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星野源がドラえもんとコラボするまでに歩んできた音楽的な道のりは……

 ミュージシャンとしてのみならず、俳優業などマルチな活動を見せる星野源がインストゥルメンタル・バンド、SAKEROCKと並行してソロ・デビューを果たしたのが2010年。細野晴臣のLabels UNITEDからのリリースとなったファースト・アルバム『ばかのうた』は、キセル仕事などでお馴染みの内田直之が録音とミックスを担当し、星野のフォーキーな歌心を素朴な風合いのバンド・サウンドが温かく支える一枚に。続く2011年の2作目『エピソード』は、サウンド面としては前作からの延長線上にあるアコースティックな感触を踏襲。本人は「制作中は精神的にしんどい時期だった」と当時のインタヴューで語っているが、日常のなかで目にする場面を過不足なく切り取った歌世界は、どのシーンに対しても視点がフラットだからこそ、不思議な安堵感を与える聴き心地に仕上がった。そして、制作の最後にくも膜下出血で倒れる、という大きなアクシデントを乗り越えて届けられた3作目『Stranger』は、その前情報を持って聴くと驚かされる華やかな一枚に。弾き語り調のナンバーもあるものの、途轍もなく開かれたムードを備えた冒頭の3曲をはじめ、多彩なリズムによるグルーヴも、賑々しい彩りを添える使用楽器の数も格段に増加。ジャズやソウル・テイストをまぶしたナンバーなど、その後の音楽的な飛躍を予感させる楽曲が揃っている。

『Stranger』収録曲“化物”

 そんな兆しを受けて2015年に登場したのが、星野のディスコグラフィーのなかでもエポック・メイキングな作品となったであろう大ヒット作『YELLOW DANCER』だ。ここで彼がテーマに掲げたのは、〈ブラック・ミュージックのグルーヴと日本的な情緒に溢れた歌の融合〉。ソウルやディスコ~ファンク、オーセンティックなジャズといったルーツはこれまでの作品にも反映されていたものの、本作ではそうした嗜好が圧倒的なポップネスをもって全開に。ダフト・パンク“Get Lucky”以降の時流を、胸躍るJ-Popとしてお茶の間へ持ち込んでみせた。その後は星野も主演し、2016年の代表的なドラマとなった「逃げるは恥だが役に立つ」の主題歌“恋”と、やはりドラマ「過保護のカホコ」の主題歌となった“Family Song”という2枚のシングルを発表。いずれもモータウン~フィリーなソウル・フィーリングと独自のオリエンタリズムを交配させた表題曲を筆頭に、自身の〈イエロー・ミュージック〉を更新した内容となっている。 *bounce編集部

星野源の作品。