チャットモンチーの橋本絵莉子とPeople In The Boxの波多野裕文がユニットを結成。2人ですべての楽器を演奏し、橋本が主に作詞とドラムス、波多野が主に作曲とウワモノを担当した全10曲は、アコースティックを基調にシロフォンやバンジョーなどで味付けしつつ、ときにはノイズ・ギターも交えるなど、非常にヴァリエーション豊か。しかし、アレンジ自体は比較的シンプルなぶん、歌そのものの素晴らしさが際立っていて、特に波多野のメロディーメイカーとしての才能が改めて伝わってくる。橋本は〈家族〉や〈地元〉を軸としたパーソナルな歌詞を、聴き手の入り込む余地を残した絶妙な距離感で描き、その温かみとメランコリーを見事楽曲に落とし込んだ“飛翔”や“君サイドから”はかなりの名曲。一方、波多野が作詞、橋本が作曲を手掛けた“流行語大賞”のようなコミカルな側面も大きな魅力になっている。ポップな音楽家として、そして野性的な勘を備えた表現者としての顔を併せ持つ、稀有な2人による幸福なコラボレーション。