黒いフィーリングを持つアクトがしのぎを削る現在の日本のシーンにおいて、急速に知名度を高めてきた4人組! メジャー・デビュー作で提示する〈本物の〉音とは?

予定より早い道程

 結成は2015年8月。同年末に初ライヴを行い、翌2016年10月には7曲入りのミニ・アルバム『Natural High』をリリース。その評判が急速に広まるなか、このたびメジャー・デビュー・アルバム『Authentic』を発表……と、階段を2段飛ばしでステップアップを重ねてきたRAMMELLS。結成からわずか2年でのメジャー・デビューについて尋ねると、リーダーである真田徹(ギター)はこう答えた。

 「結成の段階から、その後1年間ぐらいのスケジュールは決めてたんですよ。このタイミングで全国流通盤を出して、このあたりでどこかの事務所と契約して……と。ま、予定よりはちょっと早く話がきた感じでしたけどね」(真田)。

RAMMELLS Authentic クラウン(2017)

 アルバム・タイトルである『Authentic』という単語を辞書で引くと、〈本物の、正真正銘の、真正の〉という言葉が並んでいるが、RAMMELLSはそんじょそこらのニューカマーとは違う。『Authentic』はまさに〈正真正銘の、本物の〉作品だ。

 メンバー4人のうち3人は昭和音楽大学の卒業生。真田はジャズ・コースを、黒田秋子(ヴォーカル)と村山努(ベース)はポピュラー音楽コースを専攻した。

 「高校時代はロック・バンド(OLD JOE)をやってたんですけど、父親が管楽器屋をやってたこともあって、小さい頃からジャズも聴いてたんですね。ジャズも演奏できたほうがいいだろうとは思ってたんですけど、独学じゃどうにもならなくて」(真田)。

 「私は小さい頃から『メリー・ポピンズ』みたいな映画音楽が好きで、いつか自分でもこういう歌を書いてみたいと思ってました。中学以降はJ-Popを聴いてて、大学に入ってからマリーナ・ショウやボビー・マクファーリンが好きになりました」(黒田)。

「高校生のときはメタルが好きで。ドリーム・シアターが一番好きだったんですけど、メンバーの半分以上が音大の出身で、音大に行ったらこういう曲を作れるようになるのかな?と思って進学しました」(村山)。

 まさにバックボーンは三者三様。それはのちにRAMMELLSのヴァラエティー豊かな音楽性へと結実していくことになる。なお、RAMMELLSの結成以前に真田が参加していたOLD JOEはファンク要素もあるガレージ・ロック・バンドだったが、そこでヴォーカルを務めていたのは現SuchmosのYONCE。2015年7月にこのOLD JOEが解散すると、真田はそのわずか1か月後に黒田と新バンドを結成する。たまたま手にしていた雑誌に掲載されていた伝説的なグラフィティ・ライター/アーティスト、ラメルジーの名をもじってRAMMELLSと名付けられた。

 「最初、僕はちょっとシューゲイザーっぽい女性ヴォーカルものをやりたかったんですよ」(真田)。

 「〈こういうことをやりたい〉という楽曲がたくさん入ったUSBを徹からもらったんです。そこに入ってたのがアソビ・セクスとかで」(黒田)。

 「そこに村山くんが入ってきたら、急にテクニカルな方向になってきた(笑)。でも、それがおもしろかったんです」(真田)。

 そして、4人目のメンバーとして加わった彦坂玄(ドラムス)は、当初のRAMMELLSについてこう話す。

 「最初は今以上にいろんなタイプの曲があったので、対応するのが大変でした。シューゲイザーもあれば、ブラック・ミュージック的なものもあったので」(彦坂)。

 

違和感をねじ込みたい

 2016年10月には先述のミニ・アルバム『Natural High』をリリース。ネオ・ソウル以降のブラック・ミュージックのフィーリングを色濃く感じさせながらも、真田のアグレッシヴなギターとテクニカルなリズム隊がRAMMELLSならではの個性を描き出す本作は、初作ながら各所で話題を集めた。

 だが、今回のメジャー・デビュー・アルバム『Authentic』に広がっているのは、その『Natural High』を大きく上回るスケール感とヴァラエティーを持つ音楽世界だ。今回収録された楽曲は、すべて前作の発表以降に作られた新曲。4人全員がソングライティングに関わることにより、曲調の幅も大きく広がった。

 「今までRAMMELLSの曲作りの王道パターンはアキさん(黒田)が弾き語りの歌を持ってきて、それをチリポン(村山)が打ち込みでデモにするという形だったんですけど、今回はみんなで曲を書くことになったんです。前のアルバム以降に25曲ぐらい作って、そのなかから選曲会議で選んでいきました」(彦坂)。

 ネオ・ソウル的な色彩を帯びた“image”や“playground”などの楽曲に加え、ポップ度を増した楽曲が揃っているのも本作の特徴。4つ打ちのグルーヴに貫かれた“slow dance”や、ある種J-Pop的とも言える突き抜けた感覚の“CHERRY”や“Authentic”は前作にはなかったタイプのナンバーだ。また、黒田の歌唱もR&B~ソウル・シンガー然としたものから、より力が抜けて柔軟なものに。そのぶん、彼女のルーツにあるものが自然と滲み出している。

 「“CHERRY”や“Authentic”では明るくてポップな曲を作ろうと思ってました。“slow dance”もまさにそういうものを狙ってて。ただ、ポップな曲調ではあるけど、歌詞は皮肉というか。他の曲でもそういう違和感みたいなものをねじ込みたいんですよ。ブラック・ミュージック的なリズム隊の上でそれっぽいギターも弾こうと思えば弾けるんですけど、そういうことはすでにいろんな人がやってるし、同じことをやるのに興味がなくて」(真田)。

 「一筋縄ではいかない感じというか」(黒田)。

 「そうそう。〈次の展開を読ませたくない〉という思いはありますね。特にチリポンは(笑)」(真田)。

 「難しい転調を入れてきたりするんですよ」(黒田)。

 ポップでありながら、どこかに「一筋縄ではいかない」要素が散りばめられた全10曲。“HERO”はMUTE BEATやシンプリー・レッドでも活動してきた日本最高峰のドラマー、屋敷豪太がプロデュースを手掛けているが、物怖じしない芯の強さはこの曲からもはっきり聴き取ることができる。

 今後の活動について尋ねると、彦坂は「どんどん新しいことをやって周りを驚かせながら、一歩一歩大きなステージに進んでいけたらいいなと思いますね」と話し、黒田も「そうですね。私もめっちゃ楽しみ」と答える。〈本物の、正真正銘の〉4人が向かう未来はどんなものなのだろうか。メジャー・デビュー作にして、早くも次回作が楽しみになる注目のニューカマーの登場だ。

 

『Authentic』と通底する女性ヴォーカル作品はここにも!

CRCK/LCKS Lighter APOLLO SOUNDS(2017)

ソロ作を発表する一方でceroの現ライヴ・メンバーとしても活躍する才媛、小田朋美や日本の新世代ジャズ界隈の実力派ドラマー・石若駿を擁する〈ポップス〉志向のバンド。プログレッシヴ/ポリリズミックなアプローチが多用されていながらも、歌がスッと耳に届くキャッチーさがある。

 

Nao Kawamura RESCUE Naked Voice(2017)

クールな色気と熱情を声に含ませる女性シンガーは、SuchmosやSANABAGUN.、WONKらの作品/ステージもサポート。ジャズ/ソウル~R&Bを下敷きに、時折ロッキンなダイナミズムも見せるバンド・サウンドに注力した最新作は、これまででもっともRAMMELLS好きにフレンドリーな出来かと。

 

ものんくる 世界はここにしかないって上手に言って TABOO(2017)

男女デュオとなっての最新作は、斉藤ネコやCRCK/LCKSのメンバーら曲ごとに異なるプレイヤーを招いて持ち前のジャズ・マナーに開かれたポップネスを加味。表情豊かなヴォーカル・アレンジも素晴らしい。なお、TABOO作品ではけものも本項的に要チェックの一枚。

 

iri life ep Colourful(2017)

5lackの客演ナンバーを筆頭にヒップホップ色がやや強めの新EPだが、ほとんどの曲に漂うメロウなムードはRAMMELLSと近しいもの。打ち込みのアレンジが中心のなか、生演奏が基調の“会いたいわ”には、ギターの弾き語りでソングライティングする彼女の素の姿が浮かんでいる。

 

RAMMELLSを形成する4人のルーツは?

村山努(ベース)
村山のセレクトによる1枚目は、ジャズを基本とするミクスチャー・サウンドを鳴らすスナーキー・パピーの2016年作『Culcha Vulcha』(Ground Up/Decca)。「今回のアルバムに入ってる“Authentic”という曲は、作るうえでスナーキー・パピーのイメージが少しあって。なおかつ、ギターの目立つフュージョン/プログレっぽいテイストを加えて、ああいう作りになったんですよ」。そして村山の2枚目は、フロントを張るネイ・パームのソロ・デビューも記憶に新しいフューチャー・ソウル・クァルテット、ハイエイタス・カイヨーテの2013年作『Tawk Tomahawk』(Masterworks)。「“playground”はハイエイタス・カイヨーテみたいな雰囲気の曲が欲しくて作ってみた曲です」。

 

真田徹(ギター)
真田がピックした1枚目は、ウィルコの2007年作『Sky Blue Sky』(Nonesuch)。「カントリー風のサウンドなのに、ヘンなギタリストがひとりいることでフツーじゃない音になってる。ウィルコのそういうところが好きで、RAMMELLSの音にも影響は出てるんじゃないかと思いますね。あと、自分が(フェンダー社のギターである)ジャズ・マスターを使ってるのもウィルコの影響だったりします」。そして2枚目は、USのルーツ音楽に根差したサウンドを特徴とするビル・フリゼールの2005年作『East/West』(Nonesuch)。「ビル・フリゼールってジャズ・ギタリストとして括られることが多いと思うんですけど、普段はジャズ・ギタリストのアルバムばかり聴いてます。これはそのなかでも好きなアルバム」。

 

黒田秋子(ヴォーカル/キーボード)
黒田が選ぶ1枚目は、「一番最初に買ったアルバム」というthe brilliant greenの99年作『TERRA2001』(ソニー)。「今回のアルバムに入ってる“CHERRY”にはちょっとブリグリのイメージがあって。そうやって誰かの歌を頭に描いて歌うことはよくありますね。結局自分の歌になっちゃうし、真似するわけじゃないんだけど」。続く2枚目は、エイミー・ワインハウスの2006年作『Back To Black』(Island)。『Authentic』に収録された“AMY”は彼女のドキュメンタリー映画を観たことをきっかけに書いたという。「大学時代、“Lullaby Of Birdland”っていうジャズ・スタンダードをカヴァーすることになって、いろんな人のヴァージョンを聴いたんですけど、エイミーが一番格好良かった。それから聴くようになって」。

 

彦坂玄(ドラムス)
彦坂の1枚目は、オッド・フューチャーの紅一点を含むソウル/R&Bユニット、インターネットの2015年作『Ego Death』(Odd Future)。「去年に入ってから初めて聴いたんですけど、RAMMELLSと同じ女性ヴォーカルだし、こういうことをやってみたいなと思って。バンド編成がちょっと近いこともあって、参考にしてます」。もう1枚は、各人が演奏家/プロデューサーとしても活躍するトリオ、Ovallの2010年作『DON'T CARE WHO KNOWS THAT』(origami)。「Ovallが広く注目を集めるきっかけになったアルバムだと思うんですけど、僕もこの作品をきっかけにより深くブラック・ミュージックに関心を持つようになって。最初聴いたとき、日本人だと思わなかったんですよ。すごい人たちだなと思って」。