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謎の求愛ダンス、漏電、手を舐めてくる女……

――いろんな国でライヴをやってらっしゃいますが、そのなかでも、良くも悪くもここはすごかった、ヤバかったなーというところはありますか?

Yuki「悪い意味でヤバイのは、昔は結構あったよな。ウェールズにはKohheiくん(BO NINGENのもう一人のギタリスト)に求愛ダンスを踊るおじさんがいたり」

一同「ハハハハハハ(笑)」

Yuki「どこまで行ってもついてくるんですよ。街フェスみたいな、街のいろんなところでライヴをやっているイヴェントだったんですけど、ライアーズが出るっていうんで観に行こうとしたら、そのおじさんも付いてきて。で、俺らのライヴの時間やから戻ろうとすると、そのおじさんがまた付いてきて。そこまではKohheiくんにずっと求愛していたのに、ライヴが始まった途端に俺になって、フロア・ライヴやったんですけど、おじさんがもう目の前にずっといるんですよ。最初は普通に楽しんでくれていたから良かったんですけど、だんだんおちょくってくるようになって。求愛なのかしらないけど……」

Taigen「あれは絶対彼の愛だったと思うよ」

Yuki「途中からイライラしてきて、ウザイから1回そいつのことを蹴ったんですよ。そしたらおじさんが持ってたビールが全部俺のペダル・ボードにバーッと……」

一同「ウワー!」

Yuki「俺が蹴ったからそうなったんやけど、よりキレて、もう1回しばきに行ったの。そいつは〈何もしてないやん〉みたいになってたんやけど、次の曲くらいで俺の鼻をちょんと触ってきて」

Hiro「怖い!」

Taigen「たぶん、ごめんなさいってことだったと思うよ」

Yuki「でも普通の人間はそんなことやらないでしょ、で、最終的にギターで殴ってもうたんですよ」

Taigen「そのあたりでウチのツアー・マネージャーが異変に気付いて、セキュリティーを呼んで、おじさんは連れて行かれたんです」

Yuki「それが俺のなかでいちばん腹立ったやつかも」

Taigen「酔っぱらってステージに上がってくる奴はいるけど、それがいちばん異質だったかもね」

Crossfaithの2012年のEP『ZION EP』収録曲“Jägerbomb”
 

Koie「俺らはタイがヤバかったかなー」

Hiro「タイはヤバかったね」

Koie「パブみたいな、150人くらいの小さいハコで、ライヴしていて、なんかたまにピリピリってするなーと思って。お客さんも(ステージから)めちゃ近いから、お客さんに当たったらやっぱりピリピリってなったから、これマイク漏電してるわと。MC中に日本から来てたPAさんに、日本語で〈これ漏電してるんですけど、知らないっすかねー〉って言ったら、〈わかれへん〉って(笑)。え! 続けるべきですか!?みたいな」

一同「えー!」

Koie「そしたら、次はお客さんが手に火を点けだして」

――手に火!?

Hiro「軍手みたいなのをして、そこに火を点けていたみたいで。それでテンション上がってフロアの真ん中でウォー!ってなってて……」

Koie「周りも一緒にウワー!って(笑)」

Hiro「そしたらプールとかで使う、ビニール製のいるかのおもちゃが出てくるし……」

Koie「最終的に、火の点いたやつが床に落ちて、それでみんながサッカーしはじめたり(笑)」

Yuki「150くらいのハコでしょ!?」

Hiroナパーム・デスがやっていたり、メタル系で有名な会場みたいで」

Koie「あとこの間もあったで、(イギリスの)サウスエンドでライヴした時に、いちばん前の女の子がずっと俺に性的なアピールをずっとしてきて」

一同「ハハハハハハ(笑)」

Koie「手とかめっちゃ舐めてくるし」

Hiro「舐めてきたの!?」

Yuki「それはハイレヴェルですね」

Taigen「さっきのYukiに求愛していたおじさんと性別逆ヴァージョンだ」

 

ヴィジョンを持つこと、それを口に出すこと、そして気合い

――いろいろありますね……。話は変わりますが、Crossfaithは海外でツアーをするようになったことで、改めて日本人のバンドであるということをより意識するようになったりしましたか?

Koie「やっぱり日本人で海外でもやっているバンドはそんなに多くないから、そういう意味で責任感というか、(日本から)来ているからにはぶちかましたいなというのはあります。アジア圏に行くと、〈お前らはアジアの誇りだ!〉って言ってくれるんですよ。欧米に行ってアジアの人に会っても言われるし」

Taigen「それはいいな」

――一方でBO NINGENはイギリスのバンドであり、日本のバンドであり、という両方のアイデンティティーを持っているわけですよね。2014年の〈SXSW〉にはイギリスのバンド枠で出演していましたし

※NMEがキュレーションを務めた、イギリスのバンドのみによるショウケース〈ブリティッシュ・ミュージック・エンバシー〉に出演

Taigen「イギリスのバンドとして海外でやらせてもらえたというのは嬉しかったし、そういう(イギリスのバンドである)意識は出てきたかな」

BO NINGENの〈SXSW 2014〉でのライヴ映像
 

Yuki「形としてはイギリスのバンドなんですよ、僕らがどう思っているかというだけで」

Taigen「もちろん、ロンドンでやりはじめたとはいえ日本人のバンドだから、大和魂じゃないけど、日本をレペゼンしていかなくちゃいけないとマジで思っています。どこの国でも、ライヴの最初のMCでは〈BO NINGEN from London originally from Japan〉と言っているし。どちらかではなく、日本もイギリスも両方レぺゼンしているつもりなんです。だから日本では、日本のバンドのみの〈RISING SUN〉にも出たし、〈サマソニ〉では洋楽アクトのみの〈HOSTESS CLUB ALL-NIGHTER〉にも出たりもする。日本は洋楽と邦楽で聴いている層が違うから、そういうポジションを活かして、どっちにもアプローチしていきたいですね」

※昨年の〈HOSTESS CLUB ALL-NIGHTER〉に出演。

Yuki「自分は20代のすべてをロンドンで過ごしていて、その時期の10年って人生においてすごく大きいじゃないですか。音楽的なことだけでなく、自分を形成するという意味でも。ロンドンという街で育まれた自分が作ってる音楽やから、僕がどうギターを弾くかというのもそこが関係してる。でも僕は関西人やし」

Koie「兵庫っ子だけどロンドンっ子でもあると」

Yuki「そうそう(笑)、そういうイメージ」

Koie「そこは違うよなー。住んでるところが違うと絶対違うと思う」

Hiro「英語を喋るというのも、またアイデンティティーが1個増える感じがありますよね」

Taigen「確かに。故郷が増えてる」

――Crossfaithは拠点を日本以外の場所にするという選択肢はこれまでにあったんですか?

Koie「海外に住もうか、という話は何回もありました。でも……なんでやろな。タイミング?」

Hiro「ツアーもずっとイギリスやアメリカを回り続けているんじゃなく、いろんなところに行くわけじゃないですか。それで自宅を長い間離れるとなると、家賃払うのが馬鹿らしくなるっていうか(笑)。だからまだ日本でいいかなと。長く落ち着くタイミングがあったら引っ越そうという感じですね」

Crossfaithの2012年〈Warped Tour UK 2012〉の模様
 

Koie「だからこの先はわからないですよ。バンドがもっと大きくなって、海外に住めるくらいの余裕ができたら行ってみたいと思うし。同じ所に長く住むのもいいけど……〈人生一度きり〉なんで(笑)」

――おお(笑)!

Taigen「接待プレイじゃないですか(笑)。まあでも本当に、ツアーでいろいろ回っているから家賃がもったいないというのはありますよね。イギリスはサブレット(また貸し)のカルチャーがあるからまだなんとかなってるけど、日本だとそういうのは難しいし。住むのとツアーで行くのとでは全然違うからね、いくらオフがあるといっても」

Hiro「そうそうそう」

Koie「(行った土地の)表しか見えへん」

Taigen「僕らも逆に〈日本に戻ってくることはないですか?〉って訊かれるけど、同じように今後どうするかわからないし」

Yuki「ベルリンに行くかもしれないしね」

Hiro「あー、ベルリンいいですね!」

Taigen「ツアーで行って、ここに住みたいなと思ったところはある?」

Koie「俺はイギリスに住んでみたいですね」

Hiro「オーストラリアって言ってなかった?」

Koie「オーストラリアもいいんだけど、もうちょっと歳取ってからでいいかな(笑)」

Taigen「わかるー! 特に、俺らがオーストラリアに行った時はちょうど真夏で、極寒のロンドンから行ったから物凄い温度差(笑)。ここに住んだらいまのような音楽は作れないだろうなと思った(笑)」

Koie「確かに(笑)。だから俺はイギリスがいちばん落ち着くなと思った」

――では、海外に出ていくこと、そこで成功するために重要なことはなんだと思いますか?

Koie「……一生懸命やること(笑)」

Yuki「ひたすら(ライヴを)やりまくることじゃないですかね」

Taigen「ライヴを1回やっただけでやった気にならないで、回数を重ねること。ドサ回りみたいなところからやっていくことですかね。1回のツアーじゃ絶対にわからないと思うし」

Hiro「その過程をメンバーと楽しんでやれたら最高ですよね」

――その前に、海外でライヴをすること自体がやっぱり大変なことだと思いますが。

Taigen「でも敷居は下がっている気がしますけどね。〈SXSW〉や〈Great Escape〉といったフェスには日本人のバンドも結構出てるし。でもそこでライヴして、ロンドンで軽くライヴやって帰っちゃうんじゃなくて、プロモーションもがんばってやって次に繋げようとすることも大切だと思います。どこかの雑誌に〈イギリスでのライヴも大盛況!〉と書いてもらうためだけに来てるんか!みたいなことも多いから。だからCrossfaithの〈Download Fes〉のメイン・ステージに立ちたいという心持ちはすごく大事で。それを口に出すことがスゲーなと思う。言霊って大事。それで叶えたというのはもっとすごい」

Yuki「ほんと素晴らしいと思う」

Taigen「ヴィジョンを持つこと、さらにそれを口に出して、そこに気合いが伴えば(笑)。そういうのはライヴにも表れると思うし」

Yuki「自信を持つこと、それでがんばること」

――〈Download Fes〉のメイン・ステージに出演するという目標を達成するまで、私は早かったなという印象です。

Koie「めっちゃ飛ばしましたからね(笑)。運良くチャンスが来たから、そのチャンスを無駄にしないように、ポイントを押さえてやっていった感じですかね。楽しかったからできたというのはあります。もちろん海外でツアーしていて、もう疲れた、帰りたいって思うこともあるんすよ」

Crossfaithの〈Download Festival 2014〉でのライヴ映像
 

――あります?

Koie「ありますよ! 人間ですから(笑)。それをどうポジティヴに捉えるか、ですかね」

Hiro「(海外で活動するなかで)予定調和なことはほぼないし、それを自分たちのヴァイブスで乗り切るって感じですかね。本当に海外でやりたかったら、とにかく行くやろうし」

Koie「どんな職業でも同じだと思います」

――では最後に、今後チャレンジしたいこと、目標みたいなのはありますか?

Hiro「僕はプロディジーとツアーを回りたいです」

Crossfaithの2011年作『The Dream, The Space』収録曲(日本盤ボートラ)、プロディジー“Omen”のカヴァー
 

Taigen「いいですねー」

Hiro「あと南米ツアーもしたい」

――Crossfaithは南米と相性が良さそうですね。

Yuki「カオスや言いますよね。1回好きになるとファンが離れないというのはよく聞きます。ロシアも一緒みたいで。やっぱりあんまり海外からアーティストが来ないから、来るとみんな嬉しいみたい。じゃあ僕らは……〈コーチェラ〉のメイン・ステージにしとく(笑)?」

Koie「それヤバイすねー(笑)」

Taigen「そうだね。〈コーチェラ〉は僕たちがこれまで出たフェスのなかでいちばんデカイものだし(2014年に出演)、出られたこと自体はありがたいんです。でも、Crossfaithもいろんなフェスに出てるからわかると思うんですけど、メイン・ステージは(他のステージとは)違うんです。というのと、もうちょっとヘッドラインのライヴの規模を日本も他の国でも上げていかないといけないなと思っています。もうひとつステップアップしたい」

BO NINGENの〈Coachella 2014〉でのライヴ映像
 

Koie「それは俺らもそうですね。海外ではもう一段階ステップアップしたいですね。〈Download Fes〉のメイン・ステージに出たと言っても2番手やったし、やっぱり最終的にはヘッドライナーで出たいわけで、そこは変わらず見ていたい目標かなと」

Taigen「フェスだと観客が2万人、3万人いる景色が観られるけど、そこには当然自分たちを観にきた人以外の人がたくさんいるわけで、そこを自分らのためだけに来てくれる人たちで埋めたいというのは毎回すごく思う」