KNOCK ON THE DOOR Chapter 2
[特集]理想の〈アメリカ〉を求める旅は続く
米国はどこへ向かう? 未来に希望を見い出せないなら、心の故郷に、古き良きあの頃に帰ればいい。アメリカーナは絶対にあなたを裏切らないのだから……
★Pt.1 COURTNEY BARNETT & KURT VILE『Lotta Sea Lice』
★Pt.2 JULIEN BAKER『Turn Out The Lights』
★Pt.3 NICOLE ATKING/DAN ZANES & FRIENDS/時流も味方にニュー・ウェストが大躍進!
ARIEL PINK Dedicated To Bobby Jameson Mexican Summer/MAGNIPH/HOSTESS(2017)
60s後半にLAでカルト的な人気を誇った自作自演歌手、ボビー・ジェイムソンへ捧げた一枚。〈サマー・オブ・ラヴ〉時代のカラフルで自由奔放なサイケ・フォークを寝室から夢想し、それを現代風のローファイな音でもって形にしたような内容で、一筋縄ではいかないセンスがアリエル・ピンクらしい。 *赤瀧
メジャー進出というプレッシャーを感じさせない、良い意味で従来通りのサイケなフォーク・ロック盤。少しくたびれた感じが聴き手をほっとさせ、哀愁のアメリカーナとでも言うべきか、総じて80年代のボブ・ディランっぽい内向きの雰囲気だ。元メンバーのカート・ヴァイルも嫉妬しているはず。 *赤瀧
9年ぶりのオリジナル・アルバムは〈アメリカーナ職人〉とでも言うべきミッチェル・フルームに加え、バーバンク・サウンドの仕掛人である旧友のレニー・ワロンカーも裏方として名を連ねているのが嬉しい。ノスタルジックな音色とアイロニーに富んだ歌物語で米国の陰影を紡いだ貫禄の一枚。 *北爪
ストレンジなアメリカーナ集団の巣窟である、デンジャー・マウスの主宰レーベルから登場した3人組のデビュー作。60sのバブルガム・ポップやドリーミーなサイケへの偏愛ぶりを露にしたナンバーから、古のフォーク・グループばりにハモリを聴かせるアーシーな曲までが雑然と並び、妙に和んでしまう。 *桑原
JマスキスらのMVを手掛けるアニメーターで、歌い手としても本国カナダでは音楽賞の常連。かつてのベックを思わせる切り貼り感とローファイさという持ち味は、この6作目でも遺憾なく発揮されています。娘2人と共演したトラッド調のフォークですら、最後の最後にヘンテコな効果音が割り込んできてビックリ。 *山西
もともとはUKポスト・パンクの影響下にあったブルックリン在住のバンドながら、リーダー格のブライス・デスナーがスフィアン・スティーヴンスとユニットを組むなど、近年ではアメリカーナ的な文脈で語れるトピックも多い。本作におけるピアノ主体の曲も、まるで覚醒したトム・ウェイツのよう。 *北爪
アーロン・デスナーのプロデュースによる前作が高く評価された男女3人組。ブルックリンからナッシュヴィルへ移住しての本3作目はデイヴ・コブとスタジオ入り。今様の緻密なオルタナ・カントリーという印象が薄らぎ、イーグルス風のハーモニーが冴え渡っていて、一生聴けそうな一枚に。 *赤瀧
シャロン・ヴァン・エッテンやウィルコのネルス・クラインらをゲストに迎えたヴォーカル・アルバム。素朴で滋味深い歌声とカントリー風の曲調は、70年代のシンガー・ソングライター的とすら言えるが、不意に湧き上がるエクスペリメンタルなギター・ノイズがこの男の面目躍如たるところ。 *北爪
ライアン・アダムスに発掘され、名門デッド・オーシャンズと契約したLAの若き才媛。この初作にはエッジーなポップ・チューンもいくつか存在するものの、やはり繊細で可憐な歌声がよりマッチしたギターの弾き語り曲にどうしても心を奪われてしまう。コナー・オバーストとのデュエットも味わい深し。 *桑原
ウィークエンドやスティーヴィー・ニックスら豪華ゲストを招いた5作目。とはいえ、決してオープンな感じではない。デヴィッド・リンチ的な倦怠感と大昔のハリウッド映画めいたモノクロの感傷が入り交じるドラマティックなヴォーカル&歌詞から、自国への愛憎が見え隠れ。ダーク・アメリカーナの逸品。 *北爪