英国ロンドンの4人組バンド、Bo Ningenのメンバーとして知られ、ギタリスト/シンセサイザー奏者/コンポーザー/ビジュアルアーティストとして多岐にわたる領域で活躍してきたKohhei Matsudaによる、純粋な音楽作品としては初のソロアルバムが完成した。長年ソロライブで取り組んできたギター演奏とテープ編集という2種類のパフォーマンスを、ある種のドキュメンタリーとしてわずか1日の間にスタジオレコーディングした作品で、即興的なライブ感を漂わせながらもミュジーク・コンクレートやサウンドコラージュを彷彿させるような、あるいはミニマル/ドローンな質感の録音芸術へと結実している。

その制作プロセスやアルバムコンセプト、音楽から哲学や文学にまで至るインスピレーション源などについて、Kohhei Matsudaに話を訊いた。

Kohhei Matsuda 『Blue Variations Vol. 1』 MAGNIPH(2021)

 

日記のように録り溜めたテープ

――今回、10年以上録り溜めたカセットテープのアーカイブが音素材として使用されていますが、もともとアルバム制作に向けて録音をされていたのでしょうか?

「いずれはソロアルバムを作りたいとはずっと思っていましたけど、作品のためにカセットテープの録音を始めたわけではなくて、ちょっとした趣味のような感覚で録音していたんです。たとえば一人でギターを弾いてその音をスケッチするような感じで録ったり、友人が家に遊びに来た時に一緒に音を出しながらテレコ(テープレコーダー)を回してみたり。日記のような感覚で、そんなに目的もなく録り溜めていました」

2019年のデモ

――カセットテープを使った録音を始めたのはいつ頃でしたか?

「2007年頃だったと思います。ちょうどBo Ningenを結成した時期で、バンドでツアーに行くときにテレコを持っていって街の音を録音したり、リハーサルでサウンドチェックをしている時に録ってみたり。日々の習慣のような感じで録っていましたね。

僕はBo Ningenを結成してから意識的に音楽活動に取り組むようになったんです。それまではバンドをやったことがなくて、家で一人でギターを弾くぐらいだったんですが、2006年にTaigen(Kawabe)くんとデュオで最初のBo Ningenを始めて、その時期にノイズ/コラージュ系の音楽をよく聴くようになりました。フランスのミュジーク・コンクレートとか、ああいった古いテープ音楽です。あとは恩田晃さん。彼の音源を聴いたりライブを観たりしてすごくカッコいいなと思って、それもあってカセットテープで録音し始めました」

恩田晃の2016年のパフォーマンス動画

――恩田さんもまさに日記のようにカセットで日常の音を録り溜めていく活動をしていましたよね。そうした録音制作を行うためにテレコを入手したのでしょうか?

「実は自分が今でも使ってるテレコは拾い物なんですよ。2007年当時は知人とアパートをシェアして住んでいたんですけど、ある日そのアパートの物置を見たらなぜかテレコが落ちていて。みんな〈自分のじゃない〉と言っていたので、だったらせっかくなので使ってみようかなと。ちょうど恩田さんの音楽やミュジーク・コンクレートがすごく好きだった時期に、たまたまタイミングよくテレコを手にすることになったんです」

――現実の音とカセットテープに録音した音だと質感が異なりますよね。自分で録音した音を聴いた時、最初はどんな感覚を抱きましたか?

「〈良い音だな〉と感じたことは覚えてます。テレコで録音を始めた当時は、まだスタジオで本格的にレコーディングするという経験をしたことがなくて、自分が持っていたギターアンプも大したものじゃなかったので、なかなか好きな音が出ないなと思っていたんですよ。

それが、テレコに付いているマイクでエアー録音してみたら、ちょっとガサガサした感じのローファイな音になって、その音色がすごく好きだった。それは覚えていますね。それでしばらくしてから、録り溜めたテープ音源をライブで使うようになっていったんです」

2018年のライブ

――ライブで使い始めたのはいつ頃からですか?

「たしか2010年頃だったと思います。年に2~3回ほどソロでライブをやっていたんですが、その頃からソロでやる時はテープとギターの2本立てでライブをやるようになりました。1セットが30分ぐらいなので、まずはテープで15分ほどパフォーマンスをして、そのあと15分ほどギターでメロディーを繰り返す感じの演奏をして。

当時はギターアンプからテープの音を出していたんですが、そうすると磁気テープの〈サー〉っていうヒスノイズが強調されるので、それが会場空間に浸透していく感じがとても面白かったですね」