Page 2 / 3 1ページ目から読む

照沼健太の場合

1. Elegia(85年シングル)
2. In A Lonely Place(81年シングル)
3. Procession(81年『Movement』)
4. Your Silent Face(83年『Power, Corruption & Lies』)
5. Sunrise(85年『Low-Life』)
6. Let's Go(87年『Salvation!』OST)
7. Broken Promise86年『Brotherhood』)
8. Dreams Never End(81年『Movement』)
9. Cries And Whispers(81年シングル)
10. All Day Long86年『Brotherhood』)
11. Sooner Than You Think(85年『Low-Life』)
12. Leave Me Alone(83年『Power, Corruption & Lies』)
13. Lonesome Tonight(84年シングル)
14. Every Little Counts86年『Brotherhood』)
15. Run Wild(2001年『Get Ready』)

16. Blue Monday(83年シングル)
17. Regret(93年『Republic』)
18. Krafty ※Single Edit(2005年『Waiting For The Sirens' Call』)
19. Here To Stay
(2002年』シングル)
20. Ceremony(81年シングル)

〈中途半端〉な理想のセットリスト

ニュー・オーダー、それは言わずもがな〈イアン・カーティスの自殺〉という悲劇を背負ったバンドである。だが、実際にそこにあるのは、そんなヒロイックなストーリーを吹き飛ばすほど下手な歌、ほぼ進歩しない演奏、そしてロクでもない揉め事だ。ポスト・パンクや80年代のリヴァイヴァルを経た今でも〈これは……〉と思ってしまうアレンジも少なくはない。しかし、それでも彼らに惹かれるのは、ゴミの山に埋もれたダイヤモンドのような楽曲の良さはもちろん、エレクトロニック・ミュージックのオリジネイターの一つであるのにもかかわらず、根本はとにかく人間臭いパンクだという点によるものではないだろうか。

さて、本企画のテーマは〈理想のセットリスト〉だ。そこで上記の20曲を挙げさせてもらうことにした。この曲目を見て、目を疑うか、笑うか、怒ってしまったあなたはニュー・オーダーの熱心なリスナーだろう。なぜなら、これはボックス・セット『Retro』(2002年)のディスク2〈Fan〉の曲順ほぼそのまんまだからだ。マンチェスター伝説のクラブ〈ハシエンダ〉でレジデントを務め、〈Mixmag〉〈i-D〉〈NME〉といった名だたるメディアでの執筆、そしてニュー・オーダーのツアーDJなども担当した、音楽ジャーナリストであるジョン・マクレディによって選曲された〈Fan〉は、とにかくセンチメンタルな楽曲が満載。ベスト盤『Substance』(87年)を補完するような、ニュー・オーダーの〈時代と寝なかったサイド〉ともいうべき、シンプルなアレンジで哀愁漂うメロディーを聴かせる楽曲たち。そこにアンコールとして人気楽曲を数曲追加した。

〈ハシエンダ〉で“All Day Long”を演奏する86年のライヴ映像
 

だって、今のニュー・オーダーからは、イアン・カーティスどころか〈あいつ〉までいなくなってしまったのだ。バンドとしてズタボロじゃないか。だが、それでも許せてしまうのがこのバンドの魅力でもある。どうせ不完全なバンドなら、これくらい不完全な、バンドもスタッフもオーディエンスも全員が〈エーン〉と泣いているようなライヴが観てみたい。でも、一応、あのヒット曲も聴いておきたい。そんな中途半端な思いでできた〈理想のセットリスト〉がこれだ。

この企画のきっかけである最新のライヴ盤『NOMC15』には正直それほどそそられない。キャリアを網羅した理想のセットリストとも言われているようだが、どうだろう。長すぎやしないだろうか? ……いや、でも大方、人生とはそういうものなのかもしれない。中途半端で、間延びして、黒歴史満載。だからこそチャーミングなのだろう。自分も老後には、この〈中途半端な理想のライヴ・アルバム〉を聴き直して、ちょっと笑ったりしてみたい。でも、まだそれには早すぎる。

“Regret”を演奏する2008年のライヴ映像