インタビュー

植田真梨恵のパレードはどこへ向かう? 幼少期のトラウマを煌めきへと昇華した新シングル“夢のパレード”を語る

植田真梨恵のパレードはどこへ向かう? 幼少期のトラウマを煌めきへと昇華した新シングル“夢のパレード”を語る

このパレードはどこへ向かう? その夢はどこに続いている? 現在進行形の歌と言葉を紡ぎ続ける彼女から届いた、実りの秋のニュー・シングル!

 気が付けば、メジャー・デビューから2年が過ぎていた。ひたむきにギターを掻き鳴らし、その時の胸の内にあるいちばん強い思いを、真っ直ぐに吐き出すスタイルは変わらない。どころか、音も言葉もよりシンプルに、表現になる前の感情そのものへと、より先鋭化しているように感じる。何の説明もつけず、〈これが私です〉と言うかのごとく。植田真梨恵26歳の秋、ニュー・シングル“夢のパレード”の登場だ。

植田真梨恵 夢のパレード GIZA(2016)

 「とても自分の気持ちに近いところから生まれた曲で、誰かに届けることを前提にして作っていたわけではないんです。自分のために書いたものを、皆さんも好きと言ってくださって、シングル化することができました」。

 一足先、7月23日に東京・赤坂BLITZで行われたワンマンでこの曲が初披露された際には、ソリッドなギター・リフの元気なロック・チューンだな、と思ったものだ。が、音源になって驚いた。哀愁を帯びて疾走するストリングス、ピアノ、アコギ、そして涙がこぼれる一歩手前のような、エモーショナルなヴォーカル。全体の印象は予想以上にセンチメンタルだ。

 「幻想みたいに、いろんな景色が動いていくようなイメージでのアレンジをお願いしました。秋に届ける曲なので、ストリングスは入れたいなと強く思いましたね。アコギは、作曲した時にも使っていたギブソンB-25で、カランカランって乾いた感じで鳴るのが、この曲に合っていると思います」。

 ふしぎがいっぱいつまった夢のパレード。先端から飛び出す仕掛けのおもちゃ。青い空。降りだす雨。冷蔵庫で待ってるあすのごほうび――脈絡なく散りばめられた言葉からイメージされるものは、聴く人それぞれに委ねよう。何しろ、作者の植田真梨恵にさえはっきりわからない。無意識と意識の挟間から生まれた、夢判断のような曲と言えば、伝わるだろうか。

 「とても自然に書いた曲なので、私自身も〈どうして“夢のパレード”なんだろう?〉という気持ちなんですよ(笑)。ただ、生まれた時の形としては、すごく悲しい気持ちの中で出来た曲でした。切ないこと、つらいこと、消化しにくいことが、生きてるといっぱいある。半分は諦めているし、半分しょうがないよなとも思う。そういう意味で、私の中の〈大人と子ども〉という部分が、無意識にテーマになっているかなと思います」。

 アートワークにも、これまで以上に力が入っている。ジャケットに写る、不気味なような可愛らしいような、夜の公園とパジャマの真梨恵。スリーヴ内のシュールなコラージュやイラストの原案も、彼女が作った。

 「びっくりしたり怖かったりする要素が、この曲には必要だと思っていて。というのは、私の小さい時の思い出で、忘れたいこと……大袈裟に言うとトラウマみたいなものが、ここにきて、少しでもキラキラしたものに変わっていけばいいねと思うし、大人になっても嫌なことはあるねとも思うし……言葉ではすごく説明しづらい歌なんですね。だからこそ、目で見て伝えられる部分にはすごくこだわったし、音楽とアートワークの全部の要素で、なんとなく感じてくれるものが強くあればいいなと思ってます。なるべく優しく、あったかく、包むような曲になればいいなと思ってます」。

 カップリングは“サイハロー -autumn ver.-”。インディーズ時代からライヴの定番だった曲が、ピアノとヴァイオリンの美しいアレンジを施されて待望の初CD化だ。もう一曲、痛快なパワー・ポップ調の“210号線”も、彼女の故郷にある久留米大学のTVCMソングとしてこの春からオンエアされている曲の、嬉しい初収録。3曲ともまるで異なる曲調だが、飾らない音と言葉で〈これがいまの私です〉と叫ぶ、その純粋さは共通している。

 「通して聴くと、この3曲が一本の道で繋がっていくような感じがしてるんですよ。もともと〈秋に聴きたい曲〉という感じでシングルにまとめていったら、大きい通りが頭の中に浮かぶような一枚になりました」。

 いまは音楽と向き合うことが本当におもしろいんです――そう言う彼女の笑顔に迷いはない。いまいちばん歌いたい歌を紡ぎながら、植田真梨恵の夢のパレードは未来へと進んでゆく。

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