ドラえもんも登場

 また、「映画ドラえもん のび太の宝島」の挿入歌として作られた2曲目“ここにいないあなたへ”は、セカンド・アルバム『エピソード』(2011年)の頃を想起させる、アコースティックで素朴な風合いの一曲だ。

 「劇中の海のシーンで流れる挿入歌を、というオファーをいただいたので、海を描きたいなと思って曲を作っていたら、『エピソード』の頃のサウンド・イメージと重なったんです。でも今の自分のモードとは違うので、普通だったらやらなかったと思うんですけど、今回は〈ドラえもん〉だぞ、と。タイムマシンがあるじゃないかと思って、ドラえもんにお願いして、タイムマシンで2011年の僕にオファーしに行って、出来た曲がこれです(笑)」。

 曲の終盤、浮遊感漂うオンド・マルトノ(テルミンのような単音の旋律を鳴らすことのできる楽器)の温かい電子音が、聴く人の胸を静かな感動で満たすように、今回のシングルでは多彩な楽器がその個性を発揮し、それぞれの楽曲にアクセントを加えている。表題曲で柔らかな音色を響かせるフェンダー・ローズ然り、3曲目の“The Shower”で躍動感をもって打ち鳴らされるMPC然り。

 「打ち込みの音に聴こえるかもしれないけど、MPCはスタジオで叩いて録音しているので、実は生のバンド演奏なんですよ。この曲でやりたかったことのひとつは、トラックメイキングのツールとしてでなく、楽器としてMPCを使うこと。すごく楽しかったし、やりがいがありましたね」。

 そして、恒例の宅録シリーズとなるラストの“ドラえもんのうた”の〈House ver.〉には、なんとドラえもんが参加している。

 「家で寂しく録音していたら、ドラえもんがタケコプターでやって来てくれました。〈どう? 進んでる?〉って、どら焼きを差し入れしてくれて。〈せっかくだから参加してよ〉って言ったら、参加してくれたんです(笑)」。

 いずれも星野源の遊び心が横溢するシングル“ドラえもん”。新鮮かつ奔放で、時おりギュッと胸を鷲掴みにする全4曲だ。

星野源のBD/DVD。