進化したCUBERSが深化する〈聴けるボーイズユニット〉の真価とは

 デビュー時の〈弟にしたいボーイズユニット〉から〈聴けるボーイズユニット〉にキャッチフレーズを一新して早くも半年、まもなく結成から2年を迎えるCUBERS。まさにその転換点となった昨年9月のファースト・アルバム『PLAY LIST』リリースに際し、本誌ではメインストリームで層を厚くしはじめた〈男性アイドル・グループ〉の状況も併せて特集したが、それ以降も多種多様なボーイズ・ユニットが多士済々な個性を掲げながら活躍の場を広げているのはご存知の通り。そんな時節にあって、いち早く楽曲/作品そのもののパワーを看板に大書してきたのがCUBERSだった。

 往年のSMAPを例に挙げるまでもなく、いわゆるアイドル性をキープしながら音楽的なおもしろさを追求する行為は(本来であれば)決して食い合わせの悪くないものだと思うが、そうは思わない目線が顕在化しているのもまた事実。だからこそ、真っ当に音楽の良さを掲げる彼らの姿が殊更にフレッシュに感じられたのかもしれない。

CUBERS シアン Bermuda(2017)

 とはいえ、そもそもコンセプト変更やブランディング転換だけならさほど難しくはないわけで、CUBERSが支持を集めたのは『PLAY LIST』以前の時点からその楽曲に〈聴ける〉という実が自然に伴っていたからこそ。今年に入ってからはTAKAが2.5次元ミュージカル「スタミュ」に抜擢されたのをはじめ、メンバー個々のキャラやルックス、特技を活かした活動も着実に広がっているが、そんな好況下で登場したファーストEP『シアン』は、グループの成長を反映しつつ、ポップな冒険心と遊び心の注ぎ込まれた力作となった。

 オープニングを飾る華やかな“Circus”は、逸る気持ちを音色に投影したような威勢の良さが光る一曲。タイトで小気味良いバンド・サウンドは、明白に星野源“恋”を連想させるというか、アルバムで内外のディスコ/ファンク・リヴァイヴァルに呼応した勢いのまま今度は日本のポップ~ロック的な親しみやすいフォーミュラに挑んだ、これ以上ないジャストな仕上がりだろう。ステージに賭ける夢と舞台裏の奮闘を描いたような歌詞は、前作収録の“26.5”からも繋がる、5人の等身大のステイトメントとも受け取れるもの。アルバムでも馴染んだ高橋諒のアレンジが、ここでも瑞々しいスピード感を演出している。続く“NANDE”も同じく高橋が編曲を担当したもので、そちらはハシグチカナデリヤが詞曲を担当。勇ましいメロに導かれた強めの歌唱に、ロックなアプローチが新鮮だ。

 さらに3曲目の“サイケ”は、夜の街で淡々と独りごつようなラップも含め、うつむき気味の表情を見せたミディアム。下降するスライ風のベースも粘っこいファンクネスを湛えたこの曲はslimewaterの作……その胡散臭い名前と音の黒さにピンときた人は、『PLAY LIST』から連なるハイファイな味わいを思い出すかも。

 で、そのように明白に新味を見せたのが前半3曲だとしたら、後半の3曲は『PLAY LIST』の延長線上から曲調の振り幅を広げたものと言えそう。フォーキーな温度感のミディアム“Today”、真骨頂ともいうべきユニゾンの奔流が流麗なストリングスを纏って押し寄せるアップ・チューン“Tic Tac”、そして末吉9太郎の好きなハロプロ風味とSMAP感がミックスされたような賑やかさが楽しい“神様は忙しい”……と、年末のフリー・ダウンロード曲“ホワイトスノー”も手掛けていた大西洋平も絡む楽曲は、いずれも斬新と安心の入り交じる頼もしい仕上がり。裏返せば、それはすでに彼らが安心の〈CUBERS節〉を確立していることの証明とも言えるだろう。

 なお、勘のいい人なら、今作にはいわゆるラヴソング的なナンバーが入っていないことに気付くかもしれない。〈恋愛〉は古今東西のポップスにおいて欠かせないテーマではあるが、この『シアン』にあるのは、若者の生活感と人生観の間にある、青臭い夢や希望、あるいはブルーな苦悩の数々。そう書けば、彼らの歌とリスナーそれぞれの日常との距離の近さにも改めて気付けるのではないだろうか。

 いずれにせよ、充実の6曲でグループの持つ色を見事に表現した『シアン』。青と赤をイメージ・カラーとするCUBERSだけに、もう1色が今後どのように表現されていくのかも気になるが、まずは今回の果敢な挑戦を受け止めたうえで、さらなる奮闘に期待したいところだ。“Circus”で歌っているように、5人はこの先もっと輝きを増していくに違いないのだから。