Definition of Brit Pop
UKロックが歴史的な熱気を放って盛り上がった瞬間――そこにはオアシスがいた
〈20年後には、みんな『Definitely Maybe』をありのまま認めて買って聴くようになるよ。大事なのはそういうことだ〉――これは資料に引用されているノエル・ギャラガーの言葉。発言した時期は94年8月、つまり件の『Definitely Maybe』、オアシスのファースト・アルバムがリリースされる直前である。そして今年、その言葉は証明された。このたび同作のデラックス・エディションが登場することになったのだ。
正確に言えば、ビッグマウスのようでいてノエルは慎重に話している。『Definitely Maybe』は1週間で当時の〈デビュー最速セールス記録〉を更新し、結果的には本国UKで200万枚以上、世界では500万枚以上ものセールスを上げることになったのだ。20年を待たずして、このアルバムはありのままを認めたリスナーたちに聴かれてきたのである。今回のリイシューによって往年のファンはもちろん、例えばジェイク・バグ(94年生まれだ!)を経由して過去を知ったような新しいリスナーも惹き付けられるに違いない。
ジェイク・バグの2013年作『Shangri La』収録曲 “Slumville Sunrise”
このファースト・アルバムをリリ−スした頃のオアシスは、リーダーシップを執っていたノエル(リード・ギター/ヴォーカル)を中心に、その弟のリアム・ギャラガー(ヴォーカル)、ポール“ボーンヘッド”アーサーズ(リズム・ギター)、ポール“ギグジー”マッギガン(ベース)、トニー・マッキャロル(ドラムス)という編成。翌年にはトニーが解雇されるため、デビュー時の5人では唯一のアルバムということになる。生産限定盤として今回登場する〈デラックス・エディション〉は、オリジナルを含むCD3枚に、そんな初期オアシスとプロデューサーのマーク・コイルが重ねてきた奮闘のすべてが記録されているお宝というわけだ。
Disc-2にはシングルBサイドの音源などがリマスターされてコンパイルされている。94年4月に“Supersonic”でデビューした時から後々まで彼らはB面曲にも定評があっただけに、これは嬉しい一枚だろう。また、アルバム後に出たシングル“Whatever”とカップリングの“(It’s Good) To Be Free”も収録されている。そして、Disc-3は公式初リリースとなる未発表ライヴ音源や門外不出だったデモ音源が計17曲も収録されているのだから凄い。特に初来日時に東京のホテルで録音された“Half The World Away”は日本のファンならとりわけ興味深いものじゃないだろうか。
なお、今回の豪華な復刻は〈Chasing The Sun 1993-1997〉というシリーズの第1弾に位置づけられて、この後は『(What's the Story)Morning Glory?』(95年)と『Be Here Now』(97年)のデラックス盤も発表されていくようだ。そして……と現時点で書けることは何もないが、解散から5年、オアシスの周辺が賑わしくなってきたことだけは間違いない。
▼関連作品
左から、ノエル・ギャラガーの2011年作『Noel Gallagher's High Flying Birds』(Noel's Sour Mash)、ビーディ・アイの2013年作『BE』(Beady Eye)
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