それぞれの5年を経て、ますますおいしい女たち!
「あの晩終わったあとの矢野さんは〈私、すごく元気!〉と言っていて。前回のほうがぐったりしていた気がする。またパワーが増したんですかね。プレイバックを聴いたときもそんな印象を持ちました。ライヴが進むにつれてどんどん声が出てくるのがわかる。私はというとピアニストとアレンジャーの役割があり、大事な部分がバシッと決まるかどうかコンダクターのような気持ちでいたんですが、ただ、このまま終わらなければいいのに……って考えていたことを思い出しますね」
“ラーメンな女たち”の夜をそう振り返る上原ひろみ。矢野顕子のデビュー40周年記念企画の一環で2016年9月15日にBunkamuraオーチャードホールで行われたデュオ・ライヴは、矢野顕子×上原ひろみの2枚目のライヴ盤『ラーメンな女たち-LIVE IN TOKYO-』として残されたわけだが、ここまで湯気がぼうぼうと立つ熱いセッションが繰り広げられていたとは、生で味わえなかった悔しさが余計に募る。
「矢野さんは基本いつだってオープン。こちらのアイディアはすべてを受け入れてくれて、返ってくるのはいつも〈いいよ~、おもしろそうだね~〉って明るい返事。音楽が良くなる可能性があればどんなことでも試してみる。だから私はそこへと飛び込んでいくのみ」
スープの冷めない至近距離で呼吸を合わせながら自由闊達な音色を紡いでいくふたり。地面を叩く雨のようにエモーショナルで音楽的なピアノの音たち。ふたりの大胆な飛び込みっぷりがとにかく鮮やかで、随所にあがる大きな水飛沫が綺麗な虹を作っていく。「今回のほうがよりふくよかさが生まれていると思う」と上原が言うとおり、音世界やジャンルの広がり、描き出される物語の奥行きなどに関して『Get Together -LIVE IN TOKYO-』よりアップしているし、演奏のスピード感が増している点もあり(《ラーメンたべたい》での食欲旺盛ぶりといったら!)。どの演奏もふたりが揃えば百人力の証明となっていて、総合的に最強。上原の曲に矢野が歌詞を付けた《Dreamer》の美しさ、上原のオリジナル曲《こいのうた》に漂う日本ならではの季節感にもウットリさせられる。
〈矢野顕子〉という乗り物に乗って日夜冒険を続ける音楽家は「毎回どうなるかわからないおもしろさを与えてくれて、いつも私を楽しませてくれる。今日はいったい何が生まれるんだろう? そんなふうにふたりがいつもワクワクできるプロジェクトなんですよ」と上原は話すが、誰よりも楽しいのは私なんだ、と言いたげな本作での彼女のプレイは純粋な喜びに溢れていて、眩しいったらない。4月から始まる全国ツアーには何としても向かわねば。
LIVE INFORMATION
矢野顕子×上原ひろみ TOUR 2017 「ラーメンな女たち」
○4/15(土) 18:00 開演 静岡市民文化会館 中ホール
○16(日)17:00 開演 大阪フェスティバルホール
○18(火)19:00 開演 東京文化会館 大ホール
○19(水)18:00 開演 東京文化会館 大ホール
○21(金)19:00 開演 福岡ももちパレス
○23(日)17:30 開演 愛知県芸術劇場 大ホール
○4/30(日)17:00 開演 札幌市教育文化会館 大ホール
www.hiromiuehara.com
矢野顕子×上原ひろみ「ARABAKI ROCK FEST.17」
4/29(土・祝)、30(日)会場:みちのく公園北地区 エコキャンプみちのく ※出演日は後日発表します。
arabaki.com/