Photo by Paul Rider

2021年、マイ・ブラッディ・ヴァレンタインがついに動き出した。英老舗レーベル、ドミノと電撃契約を果たしたのだ。

これを機に、ファースト・アルバム『Isn’t Anything』(88年)、セカンド・アルバム『loveless』(91年)、サード・アルバム『m b v』(2013年)、EP収録曲とレア・トラック集『ep’s 1988-1991 and rare tracks』(2012年)という傑作群が、新装盤CDとLPで再発売に。さらに、ストリーミング・サービスでの配信も解禁された。

mbvの記念すべき再始動にあわせてMikikiは、彼らの音楽を愛するミュージシャンや表現者に〈マイ・ブラッディ・ヴァレンタインと私〉についての執筆を依頼。期間限定の連載として順次、掲載していく。轟音で鳴らされるそれぞれのマイブラ愛を浴びていただければと思う。 *Mikiki編集部

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マイ・ブラッディ・ヴァレンタインと木下理樹(ART-SCHOOL)

僕が初めて聴いたマイブラのアルバムは『Isn’t Anything』で、まだ大阪にいた18〜19歳くらいの頃に、初めて聴いた思い出がある。マイブラを体験する前にライドなどマイブラに影響を受けたシューゲイザーのバンドを好んで聴いていたのだが、何故かマイブラは聴くのをその時まで意識的に避けていた。初めて聴いたマイブラは、勿論ノイジーで個性的で格好良かったのだが、いい意味で思いの外、聴きやすく、なんなら可愛らしいスウィートな印象の楽曲まであった。それから、『loveless』には、すぐに行かずに、“Sunny Sundae Smile”や“Strawberry Wine”などの非常にジャングリーな感じのするギター・ポップな作風のシングルを聴いていた。マイブラってこういう感じなのかな……とぼんやり考えていた僕は、『loveless』を買ったは良いが、20歳を超える頃までちゃんと聴き込んでいなかった。強烈に覚えているのは、ART-SCHOOLで、『LOVE/HATE』というアルバムの制作時に、何故かマイブラの『loveless』の魅力に取り憑かれて、その時期、このアルバムしか聴いていなかった時期があったという事だ。なんでこの凄さに最初、気がつかなかったんだろう……と後悔したが、しょうがない。美しく、不安定で、揺らいでいて、曖昧で、何もかもが完璧な音楽だった。今、聴いてもその印象は、全く色褪せない。完璧。ただそれだけ。

『loveless』

そして、マイブラのライブを初めて観たのは、2008年の〈フジロック〉で彼等がトリを飾った時である。苗場が、美しい轟音に染められていく光景は、とにかく多幸感に溢れていて、最高の体験だった。奇跡の様な体験。全く老けないビリンダの美しさにも驚いたが。とにかくマイブラは、僕が思う、こうあって欲しい!というマイブラそのものだった。

自分自身への影響は、勿論あるんだろうが、なにせ真似して出来る音楽では無い。

マイブラの音楽って個性的であれ! 自由であれ!って大切なことを柔らかく教えてくれた気もするしね。それって殆どパンクの思想に近い感じもする。

マイブラにはずっとエレガントな暴力性を持ったバンドでいて欲しい。

そんな美しいバンド、他に無いから。

 


PROFILE: 木下理樹(ART-SCHOOL)
ソロ活動を経て、2000年にART-SCHOOLを結成。killing Boyのヴォーカル/ギターとしても活動している他、2015年には自身のレーベル〈Warszawa-Label〉を設立した。

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