック・ミュージックに由来するメロウネスは、例えばSuchmosLUCKY TAPESといった国内のインディー・バンドにも見い出せる要素だ。

 「そういう大人な音楽をやってる若いバンドがいろいろ出てきてますよね。ベースが引っ張るスタイルの音楽だし、負けてられないなあと思いつつ、自分はどこまで音を減らせるかっていう独自の方向に進もうと思ってます」(谷)。

 20年のオリジナルな歩みを経ての到達点である『with time』には、〈老練〉とすら形容できそうな鍛え抜かれたパフォーマンス力と、新たなスタイルへと走り出すフレッシュなワクワク感が詰まっている。ソウル/ファンクを志向する現行シーンの指標にもなるだろう静謐でいて鋭利なグルーヴは、これまで以上にさまざまな層のリスナーを揺さぶるはずだ。

 「今回のシンプルさがいまは好きですね。20年活動してきましたけど、このグルーヴを出し続けていれば、飽きずにずっとやっていけるなって思ってます」(谷川)。

 


UNCHAIN 20th Anniv.「with time」release tour "with you"開催!
4月8日(金)京都 GATTACA
4月17日(日)札幌 BESSIE HALL
4月22日(金)広島 CAVE-BE
4月24日(日)福岡 LIVEHOUSE CB
5月13日(金)仙台 LIVEHOUSEenn2nd
5月20日(金)名古屋 CLUB UPSET
5月22日(日)東京 LIQUIDROOM ebisu
詳細は公式サイト〈virusoul.net/unchain/〉へ!