インタビュー

シューゲイザーに人生狂わされたふたり、菅野結以×小林祐介(THE NOVEMBERS)が語る〈愛なき轟音〉と価値観の揺らぎ

黒田隆憲のシューゲイザー講座:特別編

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「トレスポ」続編と重なるライドの更新、スロウダイヴの変わらぬ美しさ

――さて、スロウダイヴの新作『Slowdive』が先日リリースされました。さらに6月16日(金)にはライドの新作『Weather Diaries』も控えていますが、実際に聴いてみてのお2人の感想は?

菅野「私にとってライドは〈青春のバンド〉という感じ。透明さと頼りなさと、眩さみたいなものがあって、〈蒼いセンチメンタリズムとメランコリア〉みたいな。でも、〈フジロック〉で初めてライヴを見たときはロック・バンドだ!って思いましたし、今回の新作も〈バンドという純粋なるロマンへの回帰〉みたいなものをすごく感じましたね。エネルギッシュだし、サウンドもすごくチャレンジングなことをしていて」

RIDE Weather Diaries Wichita/HOSTESS(2017)

――アンビエントっぽい“Integration Tape”など、今までにないアレンジにも果敢に挑戦していますしね。(内容の充実ぶりは)きっと、スティーヴ・ケラルト以外のメンバーがずっと現役で活動していたこと、特にアンディ・ベルはオアシス、ビーディ・アイと一流のバンドを渡り歩いてきましたし、そのことも大きかったのでしょうね。小林さんはどうでした?

小林「すごく良かったです。“Charm Assault”のアルペジオの積み方とか、ちょっとダイヴっぽいなと思って。自分がダイヴの中に見出していた〈ライドっぽさ〉を、この曲で逆証明してもらったというか。しかも、さっきも話に出たインタヴューを読むと、アンディはダイヴが好きみたいなんですよね。なんか、そういうところもいいなと思います。アンディはダイヴの作品を聴いて、〈ああ、自分たちのサウンドにも、こんな感じあったよな〉と思ったりしたのかなと」

ダイヴの2012年作『Oshin』収録曲“Doused”
 

――そうやって、自分たちよりも遥かに若いバンドから、素直に影響を受けてしまう感じもいいですよね。

菅野「そうそう。瑞々しい感性を保ったまま作り続けているんだなって。あと、この間『T2 トレインスポッティング』を観たんですけど、ライドの新作にはあの映画を感じました(笑)。『T2』、メチャメチャよかったんですよ! ダニー・ボイルってアップデートし続ける監督なんだなと思ったんですけど、ライドもそんな感じというか。90年代にすごく人気を集めて、そこから20年も経ってから、再結成して新譜を出すって結構ハードルが高いじゃないですか。みんな思い出補正が働いてるし、〈90年代のライド、最高!〉と今でも思われているなかで新作を作るわけですから。でも、ちゃんと昔のライドを好きだった人のツボを押さえながら、完全にアップデートして今の時代の、若い人が聴いても〈カッコイイ!〉と思える作品になっている」

小林「あと、今回のアルバムって、いろんな時期のライドが感じられる、ある種ベスト盤っぽい感じがするんですよね。それってなんでだろう?と考えてみたんですけど、時間が経ったからこそ自分たちの過去の作品を俯瞰的に眺められるようになって、〈よし、この曲はファーストの頃のライドの感じで演奏してみよう〉とか、〈この曲はセカンドっぽいアレンジが合うから、あの感じを取り入れてみよう〉とか、そんなふうに自分たちを演じているからじゃないかなと思うんですよね」

――なるほど、面白い視点ですね。

小林「さっき話したアルバム表題曲のような、いかにもシューゲイザーみたいな曲って、(90年代の)後期ライドだったらやらなかったと思うんです。でも、今の彼らって〈その時にやりたい音楽をやりたいようにやるだけだ〉っていうような考え方じゃなくて。ちゃんとファンのことを考えながら、ファンが聴きたいと思っているライド像もちゃんと提示しているというか」

――その辺はサービス精神が旺盛ですよね。シューゲイザーとかブリットポップとか、そういう文脈から解き放たれて、〈僕たちの聴きたいライド〉に徹してくれているところも、一方ではある。スロウダイヴの新作はどうでした?

SLOWDIVE Slowdive Dead Oceans/HOSTESS(2017)

小林「スロウダイヴは、スロウダイヴでしたね(笑)」

菅野「もう、1曲目の“Slomo”からスロウダイヴだった!」

小林「ライドのような気負いがまったく感じられなくて。〈久しぶりに集まって音を出したら、やっぱりスロウダイヴだった〉みたいな(笑)」

――自然体でしたよね。その一方で、やはり新しい音楽に対する好奇心もちゃんとあって。ビーチ・ハウスっぽい“Suger For The Pill”や、XXっぽい“No Longer Making Time”にはハッとさせられました。本人たちに訊いたら、やっぱり2バンドとも大好きみたいですよ。彼らのライヴは観たことありますか?

小林「前回の〈フジロック〉(2014年)で観ました。昼間の〈RED MARQUEE〉に出演していたんですけど、その時の僕はシューゲイザーに〈大音量〉を求めてしまったので、〈思いのほか音デカくないな〉というのが第一印象だったんです。でも聴き進んでいくうちに、〈ああやっぱり、スロウダイヴって曲がいいよな〉とか、〈メロディーが美しいな〉とか、そういうテクスチャーをじっくり楽しむことができましたね。そういう意味で、すごく良いライヴでした」

菅野「その〈RED MARQUEE〉が恐ろしく暑かったんですよね。絶対に前のほうで観たかったから、3列目くらいのところでギュウギュウになりながらだったので、フロアの暑さと、涼しげな楽曲とで頭クラクラになりながら観てました。かなりトリップ感を味わえたと思います(笑)。でもやっぱり、私も小林くんが言ったように、楽曲やメロディー・ラインの美しさを改めて感じましたね」

――スロウダイヴとTHE NOVEMBERSは、今年の〈フジロック〉で同じ7月30日(日)に出演するんですよね。僕はまだスロウダイヴを生で観たことがないので、今年こそは観たいです。さて、今回は〈シューゲイザー講座〉の特別編としてお2人に集まってもらったわけですけど、最後に改めてシューゲイザーの魅力をお聞かせいただけますか?

菅野「最初にも言ったように、人から見たら曖昧で混沌としていて、歪だったりするところにすごく魅力を感じます。正しいだけじゃ色気がないし、完璧なんてつまんないじゃないですか。なので、私と同じように、世の中に対して〈なんか違うな〉と疑問を感じていたり、〈普通〉とされているものに馴染めなかったり、固定観念をぶち壊して欲しいと思っていたりする人は、ぜひ一度聴いてみてほしいです。幼い頃にシューゲイザーと出会えて本当に良かったと思うし、そこから派生して他の音楽や映画などカルチャーへの興味が深まったので」

小林「僕もさっき話したことですけど、〈ロック・ミュージックにはメッセージが必要だ〉という風潮ってあるじゃないですか。それって、音にも〈言語〉を求めているようなものであって、つまり裏を返せば〈言語化できないもの〉〈わからないもの〉への無関心、あるいは怖れや恐怖なんじゃないかと思うんですよね。でも、音楽ってそもそも、言語化できない抽象的な感情を音にしているわけで、そこに向き合ったり、美しさを見出したりする方が、豊かな人生が送れるんじゃないかなって僕は思います」

――音にありきたりなメッセージを託したり、特定のイデオロギーを込めたりするのではなく、音を音として、そのまま表出するシューゲイザーは、実はとても純粋な音楽だと僕も思います。それにしても、マイブラに人生を狂わされた者としては(笑)、同じように人生を狂わされた2人が、それによって素晴らしい活動を送っていることに、とても勇気付けられるし頼もしく感じています。今日はありがとうございました!

 


■RIDE
HOSTESS CLUB ALL-NIGHTER(SUMMER SONIC 2017)
2017年8月20日(土) 千葉・幕張メッセ
共演:モグワイ/ホラーズ/ビーク>/シガレッツ・アフター・セックス/ブランク・マス/マシュー・ハーバート(DJ)
★詳細はこちら

■SLOWDIVE
FUJI ROCK FESTIVAL '17
2017年7月28日(金)~30日(日) 新潟・湯沢町苗場スキー場
※スロウダイヴは7月30日(日)に出演
★詳細はこちら

■菅野結以
・TOKYO FM〈RADIO DRAGON-NEXT-〉 毎週木曜26:00~
・Crayme, 2017Collection【DECADENCE】 発売中!
・Official Instagram

■THE NOVEMBERS
・初のベスト・アルバム『Before Today』を9月13日(水)にリリース決定!

“熱源” Release tour 『高機動熱源体』
2017年6月17日(土)愛媛・松山Double-u Studio
2017年6月18日(日) 高松TOONICE
共演:cinema staff 

SWIPE0624
2017年6月24日(土) 大阪cafe Room
※小林祐介ソロでの出演
共演:波多野裕文

FUJI ROCK FESTIVAL '17
2017年7月28日(金)~30日(日) 新潟・湯沢町苗場スキー場
※THE NOVEMBERSは7月30日(日)に出演

La.mama 35th anniversary 「PLAY VOL.46」
2017年8月4日(金) 東京・渋谷La.mama
共演:GOATBED

ROSES
2017年8月25日(金) 東京・品川グローリアチャペル
※バンド+管楽器・鍵盤の特別編成を予定

sébuhiroko presents「Her Majesty's Secret Night : Part Ⅱ」
2017年8月30日(水) 東京・新代田FEVER
共演:sébuhiroko/メタ地獄 (with村田シゲ、BOBO、常田大希)

★詳細はこちら

関連アーティスト
TOWER DOORS