現代音楽とアイドル・ポップを掛け合わせたサクライケンタの記名性の強いプロデューシングにより、女の子たちの限りなくブルーな世界を鮮烈に表現してきたブクガ。昨秋のメジャー・デビューを受けて届けられたニュー・アルバムでも、複雑な変拍子をあくまでポップに聴かせるアレンジの妙技が冴え渡っており、雨上がりの朝のような匂いが立ち昇る“sin morning”では5拍子、メンバー4人の眩いユニゾンと爽やかなギターが逆説的に夏の終わりの寂しさを映す“end of Summer dream”では7拍子と変幻自在だ。その重層的なポリリズムを推進剤としてまっすぐ飛び込んでくる歌声と、青春の残酷な瞬間を書き取ったような歌詞も心地良く胸を抉る。インストの小品“ending”で始まって〈老人と猫〉を題材にしたコショージメグミ作のポエトリー・リーディング“opening”で終わる構成など、深読みしたくなる部分は多いが、それはさておいても作品全体が醸す蒼く物憂いイメージにドップリと浸りたくなる傑作。