バンドが再発見したライヴハウスの熱狂を、パンク・ソウルとでも言うべきサウンドに収めた2016年リリースのアルバム『Colors & Scale』から1年以上。遂にKONCOSが新音源“The Starry Night”を発表する。とはいっても、レコード・ショップやバンドの物販で購入……という通常の販売方法ではなく、12月に東京・下北沢SHELTERと京都・二条nanoで開催するワンマン・ライヴ〈STARRY NIGHT PARTY〉のチケットを購入すると、同曲の7インチ・アナログ盤を会場で手に入れることができる。元Riddim Saunterの古川太一&佐藤寛によるデュオとして結成されて以降、ツアーや編成の面でたえまなく〈挑戦〉し続けてきたこのバンドならではの思い切った施策だが、そうした発表方法を選んだ動機には、2017年のインディー・シーンにおけるライヴのあり方やライヴハウスの収益システムについての問題提起があったという。古川に、『Colors & Scale』以降のバンドの動きを振り返ってもらいながら、いまの彼らを突き動かしている〈変化への意欲〉に迫った。
いま起きていることをちゃんと歌いたい
――今回はワンマン・ライヴの前売りに7インチを付けるというアイデアがどうやって生まれたのかを掘り下げていきたいんですが、そもそも同アナログ盤に収録される“The Starry Night”という楽曲自体は、今年の序盤からライヴで披露されていましたよね?
「そうですね。2017年の1月20日にSHELTERの企画で片想いとツーマンをやったんですけど、そのイヴェントへの出演が決まったのが(去年の)11月だったんですよ。ちょうど『Colors & Scale』のレコ発ツアーが終わった直後だったし、自分たち的にも次に進みたいときで、片想いとのツーマンでは〈絶対に新曲を演奏したいね〉となった。(それまでライヴの最後に演奏していた)“月待つ島まで”に代わる1曲、というのが最初のテーマでしたね」
――そして出来上がった“The Starry Night”は、ニューオーリンズ・ファンクを思わすリズムと華やかなコーラスが耳を引くナンバーで、『Colors & Scale』のグル―ヴィーな方向性を引き継ぎつつ、よりブラック・ミュージック的な側面を強めた楽曲だと思いました。
「僕らのクセ――ツーファイヴワン進行を転調でつないで、テンションの入ったコードを使って……みたいな曲の感じから一回離れようとは思っていました。今回はゴスペルの昂揚感を出したかったんですよ。それはチャンス(・ザ・ラッパー)とかにもあるじゃないですか? 僕はやっぱり(自分のルーツである)ヒップホップが好きで、ゴスペルと現在のブラック・ミュージックが混ざっている、(チャンス周辺の)シカゴの感じも大好きだし、彼らのムードを採り入れたかった。ゴスペルというテーマをふまえて、コーラスとホーン隊にも参加してもらうというのも当初から決まっていましたね。
あと、リズムについては、自分もLEARNERSでこの曲と同じようなパターンを叩いているし、ドラムで参加したHARVARDの“SHE IS ALL”とかもそう。これまで僕自身もこのビートで曲を作ったことが何度かありますね。リズムというのは誰が使ってもいいものだし、今回の曲もレコードを聴いてくれた瞬間に、DJ的な発想で〈あの曲と同系列だな〉となると思う。そういうのがすごく良いと思うし、昔から続く良いものを自分たちなりに集めて、そこからオリジナルを作れたらいいなって。まあ、サンプリングじゃないですけど、自分たちのルーツがわかるものであり、けれどKONCOSの音楽を作ろうと、寛と話していました。僕らがいま対バンしているようなインディーのバンドに近付いても意味がないし、それとはなるべく遠ざかるじゃないけど、むしろ自分の好きなところに行けば、対バンしてくれるみんなもおもしろがってくれて、これからも一緒にライヴしたりできるんじゃないかなって」
――これまでのコード進行からの解放という点では、ロジャー・ニコルスやトッド・ラングレンのメロディー研究からはじまったというKONCOSの歴史をふまえても、新章を告げる楽曲になったんですね。
「そうなんですよ。ファンクに行かないと……もうちょっと黒くならないと表現が強くならないというのを感じていたんです。だから、これまでやってきたこととは離れようと意識していて、いま作っている楽曲にはメロディーがないものもあるし、ラップ的な表現も増えてきていて」
――太一さんが最近Twitterにあげているレコーディング風景の動画で、寛さんがラップしているものもありましたね。
KONCOS Recording
— TA-1 (@TaichiFurukawa) 2017年10月25日
Wed 25 Oct 2017
at STUDIO MECH Gohongi Tokyo#koncos pic.twitter.com/NyzGh6EKPF
「もうちょっと言葉に強さを持たせたい、言いたいことをちゃんと言おうとなっていますね。〈いま起きていることをちゃんと歌いたい〉というか、それには日本語ラップからの影響も多々あるんですけど」
――日本語ラップといえば、今回はミックスをIllicit Tsuboiさんが担当されていますね。彼から上がってきた音源を聴いたときの感想は?
「ずっと前から、ツボイさんにはミックスをお願いしたいとスタッフとも話していたんです。実際に上がってきた音を聴いたときは、いままで自分たちにない音の置き方がとても新鮮で、パッと目の前の視界が広がるような印象を受けましたね。もちろん即OKで、そのままNYのスタジオへとマスタリングに出しました」
これからも一緒にやっていくような仲間たちが見えてきている
――リリースから1年以上を経て『Colors & Scale』という作品に対しての、太一さんの位置付けも変化してきたんじゃないですか?
「『Colors & Scale』が完成したときは、〈ようやく出来たな〉と思ったんですけど、ツアーで全国のライヴハウスを回ってみると、やっぱりなんか物足りなくなってきましたね。『Colors & Scale』のツアーでは、その地方で活動するバンドに対バンしてもらったんですけど、とにかく出てもらったバンドの熱量がすごくて、このアルバムじゃ負けちゃうなと思うことが多々あったんですよね。こっちから出てくる熱をもっともっと表現しないと、(対バンに)押し潰されるみたいな(笑)」
――アルバム発表時のインタヴューでは〈一生これを持って生きていくくらいのモノが作れた〉と話してくれていたけど、それだけ自信があった作品への評価を変えるほど刺激的なツアーだったんですね。
「こっちから投げっぱなしで当日を迎えるような段取りじゃなくて、地方のバンドやライヴハウスと一緒に作っていけたんですよ。自分的には、あと何人は来てほしかったとか動員的に悔しい面もあったけど、そこにいたバンドマンや来てくれたお客さんとの繋がりが、いま気付いたらすごく大きなものになっているんです。あのツアーで出来た繋がりをベースに今年も活動しているし、そこにいた人は次に僕らが行ったときも変わらずいてくれたし、〈出会ったときよりもおもしろいことをやろう〉と話せるようになった。もっと近くなったというか。マインドの共有が各地のバンド――特に岡山や高松、北海道のバンドたちとはできていて、〈自分たちがどこにいるべきか〉〈どういう活動をすべきか〉が見えました」
――マインドの共有というのをもっと具体的にいうと、それら地方のバンドのどういった点にシンパシーを感じているんですか?
「自分たちで場所を作っている、というところですかね。東京に憧れてるわけでもないし、かと言って無理に地元をレペゼンしている感じでもなく、独自の音楽性や文化が育っていて、そういうところに魅かれました。どこかで聴いた/見たことがあるようなサウンドや方法ではなく、地元のノリが勝手に大きくなって、ほかにない空気を作っているんですよね」
――特別な地方として挙げてくれた北海道のバンド、toiletとは今年の10月にも札幌と帯広でイヴェント〈SUPER RELAX!!!!!!!!!!!!!!〉を組んでいましたね。
「彼らと出会ったのは2015年で、そのときに(toiletの音源をリリースしてきた)I HATE SMOKE RECORDSを主宰する大澤(啓己)くんたちも含めて仲良くなったんですけど、一緒にちゃんと作ったのは『Colors & Scale』のツアーが最初で、toiletのキムくんが帯広と札幌の対バンをすべて組んでくれたんです。そしたら、まあ変なバンドが出てくるわけ※ですよ(笑)。とにかくおもしろくて、もうその日に1年後のハコをおさえました。それがこの前のイヴェントだったんですけど、その間に僕らも東京の下北沢SHELTERで主催したイヴェント〈AFTER SCHOOL〉に彼らを呼んだり。僕らとは地元(帯広)が一緒ですけど、そんなのは関係なくマインドと音楽性で共感できる仲間だなと思います。それは岡山や高松のバンドもそうだし、あとは山形・酒田のFRIDAYZのみんなとかも。やっぱり自分たちの街で自分たちで這って活動している奴らと話していると、熱くなりますよ。そういう横の繋がりが『Colors & Scale』のツアーからバッとできたんですよね」
※帯広の対バンは、カジヒデキ、toilet、A Quiet Evening、INQ.、REAL SHOCKS MATTER。札幌は、カジヒデキ、toilet、the hatch、k!so & her friends、Two layers of paint
――じゃあ、『Colors & Scale』を経て、今年はさらに輪が拡がっていった感じ?
「そうですね。やっぱり一緒にできるバンドが増えてきたのは嬉しいですね。これまで僕らには、そういったバンドがいなかったから。いまは、これからも一緒にやっていくような仲間たちが見えてきているし、そういうのはシーンというか文化と言っていいと思う。いま活動しているバンドのカルチャーがうっすらでも見えてくると、お客さんたちにとってもライヴに行きやすくなるし、そういうシーンが全国に拡がっていけば、〈あのバンドとやるんだったら行ってみよう〉とか参考にもなるし、それは良いですよね」
――以前、KONCOSがライヴハウス以外の場所――カフェや飲食店での活動が中心になっていったあまり、気が付いたらライヴハウスに居場所がなくなっていた、と言われていましたよね。それをふまえると、感動せざるをえない話です。
「こっちが知りたくていろいろな場所に行っていたら、各地のみんなもそういうふうに接してくれるし、対等な目線というか……別に東京から来たバンドに対してというよりは、同じバンドマンという目線で繋がれたんです。だからこそ、そのまま次に行ける感じがあった」
――住んでいる場所は違っても価値観を共有できるバンドとの繋がりが、自分たちにとっても後押しになった。
「自分たちのやり方はこれなんだな、と思えましたね。でも、繋がれた街はたまたま運が良かっただけで、絶対にもっともっといると思うんです。この街にはいなかったじゃなくて、僕らが出会えてないだけなんですよ。自分たちの努力が足りないから、見つけられてないだけ(笑)。だから、このツアーを経て、出会えてない街はもっとちゃんと見るようにしています。大澤くんがディストロ※していたり、ヒロくん※※が東京に呼んできたりしたバンドから、知らない地方のシーンや地域に根付いたライヴハウスを発見することは多いけど、そういう場所にはまず自分で行かなきゃダメだから、ここには行かなきゃいけないなというメモがたまっていく一方(笑)」
※ミュージシャンら有志が、知人のバンドの音源をツアー先やライヴハウスで自発的に販売していくこと。インディー/パンク・カルチャーで盛んに行われている
※※八王子で毎年開催している〈MATSURI〉や全国を回るライヴ・イヴェント〈BREAK A SCHOOL〉を主催しているパンク・シーンの重要人物
――いま話してくれたような興奮は、太一さんだけじゃなくメンバーの寛さんや清志さんも感じられていたんですか?
「特に寛は僕以上に刺激を受けていたんじゃないかな。メインのヴォーカルをとっている立場だし、ツアーの対バンを観て、〈ヤバイ〉と感じたみたいで。彼のライヴでの振る舞いも以前とは違うし、2人で話していても〈僕らは変わらないとダメだね〉って話になる。今年の3~4月に主催したイヴェント〈AFTER SCHOOL〉で、“The Starry Night”の歌詞と僕らの想いを載せたZINEを配ったんですよ。そのZINEに、ツアーを経て“The Starry Night”が出来たことについて、寛が文章を書いているんですよ」
明日のAFTER SCHOOL来場者全員にプレゼントするKONCOSの新曲「The Starry Night」のZineを、ベランダ作っています。 pic.twitter.com/xAU1t2vzbw
— TA-1 (@TaichiFurukawa) 2017年4月22日
――読みました。寛さんが『Colors & Scale』ツアーで感じた衝撃と興奮を〈渦〉という喩えで綴っていて、すごく良いですよね。それにしても“The Starry Night”は、曲が出来てライヴのレパートリーになってからも、まずZINEが春に作られ、ようやく今回7インチとして音源化される。長いスパンをかけて育てていった曲になりました。
「めちゃくちゃ想いの入っている1曲を作りたかったんです。アルバムだと気持ちが分散しちゃう気がしたんですけど、1曲を〈これ!〉みたいなスタンスでやり続けたら、すごく大事なものになっていくんじゃないかなと思い、1年かけてみようと。1曲を1年かけて伝えるというのは決めていたので、まず曲についてのZINEを7インチのフォーマットで作って、そのあとに音源として7インチのアナログ盤でリリースしたら、合わさって一つの作品になるじゃないですか? そういうふうに繋がっていくのがいいなと思っていました」
音楽のどこにお金を落とすのかを、みんなが考えていかなきゃいけない時代
――ただ、最終的に7インチで出すことは決めつつ、それをどういう形でリリースするかは決めあぐねていた?
「そうです。出しどころも考えつつ、今年中にワンマン・ライヴをやりたいなとも思っていたんですけど、どういうふうにワンマンをやればいいかを決めていくうえで、いまは音楽のどこにお金を落とすのかをみんなが考えていかなきゃいけない時代だなという意識が出てきたんです。たとえば、僕がいま週1で働いている下北沢のライヴハウス、THREEの店長の(スガナミ)ユウさんが、自分のバンド、GORO GOLOのワンマンを今年のはじめにTHREEでやったんですけど、バンドの知り合いだからゲスト料金でとかは一切なしで、どんなお客さんであれ一律1,500円で入場するようにしたんです。それを見て、このやり方こそが当たり前だなと思ったし、そもそも僕らがやるのは小箱であって武道館とかじゃない。じゃあ、小箱でライヴをやり続けていくというスタイルにしても、もう次に行かないとダメだなと思ったんですよ。それは結構デカかったですね。
〈別に1,500円でワンマンできるんだよなー〉とわかったし、(前にやっていたRiddim Saunterを含めて)3,000円や4,000円くらいのチケット代でワンマン・ライヴをやってきたけど、そのチケット代の行先って結局どうなってたんだろうな?と考えるようになった。だったら、チケット代を1,000円にして、その入場料金はすべてハコに入るようにして、(お客さん的には)浮いた2,000円でバンドの物販にあるTシャツを買ってもらえるほうが、僕らにも直接お金が入るし、そのお金の動きに不明な点はないじゃないですか? そういうことをバンドでも話すようになっていったんです。もっとライヴに来やすくなったほうがいいし、お金の行先も見えるようになればいい。お客さんからお金をとるうえで、僕らはどうすべきなんだろう?と話し合ったんですよね」
――なるほど。そうした発想から、今回の7インチ付きの前売りというアイデアにはどう繋がっていったのでしょう?
「12月1日(金)にSHELTERでワンマンをやることが決まって、最初はチケット代を1,000円くらいにして、ゲストも一切なしでというのを提案してたんですけど、途中で物販を買ってもらいたいんだったら合わせて“The Starry Night”の7インチを付けたほうが、僕らのこの1曲への想いも見えやすくなるし、意味が出せるんじゃないかと思ったんです。今年の7月にTHREEで開催していたSEVENTEEN AGAiNのリリパのやり方もおもしろくて、新作のCDを持って来れば無料で入場できたんですけど、そういうふうにアーティストやライヴハウス側でいろんなやり方をまだまだ考えていけるんだな、と気付いたんですよ。僕達みたいな100~200人規模の企画をするバンドとしては、そのイヴェントをちゃんと意味があるように作っていったほうが、お客さん的にも心に残ると思うし。1,000人規模だと大変かもしれないですけど、僕たちは100人も集まらないかもしれないお客さんに理解してもらったうえで、お金をもらうという正直なやり方でいきたいんです。それをやり続けたうえで、残るものもあると思うし。
今年からTHREEで働くようになって、今までより深くバンドの活動について考えるようになった。
— TA-1 (@TaichiFurukawa) 2017年11月8日
箱側から、あのような今の時代の提案があるんだったら、バンド側からも、古いフォーマットに則ったやり方ではなく、自分たちなりの活動の提案が無くては、次につながらないと思った。
僕らなりの提案が、3月のSHELTER全員ゲスト無し、なるべく地方のバンドに還元だったり、7月のTHREEに全国のインディーバンドを集めて、Block Party入場無料だったり、次の12月、ワンマンのチケットにその日限定の7inchレコードを付ける、だったりする訳です。
— TA-1 (@TaichiFurukawa) 2017年11月8日
どうしてもライブに来てほしい、来てくれた人に何か残したいと思い、レコードプレスの賭けに出ました。
— TA-1 (@TaichiFurukawa) 2017年11月8日
無謀な計画をOKしてくれたAWDR/LR2、SSTVの皆様に感謝。ぜひ、ライブ会場でお会いしましょう!よろしくお願いします! pic.twitter.com/7XWWs92a5S
僕は自分でデザインもするし、自分が納得するものを出しているから、それに対してお金を落としてくれるというのは、お客さんと信頼関係を作れたということだと思うんですよ。ハコでお酒を飲むこととかも同じだけど、あのバンドが出したものだったらお金を払って買いますよということを循環させていくと、僕らみたいなバンド――お客さんが50人とか100人のインディーズのバンドでも、ちゃんと活動できるように、ちょっとはなっていくかなと思ったんです。こっちもタダで活動できるわけはないし、それだとバンドも止まっちゃうんだけど、だからこそ、ちっちゃなインディーズのカルチャーのなかでお金がちゃんと回っていく流れを作れたらいいなって。この時代、もう無料は止められないじゃないですか? Spotifyとかも絶対拡がるべきだと思うし、知らない音楽と次から次に出会えたほうが間違いなく良いし。でも、そういう意味ではTHREEのカルチャーもSpotifyとかと同じだと思うんですよ。THREEも入場無料のイヴェントをすることによって、それまでよりも多くのお客さんを巻き込みながら予想外の出会いをもたらしているし」
そこにいる10人の音楽好きのために、ちゃんとした情報を発信したい
――最近、THREEが来年の施策として発表した、年間フリーパス的な機能を持った3,000円の優待チケット〈THREEパス〉も、そういった時代の流れを受けての提案ですよね。
「いまライヴハウスが変わっていっている感じと、音楽の聴き方はリンクしているのかもしれないですね。YouTubeでしか聴かないとか、ダウンロードすらしないとか全然アリだと思う。そういうときにライヴハウスだけ頭デッカチになっても先へ進まないし、次の策を考えないと、やっていてつまらないですよ。何が正解とかはあるわけではないんですけど、そのバンドなりに自分たちのお客さんに自分たちをどう表現していけばいいのかを考えればいいし、僕らは自分たちのお客さんにレコードを手にしてもらえたらすごく嬉しいなということで、その方法をやってみる。それ以外の方はぜんぜんYouTubeで聴いてくれて構わないし、お客さんがレコードで聴いても聴いてくれなくても、どっちでもいいんです。ただ、そういう一個一個おもしろいことがあれば、ライヴもおもしろくなるんじゃない?という。あまり深い提案でもなくて、なんか良いじゃん?みたいな。それくらいで続いていくのが、重くなくていいかなと思っているんですよね」
――〈これがあるべきライヴの形だ!〉と声高に宣言するものではない、ということですよね。太一さんにとって、THREEで働きはじめたことも大きかったんじゃないですか?
「いやー、大きいです。毎週水曜日に働いているんですけど、週1であっても1年間行くと変わりますよね。週に1回、いなきゃいけないとなったら、まったく知らないバンドのイヴェントでも〈あー、今日はこういう感じなのか〉とか〈こういうお客さんがいて、こういうふうに作ってるんだ〉とか思うし、カウンターで皿洗いながら、〈自分たちのイヴェントだったら、こうしたらおもしろいかなー〉とかも考えられる。THREEで働きはじめなかったら、今回の前売り用にレコードを作るというアイデアも出てこなかったんじゃないかな」
――発想のヒントをもらった、と。
「やっぱり入場無料の〈Block Party〉とかに尖ったバンドがいっぱい出ていて、多くの人たちがおもしろがって集まっているのを観ると、ワクワクしますよ。あとは、あそこに夜立っていると〈あ、TA-1さん〉みたいに声を掛けてくれて、そこで何か話が進んだり。実際に会えるとなると、話が早いですからね」
――人が集まることで、物事も動いていくという良い循環が生まれているんですね。
「自分が地方に行ったときにも、〈太一さんTHREEにいるんですよね? 僕もTHREEでライヴしたいんですよー〉みたいに言われることもありますしね、そこで、じゃあ〈何か繋いでいこうよ〉と進んだのが、I HATE SMOKEの大澤くんとTHE FULL TEENZの伊藤(祐樹)くんと一緒に主催した今年7月の〈Ordinary Punches〉ツアーでした。あのツアーは、みんなで全国を回って最後はTHREEに集まる(2017年7月15日)ようにしたんですけど、THREEでは入場を無料にして、できるだけ多くの人に来てもらうようにしたんです。ライヴを観てもらって〈あのバンドが格好良かったー〉となれば、次に繋がるとも思ったし、実際にKONCOSがやっているディストロでも売れていくという流れもあった。そういうふうに、自分がいる場所を使って、新しいことをできるようになってきています」
――太一さんがやっているKONCOSディストロもバンドの活動において重要な要素になっていますよね。
「ディストロをできるのはありがたいですね。最初はそんなことやろうと思っていなかったんですけど、北海道に行ったときにtoiletのキムくんが新しい音源を200円で売ろうとしていて、その内容がすごく良かったんです。そこで、ちょうど僕らはいまツアー中で全国に持っていけるチャンスだから、僕らなりにツアーで出会ったバンドの音源を全国に持って行けば、交流の足がかりになるんじゃないかなと思ったのがきっかけでした。そうしたら、そのtoiletのCDが僕らのツアー中に50~60枚売れたんですよ。すごいなと思ったし、僕らはお客さんに恵まれているなともわかった。音楽を好きなお客さんが来てくれているんだなと、ちょっと勇気づけられましたね」
――ディストロの活動もそうだと思うんですけど、さっき“The Starry Night”の歌詞について言われていた〈いま起きていることを伝えたい〉とうのが、太一さんの指針になっているように思うんです。9月からWarp Magazineでスタートした、日本各地のバンドと音楽カルチャーを紹介していく太一さんの連載〈Trippin’〉にも、そうしたスタンスが窺えました。
「僕もそうですけど、みんな音楽が好きじゃないですか? 別に好きだからすごいとかじゃなくて、まだそこに希望があると思っているんです。これだけ配信が盛んになっても、好きなものはレコードで買いたいし、ライヴも観に行きたい。それは僕だけじゃないと思うんです。だって、そうじゃなかったら、みんなバンドもやらないですよね。スタジオ代払って、赤字になるかもしれないツアーに行ったりはしない。そして、それを観に行くお客さんにも絶対に可能性はあって、僕が観た良いバンドや感動したことを拡げることで、そうしたお客さんに届けばいい。それはほんとに少ない数でよくて、それを売り出そうというわけじゃなく、 音楽を好きな人に響けばいいんです。別に何百万人に響く必要はなく、そこにいる10人とかのために、僕はちゃんとした情報を発信したい。音楽だけでなく、ご飯とかもそうですけど、そういう視点になってきていますね」
街のみんなが〈やろうよ〉となれば、僕らはそこに行く
――じゃあ、〈AFTER SCHOOL〉しかり〈Ordinary Punches〉しかり、KONCOSは対バンをすることで、繋がる/繋げていくという動きを大事にしていたと思うんですけど、そのうえで今回ワンマンをしようと思った動機は?
「対バンのライヴだと30分の表現しかできないけれど、それには限界もあるし、ずっと30分の表現をやっていると、たまには1時間の表現をやりたいという欲求が出てくる。30分のライヴがシングルだとしたら、1時間のワンマンはアルバム的な表現ですね。30分だと勢いになっちゃうんですけど、1時間あれば、曲の構成にせよ楽器のアレンジにせよ、いままでにやってないこともできる。自分たちの音楽のもうちょっと先を表現したくて、というのが大きいです。そして、東京のSHELTERでは去年もワンマンをやっているけど、それを今回は東京だけじゃなく京都のnanoでもやりたいなと思いました」
――今回、東京と京都の2か所だけというのは特別感が強いけれど、他の地方……たとえば岡山や北海道でもやってほしいという声が上がってくるんじゃないですかね。
「それをできたらおもしろいなーとは思いますけど、どうなるか怖い部分もあるんですよね。ワンマンだと集客とかに関しても、そこまで自信があるわけではないので、その街のみんながこう〈やろうよ〉みたいになってくれたら(笑)」
――俺たちの街でKONCOSのワンマンを〈やろうぜ〉と。
「でも、僕らの活動にとって理想のあり方は、そういうことなのかなと思います。〈呼んでください〉じゃないですけど(笑)、やるとなったら僕らもまた考えますよね。〈じゃあ、何か作って行くわ〉みたいな。まずは、今回のこれが僕らからの新しい提案だから、それがどういう結果になるのか。不安もあるけど、楽しみです」

Live Information
〈STARRY NIGHT PARTY -KONCOS ONE MAN SHOW-〉
2017年12月1日(金)東京・下北沢SHELTER
出演: KONCOS
DJ : TOMMY(BOY) / kimuqn(toilet)
開場/開演:20:00/21:00
前売り:3,000円(7inch Vinyl付/ドリンク代別)
ローソンチケット [L:70499]、e+ [ http://sort.eplus.jp/sys/T1U14……09P0030001 ]
INFO : SHELTER
2017年12月9日(土)京都・二条nano
出演: KONCOS
DJ : shota_yam(S-Y-S)
開場/開演:19:00/20:00
前売り:3,000円(7inch Vinyl付/ドリンク代別)
INFO : nano