KNOCK ON THE DOOR Chapter 2
[特集]理想の〈アメリカ〉を求める旅は続く
米国はどこへ向かう? 未来に希望を見い出せないなら、心の故郷に、古き良きあの頃に帰ればいい。アメリカーナは絶対にあなたを裏切らないのだから……
★Pt.1 COURTNEY BARNETT & KURT VILE『Lotta Sea Lice』
★Pt.2 JULIEN BAKER『Turn Out The Lights』
★Pt.4 ディスクガイド

NICOLE ATKINS
本誌でもことあるごとにニコール・アトキンスの魅力を喧伝してきたつもりだが、いまだに日本での知名度は驚くほど低い。とはいえ、このたびのニュー・アルバム『Goodnight Rhonda Lee』は彼女の最高傑作と言って良いばかりか、インディー・アメリカーナとしても優れた内容なので、ぜひ多くの人に聴いてもらえればと懲りずに思っている。

2008年のデビュー時よりUSルーツ音楽をモダンに解釈してきたニコールが、ここではより明瞭な形でそれを提示。特にクリス・アイザック(!)と共作したオープニング・トラックは、ロイ・オービソン調の泣かせるメロディー、ストリングスやペダル・スティールが美しく舞い上がるバック演奏、そして主役のケレン味たっぷりでソウルフルな歌唱が三位一体化した名曲で、アルバムのカラーを決定付けている。ほかにも女性コーラスを交えたアッパーなリズム&ブルースや、ルイーズ・ゴフィンとの共作による60s風のポップ・チューン、軽快なホーンが煌めくメロウ・グルーヴ、ペギー・リーばりのジャジー・バラードなどを収録。スタイル自体は多彩な本作を強いて一言で表現するなら、〈現代版のカントリー・ソウル〉といった感じか。独特のハイブリッド感覚により、どんな曲も自分色にエグく染めてしまう天性のセンスが冴えに冴えた一枚。こういう我の強そうな女が一番好きだ。 *北爪啓之
関連盤を紹介。
DAN ZANES & FRIENDS

ルイジアナで1888年に生まれたハディ・レッドベター。〈レッドベリー〉の愛称でも知られるこの黒人シンガーが作った労働歌は、ニルヴァーナやエリック・クラプトンなど、数多くのミュージシャンに歌い継がれている。そんな彼の人生はトラブル続き。怒ると手がつけられなくなり、何度も刑務所とシャバを行き来した話は有名だ。その一方、子供向けの曲をいろいろ歌ったりもして……というところで本題へ。彼のそれ系の曲ばかりを集めたカヴァー・アルバム『Lead Berry, Baby!』がこのたび登場した。首謀者のダン・ゼインズはボストンに住むデル・フエゴスのフロントマンで、2006年のソロ作『Catch That Train』がグラミーの子供向けアルバム賞を獲得するなどキッズ・ソングの達人としての顔も持つ。
注目はダンのもとに集まったお友達の賑やかな顔ぶれだ。アヴィーチー“Wake Me Up”へ参加してEDMにカントリーの風を吹かせたアロー・ブラックや、現行アメリカーナ・ブームの中心に立つヴァレリー・ジューンらが、ブンチャカしたリズムに乗って軽やかにスウィング。全編に渡って和気藹々としたセッションが繰り広げられており、パブリック・エナミーのチャックDまでがほんわかムードの中でにこやかな表情を浮かべていて、愉快なことこのうえない。楽しいだけじゃなく、味わい深い演奏が詰まっている点も聴きどころだと追記しておこう。 *桑原シロー
『Lead Belly, Baby!』に参加したアーティストの作品。
時流も味方にニュー・ウェストが大躍進!
ナッシュヴィルに拠点を置くニュー・ウェストは、〈いまを生きる人々にリアルな音を届けよう!〉といったスローガンのもと、98年に設立されたアメリカーナの専門レーベル。本特集にもピッタリはまるこの軍団が、かつてないほどのリリース攻勢に出ています。
まずはジョン・ハイアットの愛娘、リリー・ハイアットの移籍作『Trinity Lane』から。ライトニン・ホプキンスへのオマージュで溢れた“Records”をはじめとするカントリー・ブルースの数々が、〈失われつつある大切なもの〉というテーマと共にガツンと心に響きます。お次はJDマクファーソンの『Undivided Heart & Soul』。リトル・リチャードなど古典的なロックンロールを志向してきた彼が、今回めざしたのはジョシュ・オムのような音作り。JD本来の持ち味とラウドに歪んだギターが合わった結果、期せずしてローリング・ストーンズ『Exile On Main St.』っぽい雰囲気に。続いての『TX Jelly』はレオン・ブリッジズらのバッグも務める5人組、テキサス・ジェントルマンのデビュー盤。名前に反して非紳士的な泥臭いスワンプ・ロックを披露し、マッスル・ショールズ録音による効果がそこここで表れています。
といった感じで、アラバマ・シェイクス好きにもオススメのハードな新作が続いていますが、ゆったり落ち着きたい方にはこれを。ジェフ・トゥイーディ(ウィルコ)がプロデュースしたケイシー&クレイトンの『Siren's Song』。静かに揺らぐ女声の主旋律に優しい男声のハモリが寄り添った極めてシンプルなフォークは、ジェフのソロ・アルバム『Together At Last』ともダイレクトに繋がるものですよ。 *山西絵美
文中に登場した作品を紹介。