アーティストの年代記をディスコグラフィーを辿って紹介する連載。今回は数奇な運命を辿って進化を果たした伝説的なバンド!
先月のクラフトワークに続き、今回も〈フォーエヴァー・ヤング〉シリーズのリイシュー作品から、ジョイ・ディヴィジョンとその進化形となるニュー・オーダーの作品を紹介しましょう。70年代後半の英国に登場したジョイ・ディヴィジョンは、イアン・カーティスの衝撃的な死によって終わりを迎えますが、ポスト・パンク時代の最重要バンドとして現在も揺るぎない地位を築いているのは言うまでもありません、そして、その灰の中から生まれたニュー・オーダーはクラブ・カルチャーの広がりにも乗じて世界的なバンドへと発展を遂げました。いまやスタンダードとなった彼らの計10タイトルを改めて聴いてみましょう! *bounce編集部
イアン・カーティスのカリスマ的な歌唱とシンプルで耽美的なサウンドの独自性によってポスト・パンク時代を象徴する美意識を獲得したファースト・アルバム。マーティン・ハネットがプロデュースにあたり、ミュータント・ディスコ的な“She’s Lost Control”、後にニュー・オーダーもカヴァーした“New Dawn Fades”なども収録。なお、この有名すぎるジャケを手掛けたピーター・サヴィルはニュー・オーダー以降も彼らの全作品でデザインを担当している。
アルバム未収録シングル“Love Will Tear Us Apart”のヒットで脚光を浴びた直後にイアン・カーティスが自死。そこから間を置かずに届けられたこのセカンド・アルバムは全英6位まで上昇し、バンドに大きな成功をもたらすことになった。バーナード・サムナーがシンセサイザーを導入し、電子ドラムも登場、エレクトロニックな“Isolation”などはこの後の変化を予見させる出来映えだ。ダニー・ブラウンがアルバム名に冠した“Atrocity Exhibition”など、後世への影響も大きい。
バーナードが主にリード・ヴォーカルを担当する編成になり、さらにジリアン・ギルバート(スティーヴン・モリスの恋人だった)を加えて誕生したニュー・オーダーが、アルバム未収録の“Ceremony”を経て放った最初のアルバム。引き続きマーティン・ハネットがプロデュースを手掛け、全体を覆う薄暗いトーンはまだジョイ・ディヴィジョンの延長線上にあるものの、シンセ・ポップに移行する過渡期のスタイルはニューウェイヴ時代に相応しい進取の気性に溢れている。
アルバム未収録のビッグ・チューン“Blue Monday”の大ヒットから間髪入れずに投下され、初のセルフ・プロデュース体制に移行して真にニュー・オーダーとしての秩序と美学を体現したセカンド・アルバム。NYでポスト・ディスコのクラブ・カルチャーに触れた経験もあってサウンド・デザインは劇的に変化し、スティーヴンとジリアンはプログラミングも担当。硬質でスタイリッシュな楽曲に従来型のコマーシャルな側面は希薄ながらも全英4位の大ヒットを記録した。
シンセやサンプラーの導入をさらに進めつつポスト・パンクの残り香もまだ漂う転換点となった一枚で、彼らの最高傑作とされることも多いサード・アルバム。ここからはシングル曲もアルバムに収録されることになり、ヴァージョンは違うものの“The Perfect Kiss”と“Sub-Culture”が並んでいる。カントリー/フォーク風味の異色曲“Love Vigilantes”(アイアン&ワインも後にカヴァー!)、イアンに捧げたインスト“Elegia”の収録も興味深い。
同時代のクラブ・ミュージックの変化なども睨みつつ、前作『Low-Life』のサウンド展開をより洗練させる形で成果を上げた4作目。大まかにロック系統の曲とエレクトロニックな曲でレコードの両面に振り分けられていて、テクノロジーの探求のみならず改めて演奏のバンド感が意識されているのもポイントかも。絶妙なポップネスが眩いダンス・トラック“Bizarre Love Triangle”はUSでもクラブ・ヒットを記録し、次の飛躍に向けた大きなステップを踏むことになった。
ベスト的なコンピ『Substance』(87年)、クインシー・ジョーンズによる“Blue Monday 1988”でひと回り成功の規模を大きくした彼らがより新しいシーンともリンクして完成させた大傑作。バレアリックへの傾倒を受けて一部はイビザ録音され、“Fine Time”や“Round & Round”ではアシッド・ハウスを明快に導入。一方ではアコースティックな音使いも取り入れて、マンチェスターの後進たちが大暴れした時代に懐の深さを見せつけた。キャリアを通じて初の全英1位を獲得。
全英1位に輝いた“World In Motion”(90年)前後からメンバー個別の動きが活発になるなか、前身の頃から所属していたファクトリーが倒産した煽りもあって、実に4年ぶりとなったカムバック作品。時代の変化もあって前作のハウス色はグッと後退し、スティーヴン・ヘイグと共同制作したオルタナ仕立てのヒット・シングル“Regret”を筆頭に普遍的なポップセンスが前に出されている。2作連続で全英1位をマークするも、この後バンドは活動休止することに。
マネージャーの進言によって98年に活動再開した彼らが、U2で知られるスティーヴ・オズボーンやフラッドを共同制作に迎えて仕上げた通算7作目。ビッグ・ビート隆盛を経たシーンに先行ヒット“Crystal”などで彼らなりの電子ロックを提示しつつ、ビリー・コーガンを迎えた“Turn My Way”やボビー・ギレスピー&アンドリュー・イネスとの“Rock The Shack”というゲスト入りの曲もあったり、全体的には柔軟な雰囲気だ。なお、本作をもってジリアンは育児のため脱退(後に復帰)。
スティーヴン・ストリートやジョン・レッキー、スチュワート・プライスなど複数の大物プロデューサーを起用した8作目。当時は日本語版も話題となった“Krafty”、シザー・シスターズのアナ・マトロニックをフィーチャーした“Jetstream”、キャッチーな表題曲など、多面的なニュー・オーダー像が具現化されている。ジリアンの代わりに当時のツアー・メンバーだったフィル・カニンガム(元マリオン)が参加。結果的にピーター・フック在籍時の最後のアルバムとなった。
ジョイ・ディヴィジョン~ニュー・オーダー
76年に前身が結成されたジョイ・ディヴィジョンは、イアン・カーティス(ヴォーカル)、バーナード・サムナー(ギター)、ピーター・フック(ベース)、スティーヴン・モリス(ドラムス)の編成でファクトリーからデビュー。イアンの死を受けて、残る3人は80年にニュー・オーダーを結成。同年にジリアン・ギルバート(キーボード)が加入。2007年の解散騒動を経てフックが離脱し、2011年以降は元マリオンのフィル・カニンガム、トム・チャップマンを含む5人組で活動中









