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2016年、大石始のお仕事 ~東京音頭から和製ボサノヴァまで
盆踊りが熱い。そして2016年の夏は、大石始が熱い。昨年、“ドドンガドン”のリズムでお馴染みの〈音頭〉の過去~現在を〈東京音頭〉を軸に探った『ニッポン大音頭時代』(河出書房新社)を上梓した大石始。ここ数年の、おそらく東日本大震災を契機とする日本のトラディショナルカルチャー再評価という空気のなか、東京音頭を解剖した大石氏は、日本の「祝祭空間」を巡る冒険へと繰り出し、今年の夏、 その成果が一斉に結実した。ひとつは『ニッポンのマツリズム 盆踊り・祭りと出会う旅』。氏が祭りにハマるきっかけとなった東京の「高円寺阿波踊り」をはじめ、「牛深ハイヤ節(熊本)」「五所川原立佞武多(青森)」 など、西へ東へと奔走しながら各地の熱い祭りをレポート。文献や関係者への取材にもとづいた冷静な分析を加えつつも、興奮や感動を現地で体感したそのままの熱量で描写したエモーショナルな文章は、胸を熱くさせる。
なぜ、祭りは僕らをこんなにも熱狂させるのか。重要なファクターのひとつとなるのが〈音楽〉だ。大石始監修の『KING OF ONDO ~東京音頭でお国巡り~』は、『ニッポン大音頭時代』でフィ―チャーした〈東京音頭〉の古今東西の音源を収録したコンピ。元ネタとなった《鹿児島小原節》 を筆頭に、原曲の《丸ノ内音頭》など、数々のオルタナ・ヴァージョンを収録し、ある意味日本一有名なダンスチューン、〈東京音頭〉の全容を俯瞰できる内容になっている。同時期発売のコンピ『NIPPON SAMBA』は、1960年代以降にブラジルから輸入され、改編され、花開いた和製ボサノヴァ、サンバを収録した作品。本作で大石はライナーノーツを担当し、その魅力を紹介している。
日本神話では、天岩戸にこもったアマテラスオオミカミは、アメノウズメの楽しい踊りにつられ外に出てきて、世界に光が戻ったことになっている。日本人と踊り、音楽、祝祭空間を巡る大石始の冒険はまだまだ続きそうだ。