アーティストの年代記をディスコグラフィーを辿って紹介する連載。今回は数奇な運命を辿って進化を果たした伝説的なバンド!

 先月のクラフトワークに続き、今回も〈フォーエヴァー・ヤング〉シリーズのリイシュー作品から、ジョイ・ディヴィジョンとその進化形となるニュー・オーダーの作品を紹介しましょう。70年代後半の英国に登場したジョイ・ディヴィジョンは、イアン・カーティスの衝撃的な死によって終わりを迎えますが、ポスト・パンク時代の最重要バンドとして現在も揺るぎない地位を築いているのは言うまでもありません、そして、その灰の中から生まれたニュー・オーダーはクラブ・カルチャーの広がりにも乗じて世界的なバンドへと発展を遂げました。いまやスタンダードとなった彼らの計10タイトルを改めて聴いてみましょう! *bounce編集部


 

JOY DIVISION 『Unknown Pleasures』 Factory/London/ワーナー(1979)

イアン・カーティスのカリスマ的な歌唱とシンプルで耽美的なサウンドの独自性によってポスト・パンク時代を象徴する美意識を獲得したファースト・アルバム。マーティン・ハネットがプロデュースにあたり、ミュータント・ディスコ的な“She’s Lost Control”、後にニュー・オーダーもカヴァーした“New Dawn Fades”なども収録。なお、この有名すぎるジャケを手掛けたピーター・サヴィルはニュー・オーダー以降も彼らの全作品でデザインを担当している。

 

JOY DIVISION 『Closer』 Factory/London/ワーナー(1980)

アルバム未収録シングル“Love Will Tear Us Apart”のヒットで脚光を浴びた直後にイアン・カーティスが自死。そこから間を置かずに届けられたこのセカンド・アルバムは全英6位まで上昇し、バンドに大きな成功をもたらすことになった。バーナード・サムナーがシンセサイザーを導入し、電子ドラムも登場、エレクトロニックな“Isolation”などはこの後の変化を予見させる出来映えだ。ダニー・ブラウンがアルバム名に冠した“Atrocity Exhibition”など、後世への影響も大きい。

 

NEW ORDER 『Movement』 Factory/London/ワーナー(1981)

バーナードが主にリード・ヴォーカルを担当する編成になり、さらにジリアン・ギルバート(スティーヴン・モリスの恋人だった)を加えて誕生したニュー・オーダーが、アルバム未収録の“Ceremony”を経て放った最初のアルバム。引き続きマーティン・ハネットがプロデュースを手掛け、全体を覆う薄暗いトーンはまだジョイ・ディヴィジョンの延長線上にあるものの、シンセ・ポップに移行する過渡期のスタイルはニューウェイヴ時代に相応しい進取の気性に溢れている。

 

NEW ORDER 『Power, Corruption & Lies』 Factory/London/ワーナー(1983)

アルバム未収録のビッグ・チューン“Blue Monday”の大ヒットから間髪入れずに投下され、初のセルフ・プロデュース体制に移行して真にニュー・オーダーとしての秩序と美学を体現したセカンド・アルバム。NYでポスト・ディスコのクラブ・カルチャーに触れた経験もあってサウンド・デザインは劇的に変化し、スティーヴンとジリアンはプログラミングも担当。硬質でスタイリッシュな楽曲に従来型のコマーシャルな側面は希薄ながらも全英4位の大ヒットを記録した。

 

NEW ORDER 『Low-Life』 Factory/London/ワーナー(1985)

シンセやサンプラーの導入をさらに進めつつポスト・パンクの残り香もまだ漂う転換点となった一枚で、彼らの最高傑作とされることも多いサード・アルバム。ここからはシングル曲もアルバムに収録されることになり、ヴァージョンは違うものの“The Perfect Kiss”と“Sub-Culture”が並んでいる。カントリー/フォーク風味の異色曲“Love Vigilantes”(アイアン&ワインも後にカヴァー!)、イアンに捧げたインスト“Elegia”の収録も興味深い。