歓喜の復活を遂げた2022年を経て、鮮やかに更新されゆく3人の音――早くも届いたニューEPは原点回帰でもなく時流への媚びでもない、これがいまのドーパンだ!

 2022年、10年ぶりに再結成を遂げたDOPING PANDA(以下、ドーパン)。同年3月にリリースされたセルフ・タイトルの5作目は話題を呼び、それに伴うツアー〈∞ THE REUNION TOUR〉も大盛況を博した。筆者はファイナルのZepp Hanedaでのライヴ(2022年5月22日、今回の新EP『High Hopes』の完全生産限定盤に付属するBlu-rayには同公演からのライヴ映像を10曲収録)を観てきたが、新旧織り交ぜた選曲により、ドーパン完全復活を告げる素晴らしい内容であった。

 「もう、(前回のツアーは)めちゃくちゃ昔に感じますね。1本目は声が出なかったらどうしようとかいろいろ考えてしまって、怖かったです。そんな経験は初めてでした」(Yutaka Furukawa、ヴォーカル/ギター:以下同)。

 そして、前作から約1年ぶりになる5曲入りEP『High Hopes』がついに完成した。今作は前作と比べても、いい意味で肩の力が抜けた、風通しのいい明るい曲が並んでいる。

 「前作は以前の作品の雰囲気を散りばめて、〈ドーパンらしさ〉を意識しました。今回はその縛りを考えず、いまの自分たちを入れようと。あと、1年経ってみて、(再結成当時は)まだメンバー間に距離があったなと。現在は演奏にも意見を言うようになったし、遠慮はなくなりました。だけど10年前のようなストイックな感じではなく、自然体になってますからね。いまはめちゃくちゃバンドが楽しいです。再結成のドーパンは明るいバンドにしたいという気持ちが根底にあるから」。

DOPING PANDA 『High Hopes』 ソニー(2023)

 先行配信曲“THE PROMISE”は4つ打ちの軽快な曲調で、今作のなかでもいわゆるドーパン色の強い楽曲と言っていい。

 「進行形のドーパンらしさを出したいなとリード曲として書きました。テンポ感やカッティングのリズムは僕がいちばん得意とするところですけど、これはサビでいきなり落とすじゃないですか。EDMのサビでドロップを作る感じを僕らでやってみたら、どうなるかなと」。

 “Know more”はHayato Beatによるドラムが印象的で、そこに華やかなシンセが乗っている。メロディーの良さをダイレクトに伝えてくれる爽快なナンバーだ。個人的にも今作のなかで推し曲の一つ。この曲について訊くなかで、今作の核心を突くトピックが浮上してきた。

 「3コードだけど、リズムを裏から入れて、複雑に聴こえるようにしてます。キラーズ、フォールズとか自分が好きで2000年代に聴いてきたスケール大きめなロックを、当時もドーパンでやろうとしたけど、その頃はうまくできなくて。去年の再結成ツアーや〈フジロック〉とかのフェスに出た経験も大きかったかな。今作は10年前にできなかったことに無意識にチャレンジしているのかもしれませんね。“THE PROMISE”以外の4曲はそう。歌詞も昔のドーパンは暗いものが多かったけど、“Carnival”の歌詞は前向きで温かい内容になってます」。

 “THE PROMISE”同様の4つ打ち曲“I  am a revolution”もメンバー3人の生々しい演奏を投影したライヴ映え抜群の踊れる一曲だ。

 「夜の本気ダンスみたいな、僕らが解散したあとにフェスの主役だった世代が得意とするBPMが速めの4つ打ちを、僕らがやったら、お客さんからはどんなリアクションが来るかなって。そこに加えて、ヴァルフペック、ルイス・コールのような洋楽的アプローチも入れてみました」。

 さらに思いっきりメロディック・パンクな“199X”も今作のポイントで、デビュー時からドーパンを聴いていた人はニヤリとするだろう。

 「最後に書いたんですが、あと1曲はメロディックを書いてみようと。2016年から、市川さん(LOW IQ 01)のサポートをやるなかでパンク・バンドと接する機会も多くて、その経験をアウトプットしてみようと。MxPxとかのイメージで書きました。一回落ちるところはウィーザーだったり。タイトル通り90年代後半ですね。メンバー2人もこの曲はめちゃくちゃ気に入ってます」。

 いまだからこそできることに挑みつつ、〈新しいドーパンらしさ〉を体現できた今作。まさに〈継続は力なり〉という言葉が脳裏に浮かぶ充実作だ。 *荒金良介

キラーズの2004年作『Hot Fuss』(Island)