【30】

ジャケのポーズはいまだに謎だが、音にも同様のインパクトが残る。アダムスキーと組んでシンセ・ポップ方面から出てきたことも忘れられるほど、この2作目ではトリップホップ時代も横目で睨んだような重厚な音像を纏い、奥行きのありすぎる歌声の迷宮をスピリチュアルに構築。“Kiss From A Rose”のヒットによって全米侵攻にも成功したUKの星。 *出嶌

 

【29】

同時期にブレイクしたGラヴ、ベック、JSBXらと共に〈新世代の四天王〉と呼ばれたベン・ハーパー。ブルースやソウル、ロックをはじめとする音楽遺産を気ままに、しかし信念を持ってミクスチャーする90年代らしい感覚と、いまもサーフ・ロック〜ソウル系作品にて必ず影響源に挙がる彼のスタンスは、このデビュー作から不変のものだった。 *池谷

【28】

この頃のボビー・ギレスピーは抜群の嗅覚でもってバンドのめまぐるしい舵取りを行っていた。ローリング・ストーンズの南部路線を追いつつ、軽やかなノリでPファンクにもアプローチするなど、興味のままに漂泊するようなカッコ良さはいまもってバンドへの信頼を支えているはず。なお、同じ年には本家ストーンズの『Voodoo Lounge』も出ていた。 *轟

【27】

自身の創造したヒップホップ・ソウルの方法論をいち早く脱し、生音をメインにしたグルーヴィーなループに乗って現代的なソウル女王の在りようを模索した力作。本人がボロボロだった時期の作品という裏話もあるが、切実な歌唱と楽曲の出来も抜群で、彼女のベストに推す人も多い。キーシャ・コールらはあきらかにこの頃の彼女を志向しているはず。 *轟

 

【26】

当時、停滞中だったUKロック・シーンの現状をひっくり返したいちばんの立役者は、ブラーでもスウェードでもなく、マンチェの先輩バンドに倣った不良性と親しみやすい楽曲群を武器としてセンセーショナルに登場したオアシスであり、“Live Forever”などの名曲を収録した本ファースト・アルバムであることは間違いないだろう。ビートルズやザ・フー、T・レックスといった偉人たちの模倣バンドと皮肉られたこともあるが、いま聴き直せばそこには〈オアシス節〉が堂々と鎮座し、ワン&オンリーなサウンドを鳴らしていることは疑いようのない事実だ。 *青木 

【25】

マライアと並んでお茶の間にまで届いたR&B。古いステレオタイプ的な黒人グループ像も満たしつつ誠実なハーモニーを万人向けのポップスとして折り目正しく披露した結果、本国だけで1200万枚以上のセールスを達成した。ベイビーフェイスとジャム&ルイスがスキのない逸曲をこぞって提供し、後者の“On Bended Knee”はSeihoのネタ使いでもお馴染み。 *出嶌

【24】

R&Sやワープ作品を啓蒙した同年の〈テクノ専門学校〉シリーズ然り、デトロイト~硬質テクノに再解釈の動きが見られる現状もあってか、誕生から20年経過したいまも不思議と同時代性が感じられるアルバム。10分超に渡るアトモスフェリックな名曲“虹”はドイツのMFSからシングル・カットされ、欧州での知名度を上げる契機となった。 *土田

【25】

この2作目からの第1弾シングルであった“You Gotta Be”が、楽曲の持つポジティヴな生命力と同様にじわじわと広がり続け、最高で全米5位となったのは翌95年のこと。シャーデーに端を発してUKから登場し続ける、孤高かつナチュラルな存在感のシンガー・ソングライターという系譜において、もっとも重要なひとりだ。 *池谷

 

【22】

Mr.Children Atomic Heart トイズファクトリー(1994)

ウルフルズやスピッツなど、90年代的な感覚の新進バンドがブレイクを控えていた94年、その世代の代表として一気にトップへ駆け上がったのがミスチルだった。シングル以外のナンバーに潜むスタンダード感も半端じゃなく脂が乗っている。ビートルズの『Live At The BBC』と桑田佳祐の『孤独の太陽』が話題となった年を象徴するような大ヒット作か。 *轟

 

【21】

〈グランジ〉の熱狂はバンドの実像を見え難いものにしていたが、サウンドガーデンは本作でハード・ロックへの回帰や歌心を宿すことで多様性豊かな作品を完成させ、本物であることをわれわれに確信させた。全米で1位を獲得した本作はリリース20周年となる今年、豪華な仕様で復刻されたばかり。さらにナイン・インチ・ネイルズとのツアーも発表された! *青木