サロネン指揮バイエルン放送交響楽団とのデビュー・ライヴで選ばれたのは入魂のグリーグ!
2009年録音のチャイコフスキー&リストから6年。アリス=紗良・オットが久し振りにコンチェルト・アルバムを手掛けた。選んだ作曲家はグリーグ。彼女のファンならば、2012年のマゼール&N響や14年のV.ペトレンコ&オスロ・フィルとの共演を思い出すことだろう。今回はオットが、2015年1月にサロネンの指揮で、故郷のバイエルン放送交響楽団(SOBR) にデビューした際の演奏をライヴ収録したものである。豪華なパートナーを得た彼女は、自身の美しいサウンドを活かし、折り目正しくグリーグの抒情性を歌い上げている。横のつながりや、音量バランスの加減といったオケとのアンサンブルにも細心の注意が払われているのが聴き取れるだろう。第3楽章後半のクワ ジ・プレストを心持ちゆっくり開始するのも彼女らしい。
サロネンは、第1楽章第1主題のテヌートの扱いに始まり、続くクラリネットとファゴットのクレッシェンド&ディミヌエンドなど、細部を明瞭に描き、スコアに書かれたデュナーミクを十全に音化している。また、SOBRの、特に管楽器陣の巧さと雄弁さは素晴らしく、第1楽章Bから出てくるオーボエ(シュテファン・シリ)をはじめ、ファゴットやホルン、トランペットなど、実に惚れ惚れとさせられる。
併録は、グリーグのメルヘン的側面に光を当て、この作曲家が折に触れて書いた複数の《抒情小曲集》から11曲と《ペール・ギュント》から2曲(収録は今年4月)。曲想が似ている 《山の魔王の宮殿にて》と《トロルの行進》、《パック》を3つとも収録しているのは、彼女の妖精趣味もあるのだろうか。〈昔々〉でのノスタルジーと憧憬のような音色の使い分けやリズムのさりげない崩し、〈蝶々〉での、蝶が舞うかのようなアゴーギク、〈妖精の踊り〉での軽やかさなど、オットは各曲の性格をさりげなく表現。コンチェルトと同様、グリーグの名旋律家ぶりや、品のよい甘やかな抒情の世界を十分に堪能できる内容となっている。
LIVE INFORMATION
『颯爽と時代を翔るピアニズム アリス=紗良・オット ピアノ・リサイタル』
○9/30(金)19:00 開演
会場:東京オペラシティ
曲目:グリーグ:叙情小曲集より/グリーグ:バラードOp.24~ノルウェー民謡による変奏曲形式による/リスト:ソナタ ロ短調
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