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インタビュー

KONCOS『Music Is Love』愛することをやめないために……音楽と生きてきた古川太一と佐藤寛の答え

(左から)古川太一、佐藤寛、紺野清志
 

KONCOSが4作目となるアルバム『Music Is Love』を2021年3月24日にリリースした。前作『Colors & Scale』から約5年ぶりと期間の空いた同作。とはいえ、2020年以降の彼らは、配信での楽曲発表を精力的に行っており、久しぶりという感覚は薄い。実際『Music Is Love』に収録された13曲中10の楽曲は、すでに発表されていたもの。そのためアルバムが出ること自体へのワクワク感が、これまでよりも小さかったというリスナーもいるだろう。隠さずに言えば、筆者もその一人であった。

ところが、いざアルバムを通して聴いたところ驚いた。曲順の妙なのか、何度も聴いていた楽曲が、とてもフレッシュに響いてくる。起伏のダイナミックさ、展開の流麗さは、まるで手練れのDJのミックスCDを聴いているようだ。

そして、サウンドは実に多彩。近年バンドがトライしてきたチャンス・ザ・ラッパー以降のゴスペル・ヒップホップ/ソウルはもちろん、一点突破な勢いに溢れたパンク・ソング、トライバルなディスコ、ストリングスを入れたチェンバー・ポップなど、KONCOSのカタログにおいても、きわめて多様な音楽がミックスされた作品だと言えよう。前身バンドのRiddim Saunter時代を含め、メンバーの古川太一と佐藤寛が歩んできたキャリアのすべてを集結させたかのような印象さえも受けた。紛れもなくKONCOSの現時点での最高傑作だと思う。

そんな充実した作品ではあるが、CDは一部店舗への初回出荷のみでの販売。古川がみずから一枚一枚のジャケットを絵の具で彩色した特別なパッケージとなっている。つまり、もはやKONCOSはCDを大量に売ろうとはしていないのだ。

今回は、古川と佐藤の2人にインタビュー。各楽曲の参照点から特殊な販売方法をとった背景、さらに現在の率直な心境をつまびらかに、そして晴れやかに語ってくれた。

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バンドが讃えられるものは音楽しかない

――アルバムの音源自体は昨年の春頃には完成していたそうですね。

古川太一(キーボード)「もともと2019年の3月に開催した僕らの自主イベント〈AFTER SCHOOL〉で、セットリストがすべて新曲というライブをやったんです。今回収録された曲は、そのときに作ったもの。だから、まずライブの流れを考えながら作っていった感じでした。それらを2019年を通してずっとライブで演奏したうえで、2020年のはじめに録ったところ、コロナ禍になっちゃって……。それからリリースするタイミングを見計らっていた。なので、ずっと置いていた感じなんですよね」

――2020年はライブをやる見通しも立てられない感じでしたしね。

太一「2020年の〈AFTER SCHOOL〉は一回中止になって、延期した公演も中止になりました。結局、僕らのワンマンとして開催して。もうあらゆる予定が全滅でしたね」

――コロナ禍のなかで、アルバムの内容を少し変えたりは?

太一「いや、まったく変えなかったですね。なにせ、出来上がっていたので、もうこれで出すしかないなって(笑)。制作した頃は、チャンス・ザ・ラッパーやピーター・コットンテールらシカゴ周辺の音楽が持つゴスペル・フィーリングを自分たちなりに昇華したいと思ってました。多幸感のある、聴いた人の心が開放される音楽を作りたいなって。いまは、それをようやく吐き出せたという感じ」

――ゴスペルのムードがアルバムの基調になりつつ、各楽曲ではさまざまなサウンドがミックスされている印象です。

太一「このアルバムは、寛と作ってきた曲の集大成みたいなところはあります。実際、手癖みたいなものもどんどん入れていこうと話していたんです。結局出てくるフレーズとか、昔からあんまり変わらないんですよね。今回は自分たちのルーツを振り返った面もあって、2000年代初頭に好きだった音楽を、あらためて聴き返したりもしました。そこで、〈N.E.R.D.やチリー・ゴンザレス、ファイストとかデス・セットってやっぱいいよね〉となったし、そこらへんを通っているのが僕らだから、いまやりたいよねって。いまのインディーを意識した曲もあるし、参照元は結構グチャグチャなんですけど、手癖も強いので並べたら統一感が出るだろっていう。そういう開き直りがありました(笑)」

――前作の『Colors & Scale』は、ライブハウス・シーンやパンク・カルチャーからの外的な刺激をKONCOS流に咀嚼した作品でしたけど、今回はむしろ自分たち自身を掘り下げた感じだったんでしょうか?

太一「そうですね。もうこれしかできない、というところでやろうかなって(笑)」

――教会で礼拝者がゴスペルを合唱することと、ライブハウスでオーディエンスが拳を振り上げながらパンク・ソングを叫ぶことに、違いはあると思いますか? 

太一「僕は同じだと思いますね。いずれも音楽を聴いて、みんなの心が熱くなるってこと。白人だって黒人の音楽でグッとくるはずだし、黒人だって白人の音楽でグッとくるはず。そこには人種も性別もジャンルも関係ないと思う。そういう混ざり合うところから、いろいろなおもしろい音楽が生まれているんですよね」

――冒頭の3曲はゴスペル・フィールを持っています。“Intro”~“Everyday(Short Ver.)”~“Sing”とDJがクイック・ミックスしていくみたいに次々と曲目が進んでいくのが痛快でした。

太一「“Sing”から”All This Love”への流れは、サム・ヘンショウやピーター・コットンテールの感じをふまえつつコード感はデヴァージとか70年代周辺のソウルやファンクを意識していました。いまのゴスペルとダンス・クラシックの共通点を考えながら、中間地点の落としどころを探っていて」

――〈世界が歌うよ/あなたが歌うなら〉という“Sing”は、歌詞もゴスペル的だと感じます。

太一「まず、〈みんなで歌う〉というテーマがあったし、歌う喜びや音楽の喜びを歌詞にしたいなと。今回は、都市や街のことじゃなくて、もうちょっと大きいこと――音楽や愛を歌いたかったんです」

佐藤寛(ヴォーカル/ギター)「ゴスペルって神様を讃えるという内容が多いじゃないですか? でも、僕らはキリスト教徒でもないし、僕らが同じように神様を讃えても説得力がない(笑)。そこで、僕らが歌うべきことは何かを考えながら“Sing”や“All This Love”を作りました。僕らが感謝すべきものは、神様じゃなくて音楽なんじゃないかな、じゃあそれを歌うべきかなとなった。やっぱりバンドですからね。バンドが讃えられるものは音楽だろうなって」

太一「ここまで長くやってきた以上、たぶん僕らが歌えることは音楽しかない。音楽好きでないと、もう意味ないじゃないですか。デヴィッド・マンキューソが発していたメッセージへのリスペクトを込めて、アルバム・タイトルを『Music Is Love』にしました。アルバム制作にあたってデヴィッド・マンキューソがやっていたパーティー〈ロフト〉とかラリー・レヴァンのクラブ〈パラダイス・ガラージ〉とかの風景が頭にあった。混沌としているけど、〈音楽が好き〉という点で繋がっていて、そこでは特定のジャンルの音楽だけじゃなくて、ソウルもロックもポスト・パンクも流れている。結局は〈音楽を好きでいること〉がいちばん大事で、表現できるのはそこだけだなと思っていました」

――“I Like It”や”All This Love“の歌詞は、音楽にかぎらず何かを好きになること=愛を讃えた歌にも聴こえます。

「曲を作っていた頃、自分が好きなものは大切にしたほうがいいなと思うことが多かったんです。コロナ禍の前でしたけど、好きだったお店が街の再開発でなくなったり、それこそ友人が死んだりとか、そういうことが重なった時期があって。いろいろなものがずっとそこにあるわけではないし、自分がいいなと思っているものに対し、きちんと気持ちを伝えていきたいと思いながら曲や歌詞を書いていました」

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