KIDS NEVER DIE 2016
[特集]いままたポップ・パンクが盛り上がっている理由

 


BE AMBITIOUS!

 少年性を打ち出したシンガロング型のパワー・ポップを携え、ワン・ダイレクションが颯爽と音楽シーンに現れたのはいまから5年ほど前のこと。彼らを起点としたボーイズ・センセーションの延長線上で、2014年になるとヴァンプスやファイヴ・セカンズ・オブ・サマーなど楽器を持ったグループが次々とブレイク。彼らの先輩格であるマクフライとバステッドの合体プロジェクト=マクバステッドも大きな話題になりました。そうしたバンドの多くがブリンク182やグッド・シャーロットらをフェイヴァリットに挙げ、自分たちの作品にマーク・ホッパスやマッデン兄弟を招待。メインストリームにそっち系の音が戻ってくるのです。そう、いまポップ・パンクがキテる理由のひとつは、ボーイズ・バンドの無邪気な後押しがあったから。インタヴューでジョエルも語っている通り、グッシャーに自信を取り戻させた5SOSには足を向けて寝られませんよ。 *山西絵美

マクバステッドの2014年作『McBusted』収録曲“Air Guitar”

 

WHAT’S EASYCORE?

A DAY TO REMEMBER
NEW FOUND GLORY

 パンクのサブ・ジャンルとして2010年前後にキッズの間で浸透した〈イージーコア〉。その起源は2008年にニュー・ファウンド・グローリー(以下NFG)が行った〈The Easycore Tour〉にあり、同ツアーには後に〈イージーコア御三家〉と言われるようになるフォー・イヤー・ストロング、セット・ユア・ゴールズ、ア・デイ・トゥ・リメンバー(以下ADTR)が帯同していた。ポップ・パンクの明るいメロディーに、ハードコア/メタルコア由来のシャウトとブレイクダウンを混ぜたもの――大まかな音の特徴はざっとこんな感じだ。時代的にパンク人気が衰退し、テクニック重視のメタルコアが勢いを増していた頃。そうした背景を受け、ポップ・パンクのキャッチーな魅力をメタルコア好きにもアピールしよう、という狙いがNFGにはあったのだろう。で、これが大当たり。アンダーグラウンドを中心に注目を集め、先述したUS生まれの御三家のほかにも、フランスではチャンク!ノー・キャプテン・チャンク!が、UKではミーVsヒーローなどが躍動。昨年あたりから表面化してきたパンク・ブームは、彼らが地下でその火種を守ってきたからこそ、なのである。

A DAY TO REMEMBER 『Bad Vibrations』 ADTR/Indianola/ワーナー(2016)

 というわけで、本特集に〈おっ!〉と思った方は、ぜひADTRのニュー・アルバム『Bad Vibrations』をチェックしてみてほしい。今回も期待を裏切らない仕上がりで、一度聴いたら覚えてしまいそうな明るい歌メロに、ゴリゴリのリフや豪快極まりないブレイクをブチ込み、陰と陽のコントラストをダイナミックに描いている。もし友達に〈イージーコアって何?〉と訊かれたら、迷わずこれを差し出せばいい。 *荒金良介

 

HOPELESS

ALL TIME LOW

 93年設立のホープレスは、90年代末にマスタード・プラグで当て、当時のパンク・ブームの最中に頭角を現したLAのレーベル。やがて時代の移ろいと共にアヴェンジド・セヴンフォールドらメタルコア勢が幅を効かせるようになりますが、ここ数年はだいぶ方向性が変わってきた印象です。分岐点はイエローカードを獲得した2011年でしょうか。その後、オール・タイム・ロウを呼び戻し、ニュー・ファウンド・グローリーやベイサイドが新たに仲間入り。今年に入ってサム41と契約を交わしたことも、キッズの間では嬉しいニュースとして広まりました。

NECK DEEP
WITH CONFIDENCEW

 もちろん、そうしたキャリア組だけじゃなく、新人の育成にも尽力しています。その筆頭がウェールズ生まれのネック・ディープ。〈イージーコア以降〉を感じさせる力強くてファストな音が大ウケし、UKを中心に彼らのフォロワーが急増。パンク界でも〈ブリティッシュ・インヴェイジョン〉的な動きが見られるように。とりわけ、今年の初めに同レーベルからアルバム・デビューを飾ったイースト・サセックス出身のロームは、ネクスト・ブレイカーとして名前を記憶しておいてください。ほかにも、5SOSのツアー・サポートを務めて波に乗るシドニーのウィズ・コンフィデンス、AP誌恒例のニューカマー特集でも大きく取り上げられたボストン発のソーモスなど、注目株が多数在籍。若手の底上げがあってこそ、シーンが活性化していくというもの。つまり、ホープレスの青田買い的な動きが、現在のポップ・パンク人気を支える一因になっているのです。 *山西絵美

ネック・ディープの2015年作『Life’s Not Out To Get You』収録曲“Can’t Kick Up The Roots”
ウィズ・コンフィデンスの2016年作『Better Weather』収録曲“Voldemort”

 

I WANNA BE YOUR GIRLFRIEND

AGAINST THE CURRENT
COURAGE MY LOVE

 男だらけのパンク界において、美女の存在は心のオアシス。ノー・ダウトに憧れてバンドを始めたというパラモアのヘイリー・ウィリアムズや、デリック・ウィブリー(サム41)との結婚を境にステイタスを固めたアヴリル・ラヴィーン、マット・ティーセン(リライアントK)やベンジー・マッデンと浮名を流し、メジャー・デビュー前は〈ワープト・ツアー〉などでブイブイ言わせていたケイティ・ペリーほか、2000年代序盤~半ばのブーム時にもキッズの目と耳を喜ばせてくれるアイコンが存在しました。

TONIGHT ALIVE
HEY VIOLET

 で、そうした流れが途絶えていたわけではないのですが(例えばヘイ・マンデーとかオートマティック・ラヴレターとか)、昨年あたりからいわゆる〈ポスト・パラモア争い〉が激化しているのをご存知ですか? そのレースで一歩リードしているのは、かつてパラモアを発掘したフェルド・バイ・ラーメン所属という保証書付きの、NYに住むクリッシー・コスタンザ(アゲインスト・ザ・カレント)。また、彼女のすぐ背後では、双子らしい息の合ったコーラスも圧巻なカナダのメルセデス&フェニックス・アンホーン(カーレッジ・マイ・ラヴ)、ゲット・アップ・キッズの元メンバーをバックに従えるカンザスのアリシア・ソロンブリーノ(ビューティフル・ボディーズ)、ヴィック・フエンテス(ピアス・ザ・ヴェイル)との熱愛も噂されるシドニーのジェナ・マクドゥーガル(トゥナイト・アライヴ)、5SOS主宰のレーベル第1弾アクトであるLAのヘイ・ヴァイオレットの女子3人らが、ニュー・ヒロインの座を狙っています。勝負の行方はいかに!? とにもかくにも、女性たちの華やかな戦いが、シーンの盛り上がりに拍車を掛けていることは間違いありません。 *山西絵美

アゲインスト・ザ・カレントの2016年作『In Our Bone』収録曲“Running With The Wild Things”
カーレッジ・マイ・ラヴの2015年作『Becoming』収録曲“Cold Blooded”
トゥナイト・アライヴの2016年作『Limitless』収録曲“Drive”

 

TO BE CONTINUED...

 ご覧いただいた通り、すでにポップ・パンクの注目盤が相次いで登場していますが、まだまだ財布の紐は緩めたままでお願いします。突然の新曲“Bang Bang”の発表と共に4年ぶりとなるアルバムのカウントダウンが始まったグリーン・デイ(噂によると出世作『Dookie』みたいな内容だとか!)、同じく4年ぶりにカムバックするオフスプリング(プロデュースは盟友のボブ・ロック!)、マクバステッドでの成功を弾みに10年もの時を経て再結成したバステッド、2004年作『Chuck』ぶりにギタリストのデイヴ・バクシュが再加入したことも話題のサム41など、年末にかけて大型リリースが目白押し。さらにパラモア、オール・アメリカン・リジェクツ、セイヴス・ザ・デイらが、次作のレコーディング作業をほぼ完了したとツイートしています。このブームが一向に冷めそうもない理由、それは今後も凄いブツが大量に控えているからですよ! *山西絵美

グリーン・デイの2016年作『Revolution Radio』収録曲“Bang Bang”