10周年イヤーを締め括る、実に3年半ぶりのフル・アルバムが完成。このトリオをジャンルで括ることは不可能だと思うが、インテリジェンスと冒険心を持って音楽を一歩先へ推し進めようとする意志において、彼らのデビュー時の背景にあったポスト・ロックと、現代におけるジャズやヒップホップ、ビート・ミュージックの交配は同一線上で繋がっている――本作はそう物語っているように思う。強固なミニマリズムと巧みな展開力、フェティッシュなコード進行が同居した楽曲はどれも驚きに満ち、鍵盤とハイハット・ワークで聴かせる“世界陸上”や“ぼくは正気”からは明確な時代性も感じられる。音響面での過激な実験や、ひたすらに想像力を喚起する歌詞も含め、そのオリジナリティーは他に類を見ない。