20年前ですって! 懐かしい人も、忘れたい人も、覚えてない人も、生まれてなかった人も、この楽しさにはきっと特別なものがあるはずですよ!

山西「なんで94年なんですか?」

出嶌「今回は……まずオアシスの『Definitely Maybe』とナズ『Illmatic』の20周年記念盤が前後してリリースされるって話をまず聞いて、よく考えるとこないだのベックも『Mellow Gold』から20年だったり、フリー・ソウルが20周年でいろいろ目について買ってみたりして……それで何となく考えてみた感じかね」

オアシスの94年作『Definitely Maybe』収録曲“Supersonic”

山西「毎年なにかの20周年とか25周年はありますけどね(笑)」

出嶌「まあまあ、去年に20周年っていうのも当然あるとして、でも今年の20周年はなんか違んじゃないか?って考えたら、94年はいろんな意味ですごい曲がり角になった年っていう仮定をしてみようかと思いましてね。そういうのをなるべくノスタルジックにならないように紹介したいというアレですわ」

北野「94年ですか……自分は高校生で神戸にいましたけど、そんなに気にしてなくてもオザケン(小沢健二)はすごい勢いがあったイメージがパッと浮かびます。“今夜はブギーバック”がこの年ぐらいですよね」

小沢健二の94年作『LIFE』収録曲“今夜はブギーバック”

出嶌「“DA.YO.NE”もそうだよね。アルバムが廃盤で載せられないんだけど」

土田「私は……ギリ学生ですね。もう東京にはいました。音楽サークルにいたので、みんないろいろ聴いてる人ばっかり周りにいましたね。当時は渋谷系にどっぷりというか、そこから派生して洋楽も邦楽も昔のものも……ギター・ポップからアシッド・ジャズからボサノヴァ、ソフト・ロックみたいな感じでしたね。いま考えると、なんであんなに渋谷系だったんだろうというか」

出嶌「恥ずかしい時代?」

土田「自分のベーシックなので恥ずかしくはないですけど、異様に偏ってたなと」

出嶌「私はまだ京都だったけど、当時おしゃれなヴァージンメガストアで渋谷系っぽい展開をやっててさ、エスカレーター降りたらUKロックのシングルがあって……」

北野「ノスタルジックになってますね」

出嶌「まあまあ仕方ない。で、どっちみち誌面には載りきらないんだけど簡単にリストというかメモみたいなのをまとめてきたので(下掲)、それを元に振り返ってみましょうか」

山西「私は中1、2ぐらいの頃ですね。ちょうどCDを買いはじめたぐらい……自分で渋谷とか行きはじめたぐらいの頃、土田さんみたいに〈これが好きだから〉とか系統立てて聴いたりとかはまだしてない時期なんですよね。これがヒップホップ、これがR&Bとかわかってなくて、それこそラジオとかを聴いてどんどん知っていく、みたいな。洋楽も邦楽も分けてなかったです」

出嶌「たぶん私より上の世代になると、洋楽ファンは洋楽のほうが上みたいな人がいたんじゃないかな。分かれてたというか。でも、ちょうど94年頃ってリセット・メレンデスとかダイアナ・キングとか〈流行りの洋楽〉みたいなものがあったよね。いま考えると凄いんだけど、オリコンの年間アルバム・チャートで15位ぐらいにエイス・オブ・ベイスが入ってるし」

エイス・オブ・ベイスの93年作『The Sign』収録曲“The Sign”

北野「世代が少し違っても、みんな何となく覚えてますからね」

山西「当時は情報源が同じというか……」

出嶌「細かいことはあんまり厳密に調べないで話してるけど、TVの『HEY!HEY!HEY!』が始まった年だったりするしね」

山西「このあとからどんどん各ジャンルが掘り下げられるようになっていくんですかね。レゲエとかも、当時はレゲエとはあんまり認識してなかったけどポップ・レゲエみたいなものが流行ったじゃないですか。ビッグ・マウンテンとか、UB40とか」

土田「スノーとか、知ってるもんね」

出嶌「残念ながらレゲエは廃盤モノが多くて、アスワドとかチャカ・デマスとか載せられないんだけど。あのあたりのものはけっこう普通だったね。バングラとかもそうか。あと、当時はアジアン・ポップスみたいなものもいっぱい出てきてたんだけど、ほとんど廃盤で載せられないっていう」

山西「あと、クラスでかなりの確率でみんなが買ってたのはアリーヤとTLC。みんな持ってました。このへんはずっと残ってますよね。基本というか」

アリーヤの94年作『Age Ain’t Nothing But A Number』収録曲“Age Ain’t Nothing But A Number”

土田「私の周りはベックか、オザケンさんか……それにしても、リストを見てると20年前から主役だった人がいまも主役だったりしますね……」

出嶌「残酷な2014年ではあるね。ヒップホップはあんまりそういう感じじゃないけど。ただ、廃盤になってなくて掲載できるモノがあるってことはそのアーティストが現役で一定のポジションを保ってるからであって、必然的にいまも活躍してる人が多く載る理屈になってしまうというのはあるけど。だから、ここに載せるものは正直そこまで懐かしかったりはしないんだけど」

北野「そうですね。懐かしいというより、わりといまのシーンの起源になってる人たちが多い感じはしますね」

出嶌「こういう話をしててもあんまり断絶がないしね。まだ共通認識になってる人たちというか」

土田「ラインナップを見てて日本のロックでいうと、ここらへんに影響を受けたのが日本のロックの大物バンドたちっていうのがけっこう多いのかなって。ウィーザーとかもそうですし、グリーンデイとかもそうですし、もちろんオアシスとかもそうですけど。最近だとKANA-BOONがアジカンに影響を受けてて、アジカンはウィーザーにっていうラインみたいなのがけっこうあると思います」

ウィーザーの94年作『Weezer』収録曲“Buddy Holly”

山西「ウィーザーっぽいバンドめっちゃいますよね、日本に。あと、影響で言うとジュディマリとかだってずっと凄いんじゃないんですか。誰かはわからないけど、街とかで曲を聴いてYUKIちゃんっぽいって思うことはあるし。CHARAとかも」

出嶌「そういう諸々を考えれば、新しいスタンダードっぽいものが生まれやすかった時代なのかもしれないね。無理矢理まとめてるけど」

土田「あとは、さっきも少し話しましたけど、初CD化されるものがどんどん多くなってきていた時期で、旧譜も同じように聴いてましたよね」

出嶌「そうね、そこが大きいかもね。自分も、いまみたいに新旧をフラットに聴こうとするようになったのはその頃のような気がする。そういう意味では現代のリスナーの傾向が生まれはじめたというか……また無理に終わらせようとしてるけど……」

土田「とはいえ、最近だと本当に聴き手がフラットになれてるか逆にわからないですけどね」

北野「おすすめ動画を観て、辿って、発見してる気になっちゃうことってけっこうありますからね」

出嶌「まあ、別に聴き方の話はどうでもいいんじゃないの。フラットに聴いてるなら年齢とか世代は関係ないというか、20年前の作品に対してどう感じるかは人それぞれになるはずだしね」

山西「いつ聴くかが人によって違うとしたら、逆に15歳の子が20年前の作品を懐かしいとかっていうパターンもあるんでしょうしね」

出嶌「それが理想です。音源に宿る魅力とかは、当時聴こうが20年経ってから誰がどんなふうに聴こうが、変わらない部分だよねっていう」

土田「無難に着地しましたね……」

  


1994 memorize each words
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