暑気を和らげる風のように軽やかな、〈わからなわかる〉夏の贈り物! 

 草原と木々のグリーン、リネンのイエロー、空のブルー、そして愛用の白いベッド。植田真梨恵史上、最高に爽やかなジャケット写真に包まれた、ニュー・シングル“わかんないのはいやだ”のテーマは〈夏〉。メジャー・デビュー1周年を機に、さらにポップでエネルギッシュな方向へと前進する、強い決意を込めた一枚だ。

植田真梨恵 わかんないのはいやだ GIZA(2015)

 「このCD自体が、のちに振り返って、2015年の夏を思い出すきっかけになればいいなって思います。だから1枚を通して、曲にしても、アートワークにしても、〈夏〉をすごく意識して作りました」。

 “わかんないのはいやだ”は、ピアノを加えたバンド・サウンドと、飛び跳ねるようなメロディーが軽やかに疾走する、心ときめく3分間のポップ・チューン。この曲の成り立ちには、いくつかのエピソードが積み重なっているが、そもそもの始まりは約1年前。ケータイのメモに残した〈わからなわかる〉というワードだった。

 「わからないけどなんとなくわかる、とか、わからないけどなんかいい、とか。私自身が音楽に対してそう思っているので、思いついた言葉です。そういう感じを曲にしたいな、と思ったんですよね」。

 そんなある日突然起きた、友人が飼っていた猫の家出事件。落ち込む友人を励まそうと、何か言えば言うほど、何も伝わる気がしないという、自己嫌悪の日々。歌詞を見ながら聴けば、〈大事なものを失くしたの〉から始まる1番の歌詞がそのまま、彼女と友人と家出猫を巡るストーリーと、ぴったり重なっているのがわかるはずだ。

 「私も同じような経験があるから、すごく気持ちがわかる気もしたし。でもいま現在私は何も失くしてないから、かける言葉が見つからなかったんですよね。〈何て言ったらいいんだろう?〉ってずっと思いながら、この曲を書いていて、歌詞とメロディーが出来た次の日に、猫が帰ってきたんですよ!」。

 すべての猫好きの感動を誘う1曲。ではなくて、この曲の本質は、彼女と友人との間に新たに結ばれた〈わからないけどわかりたい〉という関係性にある。〈そばにいるよ 話してよ〉――最後のフレーズがこんなにも胸に沁みるのは、そこに愛があるからだ、と思う。

 「100%わかりあうことはできないと思うので。だとしたら、〈大切に思ってるよ〉という気持ちだけでいいよな、と。その気持ちを、あっと言う間に終わってしまう夏のように、疾走感のある曲に乗せて、大きな声でみんなで歌えるようなものにしたかったんです」。

 ちなみに、彼女にとってこの曲の〈わからなわかる〉ポイントは、メロディー。メロディーにはいつも、好みがはっきり出てしまうという。

 「〈私が好きなメロディー〉と〈みんなに親しみやすいメロディー〉は違うのかなと思うんです。この曲で言えば、Bメロの〈ああ、君の痛みを~♪〉のところ。私はこの気持ち悪いところが大好きで、そこが好きだと言ってくれる人がいれば、生きててよかったなと思う(笑)。逆にカップリングの“クリア”は、より親しみやすいメロディーになったかなと思っています。どっちも作っていきたいし、簡単に口ずさめて、聴いてるだけで元気になる曲を作るのが理想です」。

 いまは〈音楽のことをもっとわかりたい〉と、話す表情が輝いて見える。植田真梨恵のメジャー・デビュー2年目の夏は、大きな飛躍の季節にきっとなる。