イージーコアの台頭やネック・ディープらホープレス発の注目株、加熱するニュー・ヒロイン争いなどパンク界の新局面を解説
【特集:KIDS NEVER DIE 2016】Pt.3
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- 2016.09.08
KIDS NEVER DIE 2016
[特集]いままたポップ・パンクが盛り上がっている理由
BE AMBITIOUS!
少年性を打ち出したシンガロング型のパワー・ポップを携え、ワン・ダイレクションが颯爽と音楽シーンに現れたのはいまから5年ほど前のこと。彼らを起点としたボーイズ・センセーションの延長線上で、2014年になるとヴァンプスやファイヴ・セカンズ・オブ・サマーなど楽器を持ったグループが次々とブレイク。彼らの先輩格であるマクフライとバステッドの合体プロジェクト=マクバステッドも大きな話題になりました。そうしたバンドの多くがブリンク182やグッド・シャーロットらをフェイヴァリットに挙げ、自分たちの作品にマーク・ホッパスやマッデン兄弟を招待。メインストリームにそっち系の音が戻ってくるのです。そう、いまポップ・パンクがキテる理由のひとつは、ボーイズ・バンドの無邪気な後押しがあったから。インタヴューでジョエルも語っている通り、グッシャーに自信を取り戻させた5SOSには足を向けて寝られませんよ。 *山西絵美
WHAT'S EASYCORE?


パンクのサブ・ジャンルとして2010年前後にキッズの間で浸透した〈イージーコア〉。その起源は2008年にニュー・ファウンド・グローリー(以下NFG)が行った〈The Easycore Tour〉にあり、同ツアーには後に〈イージーコア御三家〉と言われるようになるフォー・イヤー・ストロング、セット・ユア・ゴールズ、ア・デイ・トゥ・リメンバー(以下ADTR)が帯同していた。ポップ・パンクの明るいメロディーに、ハードコア/メタルコア由来のシャウトとブレイクダウンを混ぜたもの――大まかな音の特徴はざっとこんな感じだ。時代的にパンク人気が衰退し、テクニック重視のメタルコアが勢いを増していた頃。そうした背景を受け、ポップ・パンクのキャッチーな魅力をメタルコア好きにもアピールしよう、という狙いがNFGにはあったのだろう。で、これが大当たり。アンダーグラウンドを中心に注目を集め、先述したUS生まれの御三家のほかにも、フランスではチャンク!ノー・キャプテン・チャンク!が、UKではミーVsヒーローなどが躍動。昨年あたりから表面化してきたパンク・ブームは、彼らが地下でその火種を守ってきたからこそ、なのである。

A DAY TO REMEMBER Bad Vibrations ADTR/Indianola/ワーナー(2016)
というわけで、本特集に〈おっ!〉と思った方は、ぜひADTRのニュー・アルバム『Bad Vibrations』をチェックしてみてほしい。今回も期待を裏切らない仕上がりで、一度聴いたら覚えてしまいそうな明るい歌メロに、ゴリゴリのリフや豪快極まりないブレイクをブチ込み、陰と陽のコントラストをダイナミックに描いている。もし友達に〈イージーコアって何?〉と訊かれたら、迷わずこれを差し出せばいい。 *荒金良介