インタビュー

この世代ならではの表現で世界に衝撃を与える! WONKが語る、東京発〈エクスペリメンタル・ソウル〉の神髄

WONK 『Sphere』/タワレコメンに迫りコメン【第4回】

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自分たちの世代ならではの表現で世界に衝撃を与えたい

――それで、今回のアルバム『Sphere』なんですが……お世辞抜きに素晴らしかったです!

全員「ありがとうございます(笑)」

――今回のアルバムでめざしたものとは?

荒田「前のアルバム(『From the Inheritance』)は、スタジオに入ってセッションから構築したので、今回はセッションでは作らないと決めていて。だから、サンプリングしたトラックがあったり、ドラムを打ち込んだトラックがあったり、作り込んだものが多いんです。家に一度持ち帰ってアレンジを考えた後、スタジオではない場所にみんなで集まって、構成を話し合いながら組み立てていきました」

井上「普通のヒップホップみたいに、荒田がいろんなレコードからサンプリングして作ったものをみんなで組み立てていったものもありますし、文武がバーッと弾いたものをサンプリングして曲にしたものもあるし……」

江崎「僕がコード進行をしっかり決めて作った鍵盤のパターンにベースを乗せてもらったものもあるし、幹さんがデモの段階で作り込んだものを元に構成したものもありますね。だから、曲によってだいぶ作り方が違うんですよ」

――いずれにせよ、生演奏でも必ず分解したり再構築するプロセスを一度通過してるわけですね。

江崎「そうですね。だから、ボツ曲も相当あって(笑)」

――ヴォーカルのメロディーや歌詞を乗せていく作業というのは、どの段階で行われるんですか。

長塚「演奏陣に地のもの(ベースとなるトラック)を全部作ってもらって、その上に乗るメロディーを荒田と僕で考えていく感じですね。そのメロディーが出来た段階で歌詞を乗せていくという」

井上「9割5分ぐらい出来たトラックを渡して、そこからメロディーを考えていくんです」

長塚「で、実際に歌ってみて、トラックを微調整していくという」

長塚健斗(ヴォーカル)
 

――そうやってある程度トラックが完成された段階で、歌メロを考えていくというやり方はWONK以前からやっていたんですか?

長塚「いや、やってないです。経験のないことだったので、〈挑戦〉の一言に尽きるというか(笑)。でも、そういうビート主体のメロディーの作り方って、すごくおもしろいんですよ。どうやって歌でグルーヴを生み出すか、その点に関しては荒田から指示をもらったりして、細かく考えています」

荒田「もちろん全曲明確なイメージがあるわけじゃなくて、長塚さんに任せてやってもらうケースもありますけどね。(新作に収録された)“1914”なんてまさにそんな感じだったな。歌を録っている時、長塚さんは〈俺、リズム感ねえなあ〉なんて言うんですけど、〈いや、逆にその粘っこい歌い方のほうがいいんじゃないですか?〉という話になって、そのほうがやっぱり良かった」

――“1914”は、今回の収録曲のなかでも歌メロがグイグイ引っ張っていく、かなりドラマティックな展開の曲ですよね。

江崎「この曲は僕が(元となる)素材を持ち込んだんですけど、JR山手線・東京駅の発車メロディーがモチーフなんですよ(笑)。あのメロディー、実は結構エグいコード進行なので、いつかそれで曲を書いてみたいなと思っていたんです。そのコード進行をベースに別のコードを加えてループさせました。“1914”というのは、東京駅が開業した年なんですよ(笑)」

JR山手線・東京駅発車メロディー
 

――それはまったくわからなかった(笑)。そうやって、いくつものアイデアを積み重ねて曲が出来ることも多いんですか。

江崎「全曲そうですね。ラップの曲は荒田が8割ぐらい作ってきて、そこに管楽器やピアノを乗せるパターンもあるんですけど、歌モノはみんなでかなり細かく作り込んでいます」

――あと、WONKの特徴の一つとして、ズレや揺れを内包した荒田さんのドラミングがあると思うんですね。音源に関してはサンプリングや打ち込みも併用されているわけですけど、生で演奏されるライヴではそうした特徴がより前面に出てきますよね。

荒田「そういうものが、いまのマイブームなんで(笑)。ただ、テンポ軸に捉われず、自由に叩きたいという考えは昔からありましたね。キャンヴァスに自由に絵を描くように叩きたいと思っていたからこそ、こういうドラミングになってるんだと思う」

荒田洸(ドラムス)
 

――それはビート・ミュージック以降のドラミングということでもありますよね。

荒田「そうですね。J・ディラがいたからこそのドラミングではあると思います。ただ、〈J・ディラ系譜のビート・ミュージックを生のバンドでやる〉というのが最初のコンセプトでしたが、音源制作に関しては必ずしも生であることにこだわる必要はないという方向に変わってきていて、打ち込みもサンプリングもアリになっています」

――そして、今回のアルバムはまさにそういうやり方で作られたと。

荒田「そうです。もちろんライヴは生でやってきましたけど、制作については変わってきましたね。自由度が高くなってきたというか」

――今回はDian(KANDYTOWN)やJuaのほか、ケニア出身のトゥエリGやアメリカはジョージア州出身のワントゥエンティと、4人のラッパーがフィーチャーされていますが、人選はどのように?

荒田「Juaは文武に紹介してもらったんですけど、あとは僕が選びました。Dianは地元が一緒で」

11月2日にリリースされるKANDYTOWNのニュー・アルバム『KANDYTOWN』収録曲“Paper Chase”
 

江崎「トゥエリGもワントゥエンティも実は日本語ペラペラなんですけど(笑)、英語でラップしてもらいました」

荒田「ラッパーに関しては、英語詞であることにそれほどこだわってなくて。トゥエリGやワントゥエンティに日本語でラップしてもらうんだったら、日本語がネイティヴのラッパーにやってもらったほうがいいし、普段使ってる言語のフロウのほうが格好良いので、それでやってもらいました」

――Juaがフィーチャーされた“Real Love”では、石若駿さんが壮絶なプレイを披露してますが、江崎さんは石若さんと頻繁にセッションしていますよね。

江崎「彼とは大学生の頃からやってるし、(常田大希のソロ・プロジェクト=)Daiki Tsuneta Millennium Paradeでも一緒にやってますね。駿は〈力強いライド・シンバルの4ビート、そこに俺の強みはあると思う〉ということをよく言っていて。だからDaiki Tsuneta Millennium Paradeでも4ビートを大胆に採り入れている曲があるし、今回も4ビートのシーンを作って、そこで駿に叩いてもらったらおもしろいと思ったんです」

★Daiki Tsuneta Millennium Paradeの常田大希と石若駿のインタヴューはこちら

荒田「彼のドラムは最強ですよね。ズルイ(笑)」

長塚「〈素晴らしい〉の一言ですよ」

江崎「すっと耳に入ってくるドラムなんですよね。学部時代に僕が映像やアニメーション向けの作曲を専攻していた関係で、同じ大学の同級生だった彼にいろいろとレコーディング参加をお願いしていたのですが、当時から駿が基準になったら怖いなと思っていました。彼を基準に〈えっ、これぐらいすぐに叩けるでしょ?〉ってなっても、誰しもそう彼みたいに叩けるものじゃないので(笑)。あと、彼はただのドラマーではなくて、〈音楽家〉なんですよ。ピアノもめちゃくちゃ上手いし、トランペットも吹くし、本当に音楽のことを隅から隅までわかっている」

江崎と石若が参加したDaiki Tsuneta Millenium Paradeの2016年作『http://』収録曲“Angya”
 

――江崎さんと荒田さん、そして石若さんは同じ92年生まれですよね。長塚さんと井上さんは2つ年上の90年生まれで。

江崎「そうですね。常田大希も同じ大学の同級生で僕らと同じ92年生まれです」

――江崎さんと石若さんは90年代生まれのアーティストを中心に企画されたジャズ&アート・フェスティヴァル〈JAZZ SUMMIT TOKYO〉の運営メンバーをやっていますが、90年代生まれのミュージシャン同士の同世代意識は、WONKのなかでもあるんですか。

井上「このバンドにおいては、僕と長塚の90年世代と、文武と荒田の92年世代とでは多少違うんです。僕らは少し距離を置いて92年世代を見てるオッサンというか(笑)」

一同「ハハハハハハ(笑)」

井上「それは冗談として……〈同世代、熱いよね〉という話はよくします」

荒田yahyel、いいよね」

yahyelの2016年のシングル“Once”
 

江崎「yahyelも僕らの世代で構成されていますし。加えて、同い年のおもしろいジャズメンも多いんですよ。東京では石若駿、中山拓海中島朱葉。NYでは寺久保エレナ馬場智章森智大。森智大とは小学生の頃から一緒に活動していました。あとはジャズメンではないけど、常田大希と額田大志……よく駿と大希と大志とは焼肉を食べに行ってるんですが、〈日本の音楽の世界における存在感って、最近、薄いよね〉ということを話すんです。きゃりーぱみゅぱみゅがパリ公演を成功させた、みたいなことは聞くけど、かつてYMOが海外公演を成功させた時のようなインパクトを(いまの日本のミュージシャンは)与えられていないと思う。僕らの世代が圧倒的に影響を受けているのはブレインフィーダーストーンズ・スロウが出していた音楽で、その世代から日本発の音楽を積極的に世界に発信していきたいし、その世代ならではの表現で世界に衝撃を与えよう、ブレインフィーダーやストーンズ・スロウをぶっ倒そうという話は、同世代の連中とよくしています」

――そして、WONKの目標もそこにあると。

江崎「そうですね。来年はヨーロッパのほうでライヴをできたらいいなと思っていて、いろいろ動いているところです」

 


 WONK 1st ALBUM『Sphere』RELEASE LIVE

11月12日(土)@東京・渋谷PLUG
18:30開場/19:00開演
前売り 2,500円/当日 3,000円

★詳細、そのほかのライヴ情報はこちら

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