〈少女と大人〉や〈日常〉を意識的に描き、直近ではコラボ作も経験した吉澤嘉代子。この3作目は、これまでの知見を活かしつつ、無邪気に伝家の宝刀を抜いた印象だ。得意とする〈妄想〉。そのギアをもう一段階上げ、艶っぽい歌唱でやりたいことをやりまくる。だから、主人公も場所もポンポン変わる。けれどその割に、特に序盤の歌詞は説明しすぎていないので、聴き手もイメージを膨らませることができる。〈海〉という言葉が目立つのは、まず深いところまで潜ってほしいという意図かも、みたいに。そして、アレンジも自由奔放! sebuhirokoのピアノが超ダイナミックなハマ・オカモトのサウンド・プロデュース曲“ユートピア”をはじめ、荒ぶるホーンと狂気の世界観に映画「アンダーグラウンド」を連想する“地獄タクシー”、太田裕美“さらばシベリア鉄道”の2017年版と推せる“屋根裏”など、レモン・ツイッグスに負けず劣らずの予測不能なウキウキ感がある。私立恵比寿中学との“ねえ中学生”は、とりわけそんな華やかさ!