INTERVIEW

ツーマンでの〈ビッグ・サプライズ〉を約束! ART-SCHOOL木下理樹×フルカワユタカ、10年来の盟友同士のプチdisり合い対談

東京キネマ倶楽部〈ヨカノスゴシカタ 3〉

(左から)フルカワユタカ、木下理樹(ART-SCHOOL)

 

ART-SCHOOLフルカワユタカ(元DOPING PANDA)による対バン・ライヴ〈ヨカノスゴシカタ 3〉が、5月12日(木)に東京キネマ倶楽部にて開催される。〈ヨカノスゴシカタ〉は、東京キネマ倶楽部がライヴ・ホール営業15周年を記念して行っているイヴェントで、初回は2015年9月にZAZEN BOYSSODA!、第2回は今年の2月にサニーデイ・サービスシャムキャッツを迎えて開催された。もともとはグランドキャバレーだった会場であり、昭和の薫りを色濃く残す非日常的な空間で、今回の2組が共演するのは興味深いものがある。

木下理樹率いるART-SCHOOLは、およそ1年の活動休止期間を経て昨年末のカウントダウン・ライヴで復活。5月にはニュー・アルバム『Hello darkness, my dear friend』のリリースを控えている。一方、フルカワユタカはDOPING PANDA解散後、ソロとしてマイペースに活動を続け、昨年11月にミニ・アルバム『I don't wanna dance』をリリースした。プライヴェートでも親交が深く、たびたび共演を果たしてきた彼らの、このタイミングでのツーマン・ライヴは特別なものになることは間違いない。

同世代でもある木下とフルカワ。音楽スタイルはまったく違う2人がどのようにして出会い、お互いの活動をいまどのような想いで見ているのだろうか――この対談では、いつものように軽口を叩き合いながらも、最後にはイヴェントでの〈ビッグ・サプライズ〉を約束してくれた。果たしてそれは……?

 

〈あいつは変な奴だ〉というウワサが広まっていた(フルカワ)

――もともと、お二人はどのように知り合ったのですか?

フルカワユタカ「出会いは〈KINOSHITA NIGHT〉ですね。何年前だったかな、僕が22か23くらいだったから、もう10数年前になると思うんですけど、お互いまだインディーだった頃にDOPING PANDA(以下:ドーパン)として誘われたのが最初です。ART-SCHOOL(以下:アート)のことはTVなどで観て知っていて、当時はグランジオルタナと、J-Rockの折衷みたいなサウンドを鳴らすバンドがたくさんいたなかで、MO'SOME TONEBENDERもそうだけど、どちらかというと洋楽寄りで。他のバンドとは違うなと思っていました。そのあとに、アートみたいなバンドが増えるじゃないですか。いま思い返せば、はしりだったんだなと」

※木下理樹が主催している不定期開催のイヴェント

ART-SCHOOLの2003年のミニ・アルバム『SWAN SONG』収録曲“SWAN SONG”
 

――ルーツとなる音楽に共通点を感じますか?

フルカワ「いや、そんなこともないですね。例えばポリスが好きだとかXTCが好きだとか、大きい括りでは繋がるのかもしれないですけど、基本的に僕はハード・ロックが好きだったし、木下はUKロックやUSオルタナだから。なので、ファンもほとんど被らないですね。友達同士だからラジオに呼ぶこともあるんだけど、〈あの人(木下)がラジオに出ると品位が下がるので止めてほしい〉というメールが来たりするし(笑)。木下のファンには、僕が彼をイジったりするのが気に喰わない人もいるみたいだしね」

――友達として仲良くなったのは、どんなキッカケで?

フルカワ「それもあまりよく覚えていないんですけど、確か〈KINOSHITA NIGHT〉の打ち上げに行ったら、木下の周りに誰もいなかったんですよ。みんなの会話を遠巻きに眺めているみたいな感じで。〈あいつは変な奴だ〉というウワサは、すでに都市伝説のように広まっていたので、先輩から〈あいつやっぱり変な奴っぽいから、お前が話し込んでこい〉と言われて、話しかけたのがキッカケだったかな」

――その会話は盛り上がったんですか?

木下理樹(ART-SCHOOL)「〈どんな音楽好きなの?〉みたいな会話はしたよな?」

フルカワ「そうそう。そんな感じでよそよそしく話をして。そのあと、なんでツアーを一緒に回るまで仲良くなったのかは、もうあんまり覚えてないですね」

――こうやって話していると、フルカワさんのほうが社交的で、木下さんを外に引っ張り出しているように見えるのですが。

フルカワ「よく言われるんですけど、まったく逆なんですよ。こいつのほうが社交的だし、友人も多い。インタヴュー中は、こういうキャラを作っているだけ。だって(インタヴューが始まる前は)あんなに喋っていたじゃないですか」

木下「まあ、彼よりは(友達が)多いってだけですから。彼は人に対して極端に心を閉ざしているので、最初会ったときはコミュ症なのかなと思いましたね。ドーパンのころから、自分のことを〈ロックスター〉と言ったり、ファンのことを〈メイニア〉と呼んだり、ワンマン・ライヴのことを〈無限大ダンスタイム〉と名付けたり、まったく当たりもしないことをやり続けているんですよ(笑)。一言で言うと〈不器用〉。そこが可愛らしかったりするんだけど」

DOPING PANDAの2007年のシングル“Can't Stop Me” 

 

自分がいかに〈クズ〉扱いされているかがよくわかりました(木下)

――アートは昨年2月に活動休止して、早くもその年末のライヴで復活を果たしました。その際、自分でレーベル兼事務所のWarszawa-Labelを立ち上げたのはどういう思いから?

木下「レーベルを離れてオタオタしてても仕方がない年齢なんで、昔アンディー・ウォーホルが運営していた〈Factory〉のような、自分たちの遊び場所というか拠り所を作ろうと思ったんです。なので休止中も結構忙しかったですね。一からサイトを作ったり、ファンクラブを立ち上げたり、DVD発売に向けての動きを段取りしたり。年間のスケジュールを立てて、1日をどう動くかをスケジューリングしました。もちろんコンスタントに曲は作っていたので、夏くらいにはアルバム1枚分の曲は出揃っていましたね」

ART-SCHOOLの2015年のライヴDVD「ART-SCHOOL LIVE ~2015.02.13 at STUDIO COAST~」のトレイラー映像
 

――5月にリリースされるニュー・アルバム『Hello darkness, my dear friend』は、激しい楽曲は後退し、代わりに深みのある美しい曲が増えましたよね。

木下「前作の『YOU』(2014年)がある意味、現メンバーでの集大成とも言える内容だったので、それを越えるためには何か新しい要素を入れたいなと思っていました。休止期間はクラシックを結構深く掘り下げて聴いていて。なかでもシューベルトが自分にはいちばん合っていたかな。それからビーチ・ボーイズの『Pet Sounds』(66年)、グラインドコアなどもよく聴いていました。それが今回のアルバムに、無意識的には反映されているんじゃないかなと思いますね」

ART-SCHOOLの2014年作『YOU』のトレイラー映像
 

――自分で会社を立ち上げてみて、物事の見え方が変わったりしました?

木下「ええと、自分がいかに〈クズ〉扱いされているかがよくわかりました」

フルカワ「え、ほんと? 俺は、会社立ち上げる前のお前のほうがクズだと思ってたよ。ほんと、ここ2年くらいで彼は大きく変わりましたよね。それまでは相当なクズ野郎だと思って付き合ってましたから」

木下「ふははは……」

フルカワ「だから、いまさらクズ扱いされてることに気付いたということは、以前はもっとクズ扱いされていたってことだよ」

木下「ちょっと待って。いまお互いにdisりあってもなんにも得しないよ……?」

――ハハハ(笑)。フルカワさんは、ドーパンを解散して現在ソロで活動していますが。

フルカワ「いろいろありましたね。ソロになって事務所を離れて、〈これからは自分1人ですべてやろう〉と意気込んでいたんですけど、すぐに壁にぶち当たりました。ハコを押さえてホテルを予約し、ツアー用の車を借りて、サポート・メンバーのケアからギャラの支払い、それらの精算までを全部自分でやったんですけど」

木下「地獄だよね」

フルカワ「結局しんどさだけが残っちゃいました。まあ、得るものもたくさんあったのだけど、〈それはミュージシャンとして必要なものなのか?〉と自問自答しましたね。きっと次回はもっと赤(字)も減るし、もしかしたら黒(字)にできるかもと思ったりもしたけど、こういうノウハウを把握していくことに意味があるのかなと。音楽を聴く時間も、曲を作る時間も減ってしまったしね」

木下「メチャクチャわかるよ」

フルカワ「だから、木下は要領がいいと思うんですよ。自分でやると言っても、彼の場合は手伝ってくれる人もたくさんいるじゃないですか。僕は友達がいないというのもあるけど(笑)、ほんと誰一人手伝ってくれなかったから。〈要領がいい〉と言うと本人は嫌がるかもしれないけど、向いてるか向いてないかで言ったら、木下は(レーベル運営が)向いてると思う。俺はほんっとにできなかった。だから、最初のツアーが終わる頃には迷うことなく〈また事務所に戻ろう〉と思いました」

フルカワユタカの2013年作『emotion』収録曲“too young to die”
 

――実は、木下くんのことはデビュー前からよく知ってるんですけど、あの彼が会社を立ち上げるなんて……。

フルカワ「ね、人を動かしているとか信じられない(笑) 僕なんて、20代前半の頃は〈会社なんて余裕で立ち上げられる〉と思っていたのに、いざ30代になってやってみたら、なんにもできなかった」

――まあ、起業には向き不向きもありますし、どんな形でもちゃんと〈自由〉を得られているなら良いと思うんですけどね。

フルカワ「そうなんですよね。〈せっかく独立したのに何でまた戻るの?〉〈不自由じゃん!〉とよく言われるんですよ。でも俺、独立してた頃よりいまのほうが全然自由を感じる。だから、考え方とタイプの違いだと思う」

――フルカワさんのミニ・アルバム『I don't wanna dance』は、どんな経緯で作ったのですか?

フルカワ「自分が主催する〈無限大ダンスタイム〉というイヴェントを去年は3回やったんですけど、その会場で売るために作りました。全部自分で録ってミックスまで自分でやっているんですよ。演奏もドラムだけがサポート・メンバーで、ベースもギターも鍵盤も全部自分。プロモーションもまったくせずに、リリースの1週間前に告知したんです」

フルカワユタカの2015年のミニ作 『I don't wanna dance』収録曲“I don't wanna dance”
 

――タイトルが“I don't wanna dance”とは意味深ですよね。実際はダンサブルな曲なのに。

フルカワ「特に意味はないんです。〈無限大ダンスタイム〉というイヴェントをやりつつ、こんな曲名を掲げたらおもしろいかなーと思っただけで。あとは、いまはすごく早い4つ打ちが流行っているから、それに対するなにかもある……かもしれないです。アンチテーゼとまではいかないですけど(笑)」

 

今回は壁をぶち壊したいですね(フルカワ)

――そんな2人が今回、東京キネマ倶楽部の対バン形式のイヴェント〈ヨカノスゴシカタ 3〉に出演されるわけですが。

木下「僕としては断っても良かったんですけど、彼(フルカワ)がね……」

フルカワ「不憫だなと思った? 一緒に対バンする人もいないし、助けてあげようと」

木下「彼をね、表舞台に引きずり出したいという……」

フルカワ「〈引きずり出したい〉は表現として合ってるの? 〈引っ張り上げたい〉とか〈担ぎ上げたい〉とかじゃないの?」

木下「ああそっか。まあ〈戻ってこいよ?〉という優しさですよね」

フルカワ「余計なお世話だよ(笑)」

――東京キネマ倶楽部というハコも、ちょっとマジックが起きそうですよね。

フルカワ「そうなんですよね。僕はまだ一度もやったことがないので楽しみです」

木下「古い階段とかがあって雰囲気ありますよね。僕は一度、ハナエちゃんというアイドルがここでライヴをやったとき、〈アートの曲をカヴァーしたい〉と言われてギターを弾きましたね。そのときは全然知らない人たちばっかりで、僕はメチャクチャ人見知りするので楽屋にいられずに、ずっと赤い公園津野米咲さんに〈リッキー、大丈夫だよ、大丈夫だよ〉と言われてました。それが印象に残ってます」

フルカワ「なんの話だよ」

――もともとは無声映画を上映していて、その前はグランドキャバレーだったそうです。

木下「その昭和っぽい感じはおもしろいですよね。キャバレー感がフルカワにはちょうどいいんじゃない?」

東京キネマ倶楽部の雰囲気が伝わる、EGO-WRAPPIN'の2010年作『ないものねだりのデッドヒート』" の初回限定盤特典DVD「Midnight Dejavu ~東京キネマ倶楽部10年目の軌跡~」のダイジェスト映像。
 

――ああ、確かにちょっとダンスホール感はありますよね?

フルカワ「そうですね。ドーパンの曲は、キネマ倶楽部の雰囲気にも合うかなと。それは楽しみにしていてほしいです」

DOPING PANDAの2008年作『Dopamaniacs』収録曲“Crazy”
 

――ファン層が被らない2組がやることで、どんな面白さがあると思います?

フルカワ「例えば、(僕と木下が)アコースティックで2人でユニットを組んで、イヴェントに出たときとか、曲以外のところでドカーンとなるんですよね。なんていうか、この2人はマジックみたいなモノが絶対あるから、これだけ長く付き合いがあるわけで。ただ音楽そのものでは、そういうマジックをあまり起こせずにいた。今回はそこの壁をぶち壊したいですね。まあ、滅多に口にしないことだけど、お互いの音楽を心から良いと思っているわけだから」

――なにか特別なことをやってみようとは思っています?

フルカワ「個人的にはこれまでにないことをやってみたいなと。例えば今回、僕のバックでベースを弾いてくれるのが元アートの宇野剛史なので、これは結構トピックなんじゃないかと思うんですよね。木下の後ろでベースを弾いていた宇野ちゃんが、今度は僕の後ろで、しかもドーパンの曲を演奏するわけじゃないですか。そのへんはきっと、僕らと同様にお客さんも感慨深いものがあるんじゃないかなと」

ART-SCHOOLの2012年のライヴDVD「LIVE at STUDIO COAST」のトレイラー映像。宇野剛史脱退前の最後のライヴが収録されている
 

――お互いのステージに出るといったことはいかがです?

フルカワ「なんかやってみようか。俺らのステージに、お前が出てきて1曲歌うのはどう? 宇野ちゃんとお前の共演は結構レアじゃない? ファンからすれば、宇野ちゃんとお前が同じステージに立つのは相当なインパクトだと思うし、そこを俺がお膳立てできるんだったら喜んでやるよ」

――それは観たいですね! ちなみに、このイヴェントでは過去2回とも共演した2組がセッションをしています。前回がサニーデイ・サービスとシャムキャッツ、その前がZAZEN BOYSとSODA!で。

木下「う、うーん……」

フルカワ「ほら。お前だけが断るのか?」

木下「そうだね、セッション……じゃあ、やりましょう」

――おお!

フルカワ「良いインタヴューになりましたね!」

――お二人は四十路に差し掛かる世代ということで、これからの展望をどのように考えていますか?

フルカワ「5年先、10年先、どんなふうになっているかですよね。ミュージシャンはみんな、考えていることでしょうけど。いまは飯の種がなかなかないから」

木下「生活がありますからみんな悩んでいますよね。いろんな人に訊くと、レーベルは立ち上げて3年目あたりからようやく黒字になるらしいです。どのレーベルも1年目、2年目は投資だと」

フルカワ「そんな話、誰としてんの?」

木下「やっぱり自分でレーベルをやっていると、同業者の友達が増えるんだよね。彼らはみんな超純粋なんですよ。もちろんお金のことも考えているけど、音楽のことを心から愛している。そこがないと、せっかくこんなことをやっているのに、ただ退屈な人生を過ごすだけになってしまうから」

フルカワ「活動が滞ってくると不安に思うこともあるし、自分が暇なときに、他のみんなが順風満帆にツアーを回っていると羨ましかったりするけど、いまのところ音楽以外の仕事をせずにやっていけてますから、やっぱり自分は幸せだと思いますね。ギターを弾いて、曲を作って歌を歌って。いまはBase Ball Bearでもギターを弾いている。ステージが終わると、ときどき〈すごいですね〉と話しかけられたりもする。もちろん、自分がすごいとは思ってないですけど」

――でも、それは間違いなくフルカワさんがこれまで積み上げてきた結果としてあるものですからね。

フルカワ「そう言われるとだいぶ楽になります。恵まれてるなと思いますよ。ラッキーだったなって」

木下「ラッキーだと思いますよ、彼は」

フルカワ「お前がそう言ったら話が変わってくるだろ(笑)。でもまあ、今日はセッションの話も決まったことだし、僕としては満足です」 

 

東京キネマ倶楽部プレゼンツ〈ヨカノスゴシカタ 3〉
日時・会場:5月12日(木)鶯谷・東京キネマ倶楽部
出演:ART-SCHOOL/フルカワユタカ
開場/開演:18:15/19:00
料金:3,800円(前売/ドリンク代別)/4,300円(当日/ドリンク代別)
問い合わせ: 東京キネマ倶楽部(03-3874-7988)

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